患者に寄りそい、症状についてのなやみをくみ取るためにも、病歴をたずねる表現はとてもたいせつです。日本の医療現場では、問診票がひろく定着しているので、おおくの部分を問診票がひきうけています。外国語の問診票も厚生労働省が提供しているほか、各地のNGOや医療機関が用意しているので、充実してきています。
それでも、診察室のなかでは、鑑別診断のために医師から患者へさまざまな質問(問診: history taking)がなげかけられます。どのような点を意識して、医師が患者へ質問しているのかをしることは、診察のながれをつかみ、スムースな通訳をおこなううえで、とても大事なことです。
医学の分野では、おおくの頭字語(acronym)がつかわれますが、ここでは、OLD CAARTSにしたがって、現病歴をたずねる質問をいつかみていきましょう。OLD CAARTSは以下のことばの頭文字をとったものです。ただし、医学部や病院によっては、OLD CARTとしたり、べつのことばをつかったりするところもあります。
- Onset 発症
- Location 部位 (放散 radiationの有無)
- Duration 期間
- Characteristics 特質、特性
- Associated factors 随伴因子
- Aggravating factors/provoking factors 増悪因子
- Treatments 治療
- Severity 強度(スケールを使う)
かならずしも、この順番にそって問診がすすむわけではありません。疾患によっては、問診のやりかたもかわります。あくまで目安にしましょう。注意すべきなのは、医師がこういった点に着目して、患者がどのような疾患にくるしんでいるのか、鑑別診断をしていくということです。
日 | 英 |
---|---|
発症 | onset |
頭痛はいつからですか | When did the headache start? |
痛みは徐々に始まりましたか | Did the headache come on gradually? |
痛みは突然始まったのですか | Did the headache come on suddenly? |
部位 | location |
特にどのあたりが痛みますか | Were exactly does it hurt the most? |
同じところがずっと痛いですか | Does the pain stay in the same place? |
期間 | duration |
ずーっと、痛いのでしょうか | Do you feel the pain all the time? |
いつが1番痛みますか | When does it hurt the most? |
どのような時に痛みますか | When do you feel the pain? |
特質・特性 | characteristics |
どのような痛みですか | Could you describe the pain? |
随伴因子 | associated factors |
ろれつがまわらないなどの症状はありますか | Have you been experiencing slurring of speech or anything like that? |
手足がしびれますか | Do you feel tingling and numbness in any of your hands or legs? |
増悪因子 | aggravating factors/provoking factors |
なにをすると痛みが増しますか | What makes the pain worse? |
緩解因子 | relieving factors/palliating factors |
何をすると痛みが軽くなりますか | What makes the pain better? |
治療 | treatments |
薬を何か飲みましたか | Have you taken any medication? |
強度 | severity |
痛みの幅が0(または1)から10あって、痛みがないのを0(または1)、そして10が最悪の痛みとすると、今の痛みはどのくらいでしょうか | On a scale of 0/1 to 10, with 0/1 being no pain and 10 being the worst pain you can imagine, how would you rate your pain? |
【参考資料】