そもそも、医療通訳ってなに?(1) 通訳とは?

じぶんのやっていることって、それがじぶんにとって当然だからしばらくすると、他の人もわかっているだろうとおもいこんじゃうことってありませんか。さいきん、まったくじぶんのことをしらない方たちとはなす機会があって、医療通訳の話をしていたら、「あのー、医療通訳ってなにやるんですか」ってきかれてしまいました。その方たちは「なにをやっているのか、イメージがわかないんですけど…」とつづけられました。

医療通訳ってそのことばのまんまだろうとおもってたんですけど、よくかんがえてみれば、それはこっちの勝手なおもいこみで、医療ってことばがもたらすイメージも、通訳ってことばがあたえる印象も、ぼんやりとしていますよね。医療といっても範囲はひろいですし、通訳っていうのは、身近な存在じゃないですからなにをやっているのか具体的にはわからないですしね。そこで、やっぱり、ここでもあらためて、医療通訳ってなに、ということをとりあげてみることにしました。

まずは「通訳ってなに」ってことから

医療通訳は医療のことについて「通訳」しますが、まずは通訳ということはなんなのか、ということをお話ししましょう。国内での活動を前提にします。基本となることばは、日本語になります。一方、英語だったり、中国語だったり、韓国語だったり、といろいろな外国語がその反対側にあります(ターゲット言語とこういった外国語をよびます)。日本語のことばを外国語のことばに基本的に同じ意味のまま置きかえたり、反対に外国語のことばを日本語のことばに置きかえることを翻訳と言います。この翻訳を口でおこなうのが通訳です。この「口でおこなう」というのがだいじなポイントです。だれかがはなしていることばをそのまま別の言語に口で置きかえることが通訳なのです。

念のためにいいますけど、通訳ということばにはふたつの意味があります。ひとつは、先ほど説明した口でおこなう翻訳という行為そのものを通訳とよびますし、通訳をおこなうひとのことも通訳とよびます。通訳士ということばもありますが、一般には通訳をするひとは通訳とよばれます。

通訳はおたがいのことばをしらない2者をむすぶ架け橋

通訳が必要となるのは、おたがいのことばをしらない、あるいは、しってはいても十分にうまくはない2者(個人・グループとも)がコミュニケーションをとらなければならないときです。そんなことはしっているよ、というひとはおおいとおもいます。ですが、このことばが通じあわない2者がいるという前提があるということは重要です。それは、日米の首脳会談かもしれませんし、日本にプロモーションにきたK-popシンガーへのテレビ局のアナウンサーのインタビューかもしれません。こういったことばがコミュニケーションの壁になっているひとたちのあいだにたって、2つのことばがわかる通訳は2者が意志をつうじあうための架け橋になるのです。

同時通訳と逐次通訳

通訳にはおおきくわけて、ふたつの方法があります。同時通訳と逐次(ちくじ)通訳です。同時通訳はその名のとおり、ひとがはなしていることを片っ端から同時に通訳していくやりかたです。たまに、海外のニュース番組とかをテレビでみていると、ながれてきたりします。逐次通訳はある程度のながさをはなしたところで、いったんとめてもらって、はなした内容を通訳するやり方です。外国からきたアーティストとかがテレビではなしているときに、一歩ひいたところにひとがいて、外国語ではなした内容を日本語でつたえてくれますよね。こういったときにほとんどの場合採用される方法が逐次通訳です。テレビで機会があったらみてください。

医療通訳についていうと、基本は逐次通訳です。その理由はいくつかありますが、それはまた別の機会におはなししましょう。その前に、次回は、医療通訳はだれに対して、どこで通訳をおこなうのかおはなししましょう。

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