語の構成要素 F

Fからはじまる構成要素はすくないですね。すべてラテン語由来です。ギリシャ語にはFがないのでしょうか。残念ながら、そこまでギリシャ語にくわしくありません。

使用範囲の広い構成要素はfront(o)-と-form/-iformくらいでしょうか。fossaは一般的にはそれほどつかわれないのでしょうが、医学的にはおぼえておいていい言葉でしょう。そのまま一単語としてつかわれることも、語の構成要素としてつかわれることもあります。

構成要素 語源・意味 例語
faci(o)- ラ「顔」 facioplegia: 顔面麻痺; 顔面筋麻痺.
femor(o)- ラ「大腿(骨)」 femorocele: 大腿ヘルニア.
fibr(o)- ラ「線維」「線維組織」「線維素」 fibroblast: 線維芽細胞.
fibul(o)- ラ「ブローチ」「腓骨」 fibula: 腓骨.
-fid(a), -fidate ラ「分割された」「分裂された」 spinabifida: 二分脊椎, 脊椎披裂.
-form, -iform ラ「~形」「~状」 cuneiform: くさび(楔)状、けつ(楔)状.
fossa ラ「窩(か、骨などの穴)」 fossa ovalis: 卵円窩.
front(o)- ラ「額」「前頭」 frontonasal: 前頭鼻(骨).
furc(o/i)-, furcat ラ「フォーク」「分岐」 furcal nerve: 分岐神経(第四腰椎神経).
fus-, fun-, fund-, fut-, found-, fuse, fusion ラ「注ぐこと」「融解」 fusible calculus: 溶解結石.

参考資料

会話の流れを予想する 予想にとらわれない

おおくの人には当然のことといわれるかもしれませんが、会話というものは予想でなり立っています。友だちと話していて、急に話題を変えられたらどうなるでしょうか。「えっなになに? なんの話?」となるのではないでしょうか。あるいは、道で知らないひとに急に声をかけられて、いきなり話をはじめられたらどうでしょうか。それことだけでもびっくりするでしょうけど、なんの話をしているのか理解するまでに時間がかかるでしょう。

こういった時に感じるとまどいは、無意識のうちに、ひとは会話の先行きを予想していることからおこります。つまり、予想の範囲をはずれたところに会話が急にいってしまうと、ひとはその流れにのれずに、とまどってしまうのです。

このことについてふれたのは、医療通訳をするときも予想をすることが重要なのではないかということをいいたかったからです。もちろん、医者ではないのですから、すべてを予想することはむつかしいでしょうし、すべきではありません。ですから、タイトルにも「予想にとらわれない」とくわえました。ですが、ある程度、どのように診察や検査などがすすんでいくかということをまなんでおくということは医療通訳をするうえで、とても大切だとおもいます。

こういった流れをまなぶということにはついては、なによりも経験をつむということにまさるものはありません。もっとも、おおくのひとにとって、経験をつむということはかんたんなことではありません。そういった機会をもとめることはとてもむつかしいでしょう。

ドラマやドキュメンタリーをみる

ひとつのやり方は、診療の場を舞台にしたドラマやドキュメンタリーなどをみることでしょう。たとえば、NHKで放送している「総合診察医 ドクターG」は医師のかんがえる方とともに診察の流れがわかるよくできた教育バラエティーだとおもいます。再現ドラマの中では、患者が自身の症状を訴え(主訴)、問診・検査をおこないながら診察をすすめていきます。問診・検査の結果をもとに、番組参加者(新米医師と芸能人)が診断にとり組みます。とてもおすすめです。

ドラマですと、米国医療ドラマの「ER」はお世話になった帝京大学医学部元教授の先生が「へたに大学で授業をやるよりも、あのドラマをみせたほうが1年生くらいにはちょうどよい」といったくらい医療現場をまなぶにはよくできているそうです。また、「ロイヤルペインズ」という米国ドラマもバラエティー色はつよいですけれども、診察上の表現をまなぶにはわるくないとおもいます。

ところで、病気や健康をテーマにしたバラエティ番組のおおくは、わかりやすく説明するために、うそとまではいいませんけれども、かなり脚色がはいっているので、おすすめしません。

医師用のマニュアルを読む

もうひとつのアプローチとしておすすめするのは、医師用のマニュアルを読むことです。「外来医マニュアル」(医歯薬出版)などはとてもいい教材だとおもいます。それぞれの症状(患者の主訴)によって、外来医がどのような点に注意して診察をすすめていくかが書かれています。

ところで、「外来医」って英語でなんていうんでしょうね。weblioでみると、なにもでてきませんですね。outpatient physician、outpatient care physicianとかambulatory care physicianなんていう言葉があるようですね。

脇役として予想にはとらわれない

さて、予想については、積極的に予想をたてるということよりも、ふつうの会話とおなじように無意識のうちに予想をたてられるくらい、診察のすすめ方(流れ)を身につけ、自然と流れにのれることが大切でしょう。あらためますが、自分の予想にとらわれてはいけないでしょう。あくまで通訳は脇役なのですから。

語の構成要素 E

Eからはじまる構成要素もそれほどおおくはありません。「切除」をあらわす-ectomyは「切開」を意味する-tomyとあわせておぼえて、そのちがいをおぼえておきましょう。endo-「内」とexo-「外」も対にしておぼえておくといいでしょう。

構成要素 語源・意味 例語
-eal, -al , -ial ラ(名詞につけて)「~の(性質の)」「~に関連した」; (動詞につけて)「~すること」; 薬剤名を作る adenohypophyseal: adj. 下垂体前葉(adenohypophysis, anterior pituitary, anterior pituitary gland)の. corneal: adj. 角膜(cornea)の. esophageal: adj. 食道(esophagus)の. perineal: adj. 会陰(perineum)の.
ec- ギ「外」「外側」 ectopia: 異所. ectopic pregnancy: 子宮外妊娠,異所性妊娠.
ech(o)- ギ「音」 echocardiography: 超音波心(臓)造影(法), 心臓エコー検査(法), 心エコー法.
ect(o)- ギ「外」「外部」⇔endo- ectoblast: 外胚葉. ectoderm: 外胚葉.
-ectasia, -ectasis ギ[病理]「拡張症」 bronchiectasis: 気管支拡張症. telangiectasia: 毛細(血)管拡張、末梢血管拡張.
-ectomy ギ[外科]「切除(術)」 cf. resection: 切除(術). excision: 摘出、切除(術). mastectomy: 乳房切断除(術).
electr(o)- ギ→ラ「電気」「電解」「電子」 electrocardiography: 心電図記録(法), 心電図検査(法).
emesi-, -emea, -emesis, eme-, emeto-, emet-, emeti-, -emetic ギ「嘔吐」「吐く」 hematemesis: 吐血.
-emia, -hemia, -emic, -hemic ギ「血液(の状態)」; 米語 anemia: 貧血症.
en-, em- ギ「中」「内」 endemic: adj. 地方病の, 風土病の, 固有の.
encephal(o)- ギ「脳」 encephalogram: 脳造影図; 脳造影撮影図.
end(o)- ギ「内」「内部」⇔ect(o)-, ex(o)- endocrinology: 内分泌学, 内分泌科. endospore: 内生胞子, 内膜
enter(o)- ギ「腸」 gastroenterology: 消化器科、消化器病学、胃腸病学
eosin(o)- ギ「赤い」「赤いしみ」「赤色染料」 eosinophil granulocyte: 好酸球
ep(i)- ギ「上」「追加」 epicardium: 心外膜. epidermis: 上皮、表皮 .epidural: 硬膜(dura mater)外の. episclera: 上強膜. epistaxis: 鼻出血、鼻血.
episi(o)- ギ「外陰(vulva)」「会陰部」 episiotomy: 会陰切開(術).
erythr(o)- ギ「赤」「赤血球」 erythrocyte: 赤血球.
-esis ギ「…の状態」「…の症状」 agnesis: 非形成, 無発生, 無発育, 陰萎, 不妊.
eso- ギ「内(側)」 esodeviation: 内方偏位, 内斜視.
-esophageal, -esophago- ギ「食道(gullet)」 esophagocele: 食道ヘルニア.
esth-, esthe-, esthesio- ギ「知覚」「感覚」「触覚」; 米語 local anesthesia: 局所麻酔.
estr(o)- ギ「発情」 estrogen: エストロゲン.
eu- ギ「良」「好」「容易に」「状態の」「真正の」「真に」「完全生活環をもつ」 eukaryote: 真核、真核細胞、真核生物
ex(o)- ギ「外」「外部」「産出」⇔end(o)- excision: 摘出、切除(術). exophthalmos: 眼球突出(症). exoskeleton: 皮膚骨格,外骨格.
exanthema(to)- ギ「発疹」 exanthema subitum: 突発性発疹.
extra-, extro-, extr-, exter- ラ「外の」「範囲外の」「外へ」⇔intra, intro extradural hematoma: 硬膜外血腫.

参考資料

漢字がおおいのはダメ

近しいひとにブログを見せたところ、漢字がおおいとダメだしをされた。読むのにつかれるとのことだった。

そのひとがいうには、最近読んだあるベストセラーが漢字がまったくないのにおどろいたのだという。ここまで漢字がなくていいのかとあきれたそうだが、読んでみると、すらすら読めてしまったのだという。いまどきは、あのくらい漢字がすくないほうがいいのだいうことがわかったのだという。

あのくらいといわれても、その本を読んだわけではないので、どのくらいなんだかはなんともいえない。個人的には、漢字がおおい文章のほうがはすきだ。そのことは、自分の劣等感からだとおもっている。とはいえ、漢字というものはこまかいし、PCのスクリーンやスマホでみると、よけいにこまかいところが気になる。たしかに、漢字を書きつらねるのはブロガーとしてはかしこくないのかもしれない。

ちなみにその近しいひとは、かなり年配で、本をよく読む。たぶん、1年でその日数分、つまり365冊くらいは読んでいるのではないか。だから、本をよく読まないひとがそういっているわけではないということだ。

すなおにそのアドバイスにはしたがおうとおもう。ただでさえ、医療用語には漢字が多いのだから。もちろん、漢字というのはとても便利で、字面をみただけで意味がつたわることがある。それに、ひらがなで書いてしまうとつたわりづらくなるものもある。ですので、漢字を使いませんというわけではない。ただ、気がつく範囲で、漢字をつかいことをひかえていこうということだ。

語の構成要素 D

Dから始まる構成要素はそれほど多くはありませんが、不全を表すdysや、2つや分離のdiといった重要なものがあります。

構成要素 語源・意味 例語
dacry(o)- ギ「涙」 dacryorrhea: 流涙(過多)、流涙症
dactyl(o)- ギ「指」「足指」 dactylology: 手指法(fingerspelling、手話の一種)
de- ラ「下降」「分離・除去」「否定」「強意」「悪化・避難」「反対・逆」 descending colon: 下行結腸.
dent(i/o)- ラ「歯」 dentist: 歯科医.
dermat(o)-, derm(o)-, -derma ギ「皮膚」 dermatology: 皮膚科
-desis ギ「束縛」「接合」「固着」 arthrodesis: 関節固定(術)
dextr(o)- ラ「右(側)」 dextrocardia: 右胸心、右心(症)
di- ギ「二」「二重」 diplopia: 複眼、二重視(double vision)
di- ラ「分離」 digest: 消化する.
dia- ギ「を通じて」「を横切って」「通して」 diacetyl: ジアセチル(バター・コーヒーの着香料)
diaphor- ギ→ラ「発汗」 diaphoretic: adj. 発汗性; n. 発汗薬.
dif- ラ「分離」「反対」「不・非・無」「除く・剥ぐ・奪う」; fの前で。他はdis- diffluence: adj. 溶解性.
dilat(o)-, -dilation ラ「拡大」「拡張」 vasodilation: 血管拡張.
digit(o)- ラ「指」「足指」 digit: ディジット、指(finger)、足指(toe)
dipl(o)- ギ「二重」「複」 diplopia: 複眼、二重視(double vision)
dips(o)-, -dipsia, -dipsy, -dipsias ギ「渇き」 polydipsia: 煩渇多飲(症)、(心因性)多飲(症). hydroadipsia: 水渇感欠乏. oligodipsia: 乏渇感症.
dis- ラ「分離」「反対」「不・非・無」「除く・剥ぐ・奪う」; fの前ではdif- dissection: 解体, 解剖, 切開, 分析.
dist(o/i)- ラ「遠位の」「末端の」「末梢の」 distal: adj. 遠位の.
dolich(o)- ギ「長い」 dolichocephaly: 長頭(症).
dors(o/i)- ラ「背」 dorsal: 「背部」. dorsocephalad: adv. 後頭方向へ.
duct(o)- ラ「導く」「管」 ductopenia: 管減少症.
duoden(o)- ラ「十二指腸」 duodenal atresia: 十二指腸閉鎖症.
dynam(o)- ギ「力」「動力」 dynamogenesis: 動力発生.
-dynia, odyn-, odyno-, -odynia, -odynic,-odyne, -odyn, -dyne ギ「痛み」 vulvodynia: 外陰痛
dys- ギ「不全」「異常」「悪化」「不良」「困難」「欠如」 dysphagia: 嚥下障害. dysphasia: 発語障害、不全失語(症).

参考資料