医療通訳関連の試験がつづきましたが、その対策講座とかをやったりしながら、あらためてかんがえたのは、患者のコミュニケーションをサポートするために、通訳は患者がうったえている症状について、しっかりつたえる力をまずは身につけなくてはいけないなということです。今回は私がそうかんがえる理由にについてふれたいとおもいます。
医療知識をまなぶプロセスをふりかえってみよう
医療通訳をまなぶ方々のバックグラウンドはさまざまなので、一概にはいえませんが、おおくの方が医療知識・医療用語の学習に、まずはとりくむものとおもいます。そのときに、たとえば、体の構造については、それぞれの動機をとりあげ、「心臓」という組織について、「循環器系の器官」、「おおきく分けて、4つの部屋(右心房・右心室、左心房・左心室)にわかれる」といったかたちで「名前」からはじめて、じょじょにこまかくおぼえていったりするでしょう。
病気についても似たように、たとえば「肺炎」という病名をまずはノートに書き、つづいて「肺の末梢(奥)にある肺胞領域におこる炎症のこと」(保健同人社・家庭の医学iOS版)といった、「肺炎」とはなにかということのざっくりとした定義を書き留めてはいないでしょうか。そこから、「肺炎」の徴候・症状をそのノートに加えていくといったやり方でじぶんの学習ノートをつくっていってはいないでしょうか。
実は、私自身も、病気についての知識を身につけるときは、そのやり方をとっています。整理をして知識を積み上げていう点からいえば、このやり方に間違いはないでしょう。「病名」「おおまかな定義」「病因」「徴候・症状」「検査」「治療」といった項目にわけて、病気についての学習ノートをつくることをいままでおしえてきましたし、これからもおしえていくでしょう。それなのに、「症状をしっかり通訳することをまなぼう」と私があえていうには理由があります。
患者は来院するときに病名をしらない
患者がはじめて病院をおとずれるときには、まず病名はしりません。「頭が痛い」「気持ちがわるい」「頭がフラフラする」「耳鳴りがする」など、かかえているものはさまざまでしょうが、なにかの症状になやんで、患者は病院をおとずれます。もちろん、「おなかが痛いのは胃がんだからじゃないか」とか、「胸が痛いのは、心筋梗塞だからだ」とおもいこんで、病院にくる患者はいるでしょう。しかし、それは病名をしっているということとはことなります。
医師は、患者のうったえる症状をしっかりきくことから診察をはじめます。ときとして、患者自身が見のがしていた症状も、いろいろな角度から質問を投げかけることで、自覚させたりします。いずれにせよ、患者のうったえる症状をしっかりききだすことから、診察ははじまるのです。このことこそが、「症状をしっかり通訳することをまなぼう」と私があえてとりあげた理由です。
医療通訳は、もちろん医療についてのあらやる知識を身につけていく必要があります。その点からいえば、症状のことをこういったかたちでとりあげるのは、ややバランスを欠いているかもしれません。しかし、ここしばらく、患者によりそって、サポートをしていくことはどういうことだろうと、あらためてかんがえていく機会をえて、患者のうったえる症状をしっかり訳していく(患者の医師への症状についてのコミュニケーションをしっかりサポートしていく)ことの重要性を再認識しました。そして、そのことをこのブログの読者の方におつたえしたいとかんがえたのです。