東京医大の入試結果操作でかんがえる — ジェンダー、教育、グローバル・トレンド

東京医大の入試について不正行為があったことにつづいて、採点結果を操作し女子合格者の数を抑制したことが問題視されています。フランス大使館がツイッターでこの問題を取り上げ、やや皮肉をこめてフランス医学部への進学を誘うなど、海外からも注目をあつめていて、報道機関にも幅ひろく取りあげられています(英FT独DW米Scienceなど)。

東京医大がなぜこういういことをしたのかという理由については、大学の元幹部がTBSのインタビューの中で「体力的にきつく、女性は外科医にならないし、へき地医療に行きたがらない。入試を普通にやると女性がおおくなってしまう」とこたえて、性差別の問題ではなく「日本の医学の将来に関わる問題だ」との危機感があったとはなしています。

注目したのは、女性の優秀さへの認識と、女性医師が増えることが日本の医療の負担につながるという意識です。この2点を中心に、海外との比較もふくめて、いろいろとしらべてみました。しらべればしらべるほど、スッキリした答えがみつかるような話ではないということがわかりました。と同時にとても興味ぶかい発見がいくつもありました。

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女子が優秀との認識

TBSの元幹部のインタービューでは「入試を普通にやると女性がおおくなってしまう」といっていますが、女子合格者の数が男子合格者を上まわってしまうだろうという意味なのか、単に現状よりも女子合格者がふえてしまい「日本の医学の将来」にとってのぞましい水準を超えてしまうという意味なのかは、よくわかりません。すくなくとも、試験の点数操作をせずにはいられないほどには優秀だと試験をおこなう側はみているということはわかります。

ある医師は、医学部と理学部をのぞく全学部の入学試験で女子の合格率が男子を上まわり、理学部ですら同水準であるという今の大学入試の状況をしめし、医学部だけ女子の合格率が低いのは不自然と書いています。医学部の試験にバイアスがかかり、女子学生へのガラスの天井となっている可能性を東京医大の事件が発覚する前から指摘しているのです。この医師は、男子に対する女子の優位性をかならずしも主張しているわけではないですが、今の医学部合格率が女子の能力を反映しているとはみていません。

もっと踏みこんでいるのは、ある著名な医師タレントで、出演中のテレビ番組で今回の事件が取りあげられると「試験の点数だけで上から入学させたら女性だけになってしまう」」と発言しています。入学試験における女子の優位性について、あたかも医学界の常識かのように話しているのです。

個人的な肌感覚としては、企業で採用を担当した複数の方と話した経験から、女子の方が優秀なのだという見方に納得しそうになります。大手電機メーカーの人事担当だった方や、中小企業で採用を行った方などは、いずれも採用プロセスで優秀な方から採っていったら女性ばかりになってしまうだろうと話していました。ある外資系企業で採用にかかわった方は、Diversityを確保するために、男性の応募者に「ゲタをはかせなければいけない」のだと、人材採用のむつかしさを説明してくれました。

しかし、実際のところ、男女の学習能力というのはどうなっているのでしょうか。

男女別の成績をみてみると

大学受験レベルの男女別の成績をデータとしてさがしてみたのですが、残念ながらみつけることはできませんでした。センター試験が男女別のデータを公開してくれていればいいのですが、残念ながらそのようなデータは発表されていません。男女共同参画社会を本気でめざすのであれば、課題を洗いだすべきでしょうから、こういったデータを公開した方がいいとおもいますので残念です。

高校受験レベルの成績であれば、男女別の学習能力を示すデータをみつけることはできます。まずは、OECDが各国と協力しておこなっているPISA(Programme for International Student Assessment、生徒の学習到達度調査)があります。

OECDのPISAは、各国の15歳児を対象に「科学的リテラシー」「読解力」「数学的リテラシー」の3分野についてしらべています。2015年におこなわれた調査には、72か国・地域(OECD加盟35か国、非加盟37か国・地域)約54万人の生徒が参加し、日本からは,全国198校(学科)・約6千600人の生徒が参加しています。

PISA 2015の調査結果「科学的リタラシー」の分野で、日本は男子545点に対して女子が532点との結果がでました。「数学的リテラシー」では、日本は男子539点に対し女子が525点となっています。その一方「読解力」の分野は、すべての国で女子が男子よりも得点が高く、日本では女子の523点に対し、男子が509点でした。3分野を総合してみると、残念ながら、女子の男子に対する優位性を証明する結果になっていません。

高校受験についてみると、東京都立の進学校・西高校が過去の受験結果を男女別で報告しているものがあり、PISAと似たような傾向となっています。過去12年間で、男子は常に数学でアドバンテージを得ています。国語と英語については明確な男女別傾向はないようです。数学でのアドバンテージに助けられ、男子はほとんどの年で全体の平均点での優位も確保しています。「市進 受験情報ナビ」による都立日比谷高校の受験情報は、2014年度のものだけですが、こちらでも男子は数学のアドバンテージによって3科目平均で女子の平均点を上まわっています。こういったデータは「迷信」と批判されている「女性は数学が苦手」と見方を裏書きしています。

PISAはともかく、こういったデータはまだまだ限定的なものなので、男女の学習能力の優劣に明確な結論をだすことはできないでしょう。センター試験の結果の研究をすすめるなど、幅ひろい取りくみが求められるところだとおもいます。今の段階では、入学試験での女子受験生の優位性を数理系学部についてはみとめることがむつかしいということがいえるでしょう(小論文・面接を採用した医学部の入学試験については優位性が逆転する可能性もあります)。

世界的には女子優位がすすんでいるようす

学習成果という点で世界をみると、グローバルなトレンドとして、女子が男子に対して優位に立ちつつあるようすがわかります。PISAの数学や科学の分野でも70%の国や地域で女子が男子を上まわっているとのことです。

米国でも、長期的な取り組みが功を奏し、女子は高校のクラスルーム・レベルのSTEM(Science, Technology, Engineering, and Math)でも男子と肩をならべるまでに成績が向上しているとの報告があります。とはいえ、それも高校のクラスでの話で、大学入学のための試験であるSATでは50年以上つづく傾向が今もつづき、依然として数学のスコアで男子が女子をおおきく上まわっているとのことです

医学部についてみると、アメリカでは2017年に史上はじめて医学部への女子新入生の数が男子新入生の数を上まわりました。なかなか興味深いのは、入学のためのMCATという試験結果をみると男子の平均は女子を上まわっています。学士での卒業成績(GPA)は、全体では女子が男子をわずかに上まわっていますが、数科学分野だけにかぎると、男子の方が優位だったという結果がでています。

他の先進国をみますと、イギリスの医学部では女子の割合が55%フランスでは60%を超えているというのが現状となっています。カナダは56%オーストラリア・ニュージーランドは52%となっています。

女医がふえると病院が維持できなくなるという主張

TBSのインタビューや、読売新聞への関係者の「女子は結婚や出産を機に離職することが多い。男性医師が大学病院を支えるという意識が学内に強い」という発言などをもとに、病院を維持するための男性医師確保が今回の問題の背景にあったといわれています。

その一方で、東京医大には大学病院の維持が目的などという消極的な姿勢ではなく、病院の利益確保のための安くて使いやすい人材確保という積極的な思惑が背景にはあったというきびしい見方もあります。

いずれの見方をとるにしても、勤務医の過酷な労働環境をなんとかしようという視点はなかったということになります。このままの医療制度で社会がささえられつづけることがあるのかと不安になります。

ところで、女性医師がふえると病院、ひいては医療制度そのものが維持できなくなるという見方がでているのは日本だけではありません。イギリスでは、著名な外科医が「女医がおおいことがどうしてNHS(国民健康サービス)にとって問題なのか」との投稿を有力紙に寄せ、女性医師はパートタイムではたらき、早期引退する傾向にあることを指摘し、医療制度にとって負担になるとしました。1人の医師をそだてるのにかかるコストがおなじなのに、おなじ仕事量に2倍の人をあてなければいけなく、医学教育(税金)に負担をかけているというのです。女性医師が要求度が高い専門分野を避ける傾向にあることも問題視しています。

この外科医の寄稿記事は、イングランド王立外科医師会(Royal College of Surgeons of England)からきびしく批判されています。パートタイム医師のおおくが女性医師であるのは事実だが、ほとんどの女性医師が1日30時間以上はたらいていると医師会は反論しました。女性医師の比率は社会の構成比を反映したものであるべきで、そのためにはNHSが変わる必要があるとのかんがえをしめしました。

医学教育は社会と直結している

今回の記事のためにいろいろとしらべていると、いろいろと幅ひろい分野に入りこんでいってしまい、なかなかまとめるのが大変でした。この記事には書きませんでしたが、医学部受験の年齢制限といった人権にかかわる問題とそれに関連する海外での事例、女性の学力更新とそれにともなう米国社会の変化など、とても興味ぶかい話がつぎつぎにでてきて、どんどんと時間が過ぎて行きました。

ひとつわかったことは、医学部という医学教育の場は、社会インフラの重要な部分をしめる医療の現場へとつながり、そのことで社会と直結しているということです。ひとりひとりの医学生に社会(国)が投資をし、その医学生がそだって、医師となり医療の実践をとおして、社会を支えていくものだということです。そこには社会のありようが反映されていくのだということです。

フランス大使館は、そろそろ実現されそうな医師のパリティ(男女同数)をツイッターでほこりました。社会が男女1:1で構成されている以上、医師の数もそうあるべきだという意識がその背景にはあるのでしょう。イングランド王立外科医師会が”It is also crucial that the composition of the medical profession mirrors the demographics of the society it serves including gender and ethnicity. “とし、医師の構成が社会の構成と対応していることが重要であると明言しているのも、そういった社会であるべきだという意思があるのでしょう。日本は、どうかんがえていくのでしょうか。

プレセッション・CIFEを具体例をあげながらもう一度

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医療通訳は現場で実際に通訳をはじめる前に、患者または医療従事者に対して、どのような形で通訳をおこなっていくのかを手みじかに説明することがあります。これをプレセッション(pre-session)といいます。『医療英語の森へ』では以前「プレセッションとCIFE(1)」「プレセッションとCIFE(2)」でくわしく取りあげました。

くわしい説明については、以前の投稿をご参照ください。ざっくりいうと、プレセッションの内容は4つの約束ごとをあらわすそれぞれの英単語の最初の文字でつくられたCIFEという頭字語によってよくあらわされます。

CIFE
C Confidentiality 守秘義務
I “I” as in first person 一人称の使用
F Flow 流れ・話し方
E Everything すべての発言を通訳

今回は、具体例を挙げていきたいとおもいます。

4つの約束ごと・英語例文

CIFE 例文
Confidentiality Everything said and discussed in the session will remain highly confidential
“I” as in first person Please speak directly to the patient/doctor as if no language assistance were present. I will interpret everything in first person; that is, if the patient says (you say), “I have a headache,” I will say, “I have a headache,” in English (Japanese).
Flow I would like you to speak slowly and use short phrases whenever possible for accurate interpretation.
Everything I am obligated to interpret everything you say in the session, so if there is anything you don’t want to let your patient/doctor know, please refrain from saying it.

4つの約束ごと・日本語例文

CIFE 例文
守秘義務 医療通訳として私は守秘義務を負っています。通訳した内容を他の方が知ったりすることはありませんので安心してお話しください。
一人称の使用 お話をするときは、私がいないかのように、直接、患者さん(お医者さん)にお話ください。すべての通訳は一人称でおこないます。患者さんが「お腹が痛い」といえば、「お腹が痛い」と訳します。「患者さんは『お腹が痛い』といっている」とは訳しません。
話し方・流れ 正確に訳すために、なるべくゆっくりとお話ください。できれば、区切って、短くお話ください。
すべての発言を通訳 診察中にお話されたことは、すべて訳すことになっています。ですので、もし、患者さん(お医者さん)に知られたくないことがあれば、口に出すことをお控えいただきたく、よろしくお願いします。

プレセッション・英語例文

My name is Honda. I will be interpreting for you today. I would like to tell you how to go about the session. Everything discussed during the session will remain strictly confidential. Please speak directly to the doctor, not to me, and I will interpret everything in first person. That is, I will interpret everything you say as you say it. If you say, “I have a headache,” I will say, “I have a headache.” When you speak, please use short sentences so I can interpret effectively and precisely. If you have anything you don’t want the doctor to know, please don’t say it because I am obligated to interpret everything you say.

プレセッション・日本語例文

本日の通訳を担当します本田と申します。通訳をする上でいくつかお伝えしたいことがあります。守秘義務については厳格に従います。患者さんにお話をする際は、私ではなく、患者さんに直接お話しください。通訳については一人称を使います。つまり、患者さんが「頭が痛いです」といえば、私も「頭が痛いです」とだけ言います。正確に通訳をするために、なるべくゆっくりとそしてはっきりと話すようにご協力いただければと思います。先生が診察中にご発言になったことは、通訳として、すべて通訳する義務がありますので、その点ご承知いただきたく存じます。

テキスト『医療通訳』の単語集を自分のものにしよう・第6回 — 消化器各部位

東京オリンピックが近づくなか、医療通訳による訪日外国人サポートへの関心が高まっています。ブログ『医療英語の森へ』を発信する医薬通訳翻訳ゼミナールでは、独学では物足りない、不安だといった方のために、医療通訳・医療英語のオンライン講座をおこなっています。ご希望の方は当ゼミナール・ウェブサイトのお問い合わせページから、またはメールでご連絡ください。

※ 表は画像データとしてダウンロード可能です。

「自分のもの」にするためのすすめ方については第1回を参照のこと。

消化器系については、単語を覚えながら、「消化器系についての基本の基本」で以前、ふれたように、消化管としてのながれをまずはおさえましょう。そして、それぞれの器官でどのような機能がはたされているのか、どんな消化液がでているのかといったこともおぼえていきましょう。

付属器官の肝胆膵についての理解も大切です。消化管のながれをしっかりおさえてから、肝胆膵についても、関連付けながらおぼえていきましょう。

オリジナルの単語集を確認

日本語 英語
口腔 oral cavity
tongue
咽頭 pharynx
食道 esophagus / food pipe
肝臓 liver
胆管 bile duct
胆のう gallbladder
stomach
十二指腸 duodenum
脾臓 spleen
膵臓 pancreas
小腸 small intestine
大腸 large intestine
盲腸 cecum / appendix
虫垂 vermiform appendix
直腸 rectum
肛門 anus
門脈 portal vein

日本語・一般むけ・専門用語

日本語 English(lay term) English (medicine)
口腔[こうくう] oral cavity
舌[した] tongue
咽頭[いんとう] throat pharynx
食道[しょくどう] food pipe, foodpipe, gullet esophagus
肝臓[かんぞう] liver
胆管[たんかん] bile duct
胆のう/胆嚢[たんのう] gallbladder, gall bladder
胃[い] stomach
十二指腸[じゅうにしちょう] duodenum
脾臓[ひぞう] spleen
膵臓[すいぞう] pancreas
小腸[しょうちょう] small bowel small intestine
大腸[だいちょう] large bowel large intestine, colon
盲腸[もうちょう] cecum
虫垂[ちゅうすい] appendix, vermiform appendix
直腸[ちょくちょう] rectum
肛門[こうもん] anus
門脈[もんみゃく] portal vein, hepatic portal vein

例文・語の構成要素・おぼえがき

Example 語の構成要素 Note
An iconic part of a doctor’s visit is the inspection of the oral cavity and pharynx, suggested by the directive to “open your mouth and say ‘ah.’” or(o)-: ラ「口」.
Stimuli applied to specific locations on the tongue will dissolve into the saliva and may stimulate taste buds connected to either the left or right of the nerves, masking any lateral deficits. lingu(i/o)-: ラ「言語」「舌」.
The vagus nerve directly stimulates the contraction of skeletal muscles in the pharynx and larynx to contribute to the swallowing and speech functions. pharyng(o)-: ギ「咽頭」「のど」 のど(throat)は、咽頭・喉頭・食道をふくむだが、文脈によってつかいわけあれる: 「のどがあかくなっている」(咽頭)、「もちがのどにつまる」(食道)など.
Anteriorly, the laryngopharynx opens into the larynx, whereas posteriorly, it enters the esophagus. esophag(o)-: ギ「食道(gullet)」. laryngopharynx: 咽喉頭.
In addition to being an accessory digestive organ, the liver plays a number of roles in metabolism and regulation. hepat(o)-: ギ「肝臓」
The gallbladder stores, concentrates, and, when stimulated, propels the bile into the duodenum via the common bile duct. bili-: ラ→古仏「胆汁」「胆汁から誘導された」 common bile duct: 総胆管. bile: 胆汁.
The gallbladder‘s mucosa absorbs water and ions from bile, concentrating it by up to ten-fold. chol(e/o)-: ギ「胆汁」. cholecyst(o)-: ギ「胆嚢」. cholecystという単語もあることはあるが、胆嚢そのものを指すよりも、胆嚢炎(cholecystitis)や胆嚢摘出術(cholecystectomy)などにつかわれる.
The digestion of protein starts in the stomach, where HCl and pepsin break proteins into smaller polypeptides, which then travel to the small intestine. gastr(o/i)-: ギ「胃」. HCI: hydrogen chloride 塩化水素. pepsin: ペプシン.
Active transport mechanisms, primarily in the duodenum and jejunum, absorb most proteins as their breakdown products, amino acids. duoden(o)-: ラ「十二指腸」. active transport mechanism: 能動輸送機構.
Throughout adulthood, the liver and spleen maintain their ability to generate the formed elements. splen(o)-: ギ「脾臓(spleen)」. formed element: (血液)有形成分.
Hormones secreted by several endocrine glands, as well as endocrine cells of the pancreas, the stomach, and the small intestine, contribute to the control of digestion and nutrient metabolism. pancreat(o)-: ギ「膵(臓)」.
Foods are not processed in the order they are eaten; rather, they are mixed together with digestive juices in the stomach until they are converted into chyme, which is released into the small intestine. ile(o)-: ギ「回腸(ileum)」(ilio-: ラ「腸骨(ilium)」との混同に注意). 小腸は十二指腸(duodenum)、空腸(jejunum)、回腸(ileum)で構成されている. chyme: 糜粥[びじゅく](cf. bolus 食塊[しょくかい])
Bacteria in the large intestine ferment the undigested lactose, a process that produces gas. col(i/o)-, colono-: ギ「結腸」「大腸菌」. 大腸は盲腸(cecum)、結腸(colon)、直腸(rectum)によって構成される(肛門管 anal canalをふくむ資料、さらに肛門 anusをふくむ資料もある). colonは結腸を指すが、大腸そのものをおおまかにしてつかわれる(大腸内視鏡検査 colonoscopyなど). lactose: ラクトース、乳糖.
The first part of the large intestine is the cecum, a sac-like structure that is suspended inferior to the ileocecal valve. ileocecal valve: 回盲弁.
The appendix (or vermiform appendix) is a winding tube that attaches to the cecum.
Food residue leaving the sigmoid colon enters the rectum in the pelvis, near the third sacral vertebra. rect(o)-: ラ「直腸(rectum)」. sigmoid colon: S状結腸. sacral vertebra: 仙椎.
Both the mouth and anus are open to the external environment; thus, food and wastes within the alimentary canal are technically considered to be outside the body. an(o)-: ラ「肛門」. alimentary canal: 消化管(digestive tract, gastrointestinal tract, GI tractとも). 肛門については俗語がおおいが、使用はひかえる.
Nutrient-rich blood from the small intestine is then carried to the liver via the hepatic portal vein.

参考資料
医学大辞典(医学書院)
医学英和辞典 (研究社)
外来医マニュアル(医歯薬出版)
ビジュアルノート(メディックメディア)
「まんが 人体の不思議 」(ちくま新書1256)
「これでわかる! 人体解剖パーフェクト事典」(ナツメ社)
「カラー図解 人体解剖英単語辞典」(ナツメ社)
「しくみが見える体の図鑑」(エクスナレッジ)
「トートラ人体の構造と機能」(丸善出版)
ウィキペディア英語版
Mayo Clinic
MSD Manual, a.k.a. Merck Manual
Johns Hopkins Medicine
Healthline Media
WebMD
Urban Dictionary
MedilnePlus Medical Encyclopeida
– OpenStax Anatomy and Physiology (Download for free at https://openstax.org/details/books/anatomy-and-physiology)

テキストを全部そろえると4万円? 厚労省の医療通訳育成むけ『指導要項』をよむ

東京オリンピックが近づくなか、医療通訳による訪日外国人サポートへの関心が高まっています。ブログ『医療英語の森へ』を発信する医薬通訳翻訳ゼミナールは、独学では物足りない、不安だといった方のために、医療通訳・医療英語のオンライン講座もおこなっています。ご希望の方は当ゼミナール・ウェブサイトのお問い合わせページから、またはメールでご連絡ください。

先日おつたえしたとおり、厚生労働省はことし6月(2018年6月)に「医療通訳に関する資料 一覧」のウェブページを更新し、テキスト『医療通訳』の新版を公開しました。新版の特徴は、旧版のテキスト『医療通訳』にあった内容をわけて、テキスト『医療通訳』と『指導要項』との2冊構成にしたことです。

2冊構成にした理由は「〈医療通訳に必要な知識〉については、受講生の属性等によって学習すべき範囲が大きく異なるため本テキストでは扱わ」(テキスト『医療通訳』6ページ)ないこととしたからだとなっています。そして、〈医療通訳に必要な知識〉については「学習のための指針を示すことを主眼として、『指導要項』に移行」(同ページ)したと書かれています。さらに、「推奨書籍、参考書籍を提示して学習者の便宜を図りました」とつづいています。

「医療通訳に必要な知識」ってなに?

では、ここでいわれている「医療通訳に必要な知識」ってなんでしょうか。新版『医療通訳』を旧版とくらべると、「通訳」の技術・知識についての内容がかなり充実しています。医療通訳としての職業倫理・コミュニケーションスキル、外国人患者の文化的・社会的背景については、いずれも内容が整理されていますが、旧版とくらべて取りあげ方がおおきくかわったということはないようです。

一方、新版『医療通訳』でなくなったのは、旧版の目次にもとづくと「身体の仕組みと疾患の基礎知識」(解剖生理学と病理学にあたるもの)、「検査に関する基礎知識」、「薬に関する基礎知識」、「感染症に関する基礎知識」、そして「日本の医療制度に関する基礎知識」です。

「医療通訳に必要な知識」というのは、「通訳」についての知識も当然ふくむべきものだとはおもいます。しかし、以上の変更点をかんがえると、新版『医療通訳』そして『指導要項』がいっている「医療通訳に必要な知識」とは「医療通訳に必要な〈医療分野の〉知識」ということのようです。

医療分野の知識の教科書は自分で購入?

それでは「医療通訳に必要な知識」は『指導要項』をみてまなべばいいのでしょうか。「推奨書籍、参考書籍を提示して学習者の便宜を図りました」(テキスト『医療通訳』6ページ)とあるということは、「推奨書籍」「参考書籍」をつかってまなべということなのでしょうか。

『指導要項』では、どのように医療通訳の教育・研修が進めれていくのがいいのかの提案がしるされています。そして「使用テキスト」として「【医療通訳に必要な知識】については本指導要項で推奨テキストを提示している」(『指導要項』4ページ)と書いてあります。「推奨書籍」「参考書籍」にくわえて、今度は「推奨テキスト」ということばがでてきました。

「推奨書籍」「参考書籍」「推奨テキスト」についてはそれぞれの意味するところが、今ひとつわかりづらくなっています。「推奨テキスト」ということばは、ここでしかつかわれていません。『指導要項』の19ページには次のように書かれています。

「医療通訳に必要な基礎知識」に関して既存の書籍をテキスト教材として使用することを推奨しており「医療通訳」のテキストでは取り扱っていません。以下に「医療通訳に必要な基礎知識」でまなぶべき項目とテキストとし推奨する推薦書籍と参考書籍を提示します。

さらに、19ページののこりと、つづく20ページをよむと、どうやら「推奨書籍」を教科書のようにつかい、「参考書籍」を参考書のように利用することをオススメすると『指導要項』はいいたいようです。しかし、一部の医療についての知識は、「参考書籍」にあげた本にしかでていませんので、「推奨書籍」だけで十分にカバーされているというわけではなさそうです。

「推奨書籍」だけでも1万5000円

図書館で借りるという選択肢もありますが、医療通訳の学習にはそれなりの期間がかかります。実際に医療通訳として活動をはじめると、振りかえって、確認したいこともでてくるでしょう。そうかんがえると、『指導要項』が紹介している「推奨書籍」「参考書籍」を購入して、どうしても手元におきたいとかんがる人はすくなくないでしょう(医療通訳の森へではおススメしませんが)。

となると、どのくらいの出費を覚悟しなければならないのでしょうか。下に「推奨書籍」「参考書籍」をそれぞれリストアップしましたが、税込ベースで、計算をすると「推奨書籍」だけで、1万5228円となります。「参考書籍」はあわせて、2万3868円です(「参考書籍」としてあげられていない『病気がみえる 〈vol.11〉 運動器・整形外科』をふくむと2万7972円)。すべてあわせると、3万9096円(同4万3200円)とかなりの高額になります。

これは、厚労省の担当者もはっきりといっていますが、厚労省のテキスト『医療通訳』と『指導要項』はあくまで参考資料です。『指導要項』にならって、医療通訳の学習や育成を進めなければいけないということはありません。『指導要項』が紹介しているのだからと「推奨書籍」と「参考書籍」をそろえる判断もあるでしょうけれども、相当な出費になります。はっきりいっておきますが、厚労省の『指導要項』で紹介されているからといって、購入しなければいけないとかんがえる必要はありません

ところで、医学書は全般的に高額ですので、以前も書きましたが、ブックオフなどの古本屋を利用するのも有効なオプションです。あまりに古い本は避けた方が賢明ですが、おもわぬ掘り出し物があることもあります。とくに、医学部や、看護学校のちかくにあるブックオフは穴場だといわれています。

推薦書籍

参考書籍

テキスト『医療通訳』の単語集を自分のものにしよう・第5回 — 関節・骨各部位

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※ 表は画像データとしてダウンロード可能です。

「自分のもの」にするためのすすめ方については第1回を参照。

オリジナルの単語集を確認

まず、テキスト『医療通訳』の単語集から「関節・骨各部位」の英語の部分を抜きだしてみましょう。「重複」という項目を今回はもうけました。そして、第1回〜第4回にすでにでているものにチェックをいれました。

すでにでているものが10語もあることがわかります。この単語集の構成がテキスト『医療通訳』の人体器官図に対応しているためで、一部の器官・部位が2つの図にまたがってでているのでこういった重複がおこっています。この対応関係は、人体器官図と単語集が巻頭と巻末にはなれて記載されているので、ややわかりにくと感じる方もいるかとおもいます。

人体器官図についても英単語を直接書きこんでしまったほうが使いやすそうです。単語集は単語集で「自分のもの」にしていくプロセスで、順番の整理や、分類の調整など、合理化していくことが必要なのではないでしょうか。

日本語 英語 重複
上腕骨 humerus
内側上顆 epicondylus medialis
上腕骨滑車 trochlea humeri
肘頭 olecranon
橈骨 radius
尺骨 ulna
脊髄神経 spinal nerve
骨髄 bone marrow
椎骨 vertebra
馬尾神経 cauda equina
腸骨 ilium
股関節 hip joint
大腿骨頭 femoral head /caput femoris
大転子 greater trochanter
坐骨 ischium
大腿骨 femur / thigh bone
膝蓋骨 patella / kneecap
半月板 meniscus
側副靱帯 collateral ligament
腓骨 fibula
膝関節 knee joint
軟骨 cartilage
十字靱帯 cruciate ligament
脛骨 tibia / shin bone

日本語・一般むけ・専門用語

先ほど指摘したオリジナルの単語集にあった重複分については、削除してあります。ただし、ここらへんは、それぞれの「自分のもの」にしていくなかで、自分で決めていけばいいとおもいます。

日本語 English(lay term) English (medicine)
内側上顆[ないそくじょうか] medial epicondyle of the humerus, (epicondylus medialis humeri)
上腕骨滑車[じょうわんこつかっしゃ] trochlea of the humerus, humeral trochlea, trochlea humeri
肘頭[ちゅうとう] olecranon
脊髄神経[せきずいしんけい] spinal nerve
骨髄[こつずい] bone marrow
椎骨[ついこつ] vertebra
馬尾神経[ばびしんけい] cauda equina
股関節[こかんせつ] hip joint acetabulofemoral joint
大腿骨頭[だいたいこっとう] femoral head, head of the femur, (caput femoris)
大転子[だいてんし] greater trochanter
半月板[はんげつばん] meniscus
側副靱帯[そくふくじんたい] collateral ligament
軟骨[なんこつ] cartilage
十字靱帯[じゅうじじんたい] cruciate ligament

例文・語の構成要素・おぼえがき

Example 語の構成要素 Note
The prominent bony projection on the medial side is the medial epicondyle of the humerus. ep(i)-: ギ「上」「追加」. 内側上顆には、上腕骨内側上顆と大腿骨内側上顆(medial condyle of the femur)がある. ラテン語名の使用頻度は低い.
The elbow joint is formed by the articulation between the trochlea of the humerus and the trochlear notch of the ulna, plus the articulation between the capitulum of the humerus and the head of the radius. trochlear notch: 滑車切痕[かっしゃせっこん]. capitulum of the humerus: 上腕骨小頭[じょうわんこつしょうとう]
The olecranon forms the bony tip of the elbow, and bursitis here is also known as “student’s elbow.” crani(o)-: ギ→ラ「頭蓋」 olecranon bursitis: 肘頭滑液包炎[ちゅうとうかつえきほうえん].
The nerves connected to the spinal cord are the spinal nerves. 脊髄(spinal cord)からのびている31対の神経をさす. 複数形であらわされることがおおい.
The softer connective tissue that fills the interior of most bone is referred to as bone marrow. connective tissue: 結合組織[けつごうそしき].
The vertebral column—also known as the spinal column or spine—consists of a sequence of vertebrae (singular = vertebra), each of which is separated and united by an intervertebral disc. vertebraの複数形はvertebrae.
As the vertebral column grows, these nerves grow with it and result in a long bundle of nerves that resembles a horse’s tail and is named the cauda equina.
The sciatic nerve extends across the hip joint and is most commonly associated with the condition sciatica, which is the result of compression or irritation of the nerve or any of the spinal nerves giving rise to it. sciatic nerve: 坐骨神経[ざこつしんけい]. sciatica: 坐骨神経痛[ざこつしんけいつう].
The femoral head fuses between the ages of 14–17 years. ラテン語名の使用頻度は低い. fuse: (動詞)癒合する.
The lesser trochanter is the first to fuse, doing so at the onset of puberty (around 11 years of age), followed by the greater trochanter approximately 1 year later. lesser trochanter: 小転子[しょうてんし].
While both menisci are free to move during knee motions, the medial meniscus shows less movement because it is anchored at its outer margin to the articular capsule and tibial collateral ligament. men(o)-: ギ「月経(期間)」. men(0)-は月から来ている. menisci: meniscusの複数形. medial meniscus: 内側半月[ないそくはんげつ]. articular capsule: 関節包[かんせつほう]. tibial collateral ligament: 内側側副靭帯[ないそくそくふくじんたい].
The fibular collateral ligament (lateral collateral ligament) is on the lateral side and spans from the lateral epicondyle of the femur to the head of the fibula. fibular collateral ligament: 腓骨側副靱帯[ひこつそくふくじんたい]. lateral collateral ligament: 外側側副靱帯[がいそくそくふくじんたい].
The articulating surfaces of the bones at a synovial joint are not directly connected to each other by connective tissue or cartilage. synovial joint: 滑膜性関節[かつまくせいかんせつ].
Inside the knee are two intracapsular ligaments, the anterior cruciate ligament and posterior cruciate ligament. intracapsular ligament: 関節包内靱帯[かんせつほうないじんたい]. anterior cruciate ligament: 前十字靭帯[ぜんじゅうじじんたい]. posterior cruciate ligament: 後十字靭帯[こうじゅうじじんたい].

参考資料
医学大辞典(医学書院)
医学英和辞典 (研究社)
外来医マニュアル(医歯薬出版)
ビジュアルノート(メディックメディア)
「まんが 人体の不思議 」(ちくま新書1256)
「これでわかる! 人体解剖パーフェクト事典」(ナツメ社)
「カラー図解 人体解剖英単語辞典」(ナツメ社)
「しくみが見える体の図鑑」(エクスナレッジ)
「トートラ人体の構造と機能」(丸善出版)
ウィキペディア英語版
Mayo Clinic
MSD Manual, a.k.a. Merck Manual
Johns Hopkins Medicine
Healthline Media
WebMD
Urban Dictionary
MedilnePlus Medical Encyclopeida
– OpenStax Anatomy and Physiology (Download for free at https://openstax.org/details/books/anatomy-and-physiology)