病名とか症状って、可算名詞、それとも不可算名詞? (1)

日本人にとって、名詞が可算か不可算なのかということを肌感覚で理解するというのは、むつかしいですよね。いくらやっても、正直なところしっくりこないところがあります。英語を書く時にピタッと筆が止まってしまって、これって不定冠詞”a”付けた方がいいんだっけって悩むことはよくあって、ネットで調べたりします。これは恥ずかしいですが、今までに何度もやっています。

そこで、病名なんですけど、可算名詞か不可算名詞かどちらなんでしょうか。
例えば、「私は花粉症です」っていうのはどういうんでしょうか。
“I have hay fever.”
“I have a hay fever.”
どちらの方がより適切なんですかね。
(ググると両方出てきます。)

まずは、可算名詞と不可算名詞の確認してみましょう。ここでは、基本的に名詞は可算なんだと仮定して、どういった名詞が不可算なのかを確認します。ほとんど何でも数えちゃう日本人ですからね。まずはケンブリッジ大学出版局のこちらのサイトが挙げる不可算名詞は以下の通りです。

(1)考え・経験
例: advice, information, progress, news, luck, fun, work
(2)原材料・物質
water, rice, cement, gold, milk
(3)気象用語
weather, thunder, lightning, rain, snow
(4)集合名詞(複数のものによって構成されているもの)
urniture, equipment, rubbish, luggage
(5)その他
accommodation, baggage, homework, knowledge, money, permission, research, traffic, travel

次回は、BBCの”Learning English”を参考にして、可算名詞と不可算名詞を見てみましょう

disease? illness? sickness? (3)

さて、今回はsicknessとillnessについて話します。diseaseと比べるとsicknessとillnessは、むつかしいかもしれません。カナダ医学部教員協会(AFMC)やエジンバラ大学のボイド教授によると、illnessというのは患者が主観的に感じている不健康な状態であるということで、診断としての「病気」とは関係ないとされています。その一方で、オーストラリアのジュラ先生は、 ほぼ同じ説明をsicknessについて示しています。医学的な根拠をもつ、diseaseに比べ、sicknessとillnessは地域性など、解釈に幅がでてくるようです。なお、sicknessは薬品系のデータベースMedDRAでは「嘔気」となっているように、吐き気やむかつきなどの症状につい ての意味をもちます。motion sickness 乗物酔いや morning sickness つわりを思い出していただければ、感じは掴めるとおもいます。

sicknessについては、AFMCとボイド教授が興味深いことを記しています。sicknessは社会的なものだと言うのです。社会的な価値観で「病気」となっているものを指すと言うのです。AFMCのウェブページには、面白い説明が載っています。

“For example, a patient complains of tiredness and malaise–his illness as he experiences it. He consults a doctor about it–because he believes that he might have a sickness. The doctor might attribute the patient’s symptoms to a thyroid condition–a disease. ”
(Susser MW. Causal thinking in the health sciences. New York: Oxford University Press, 1973)

つまり、sicknessは患者が主観的に捉えている(社会的に捉えさせられている)「病気」だというのですね。概念として差異を見つけるのがなかなかむつ かしいけれども、わかりやすい例だと思います。とはいえ、sicknessとillnessについては、一般用語として使う範囲では、吐き気を除く部分に おいては、これといった明確な違いを示すことはむつかしそうです。

ところで、ailmentですが、重篤ではないが慢性的な病気を 指すことが多いようです。といってもあくまでそういう傾向があるというだけで、「持病」と訳すのは違うかなと思います。例えば、”I have a minor ailment.”を「軽い持病があります」と訳すよりは、「体のことでちょっとした悩みがあります」と訳した方がより実感に近いのかなと感じます。

minor ailmentでネットを検索すると、英国のサイトが多く、引っかかります。ここら辺は地域性を感じます。こういった英国サイトをみると、minor ailmentsの例として挙げられているのは、coughs 咳、colds 風邪、mild eczema 軽い湿疹、athlete’s foot 水虫、heartburn/indigestion 胸焼け・消化不良、constipation 便秘、sore throat のどの痛みなどで、insect bites and stings 虫さされもあります。サイトによっては、こういったminor ailmentsでは病院に来るよりは、薬局にいくようにと指示しています。「慢性的な病気」でくくるのはむつかしいでしょう。

disease? illness? sickness? (2)

(1) で触れたいくつかのサイトですが、それぞれの単語の意味についての見解には、やや違いがあります。もっとも、diseaseに関してはほぼ見解が一致してるようです。つまり、diseaseは、診断された「病気」だと言うことです。別の言い方をすると、医師が病理学的に患者の健康状態を診察した上で診断したという意味での「病気」であると言うことです。ちなみに「病理学」とは、高知大学医学部・病理学講座によると「病気になった原因を探り、病気になった患者の身体に生じている変化が、どのようなものであるかを研究する学問分野」ということです。

diseaseとは「重篤であったり、不治ものと受け止められがちであり、illnessはインフルエンザなどの一時的な不健康状態」という見解や、原因がはっきりしている病気を指すという見解もあります。しかし、必ずしもそうとはいえなそうです。例えば、メイヨ・クリニックが一般向けに出しているインフルエンザの説明ではインフルエンザはdiseaseとなっています。また、idiopathic 特発性のdiseaseもあります。あくまでdiseaseとは客観的(患者の訴えだけでなく医師の診断が入ると言うこと)な意味を持つという点が重要でしょう。医師が「病気です」と診断した際には、特定の病名でない限り素直にdiseaseを訳語として選択することがよいでしょう。

ちなみに、subjective 主観的と objective 客観的というのは、医療行為を理解する上でとても大事なポイントです。symptoms 症状というのは、多くの場合、患者が経験するとても主観的なものです。患者から症状についての complaints 訴えに耳を傾けながら医師は診察をし、findings 所見として客観的な形でまとめ、診断を下します。このプロセスを理解すると、医療通訳をしていても、流れがつかみやすくなります。

次回はsicknessとillnessについて、みてみましょう。

disease? illness? sickness? (1)

一口で「病気」と行っても、いろいろな表現がありますね。diseaseやillness、sicknessなどは誰しも思いつくでしょう。この他にailmentなんて言葉もあります。どれを選んだらいいんだろうと悩む人も多いし、違いは何なんですか、と質問をしてくる人もいます。

diseaseとillness、sicknessという3つの単語については、その使い方に悩むのは当然でしょう。ネットを検索してみれば、違いが何なのかと質問をしている方が数多くいることが分かります。3つの単語の意味を切り分けることの難しさは、定義付けに関する論文をエジンバラ大学の先生が書いていることや、カナダの医学校教職員の団体であるAFMCがウェブサイトで言及していることでもわかります。こういった事実を考えれば、英語学習者だけの問題ではないということがお分かりになるでしょう。

この他、日本語ではこちらのサイトが図をつかって丁寧に説明しています。日常的な意味であれば、こちらのオーストラリア人の先生が簡潔に説明しています。

ここで紹介したサイトや論文の説明をみても分かりづらいことがあると思います。そこで、次回はもう少しくわしく言葉の違いをみていきたいと思います。

とっても暗い森だけど、散歩をするつもりで

医療英語を勉強しているとどの言葉(単語)が適切なのか混乱してしまう、そんな経験をしたことがないでしょうか。1つの単語にいくつものまったく違った言葉が辞書に並ぶ。英→和にしても、和→英にしても。しかも、辞書やネットで調べて得た英単語をさらに検索にかけても、一向に引っかかってこない。つまり、実際に使われている様子はほとんどない。多くの方がこんな経験をしているのではないでしょうか。

こんなことを私も経験してきました。そして、今も経験しています。言語を学ぶということはいつでも現在進行形だと思います。医療英語の場合、それはなおさらと言えるでしょう。このブログでは、私が学んで来たこと、学んでいることをシェアしたいと考えています。少しでも、医療英語を学ぶ方たちにとって有益なものになればと希望しています。