ダイヤモンド・プリンセス内情告発の岩田教授、まずは著書の感染症本を読んでみよう

新型コロナウイルス禍のなか、世界中から注目を集めたダイヤモンド・プリンセスですが、神戸大学医学部附属病院の岩田健太郎感染症内科教授が内情を世界に向けて告発しています。

(2月20日午前11時追記)岩田健太郎教授はYouTubeのご自身のチャンネルに公開していた告発ビデオを英語版・日本語版ともに削除されたようです。動画が公開されていたということをしめすため、リンクをそのままにしておきます。多くの方がYouTube上に拡散しているので、どうしても見たい方は検索しましょう。

岩田教授は、DMAT(災害派遣医療チーム、Disaster Medical Assistance Team)の監督のもと、ダイヤモンド・プリンセスに乗り込んだそうですが、内部の惨状に驚きを隠せなかったそうです。上に紹介した英語の動画以外にも、日本語でも動画を公開しているので、そちらも下に紹介します。

岩田教授の告発の是非、また、その内容の真偽について、説得力のある判断を下し、これをお読みになっている方に伝えることができるほどの見識を私はもっていません。それは動画を見た方のそれぞれの判断に任せるしかないと考えます。ただ、ここで岩田教授でどういう人なんだろうという点について、ひとつだけお伝えできればと思います。

実は、以前から「医療英語の森へ」で紹介したい感染症の入門書がありました。しかし、ついついなまけて、そのことを先延ばししていました。その本というのが、岩田教授が書かれた「絵でわかる感染症 with もやしもん」(講談社・絵でわかるシリーズ)でした。感染症についての基礎知識を得るには、まずはこの本を読むべき、とおすすめできる好著だと感じています。


感染症について、一般向けに書かれた入門本というのは、なかなかありません。医療の中で、非常に重要な領域なのにもかかあらず、そういったものがないというのは、医療英語・医療通訳をまなび、また教えていくなかで、とても困ることです。私が、何かいいものはないかと探しているうちに、偶然見つけたのがこの本でした。

この本は、感染症のひとつひとつを列挙するような解説本というスタイルをとっていません(そのような形で書かれている章も、もちろんあります)。第1章「感染症の全体像」、第2章「抗菌薬を理解しよう」が示すように、むしろ、感染症というものはそもそもどういったものか、全般的な理解をうながすような「教科書」スタイルで書かれています。

「教科書」といった体裁では書かれているのですが、漫画「もやしもん」で人気を博した石川雅之氏とタッグを組むことで、一般人にとってもとてもわかりやすいものとなっています。ですので、決して医療従事者でない一般人にとってハードルは高くありません。そういった意味で、とてもおすすめの本となっています。

岩田教授と言う方が、どういう方か、実際のところ、私はしりません。しかし、こういった好著を一般人向けに送り出してくれたということから、感染症についての専門家としての岩田医師について、否定的な印象を持っていません。ですから告発についても、頭から否定するような気持ちにはならないのです。

告発という手段にでた岩田教授については、毀誉褒貶のとくに「毀・貶」が激しい噂が出てくる可能性があります。その噂に耳を傾けるまえに、まずは判断を保留して、この好著を手に取ってみませんかと、そう考えます。