受動態の動詞の主語をかんがえてみよう
英文のなかで一番重要なのは動詞だという話をしました。その点について、受動態をみることで、もうすこし、かんがえてみましょう。
It has been found that these cells consistently bind more malaria-immune globulin than normal red cells.
「これらの細胞は一貫して赤血球よりもマラリア免疫グロブリンを結びつけることがわかった」
From Disorders of Hemoglobin: Genetics, Pathophysiology, and Clinical Management by Martin H. Steinberg、Bernard G. Forget、Douglas R. Higgs
文法上の主語は”it”なんですが、これは”found”「わかった/みつけた」という動詞の「主人」ではないんですよね。よく、これはthat節をうけた仮の主語とかいったりしますけど、仮にthat節が主語だとしても、それは”found”という行為の主人ではないんです。だからこそ、受動態という、受身形なんですけどね。
動詞である”found”を中心にかんがえると、そのご主人さまが不在というのが受動態なんです。じゃ、主語を中心にかんがえてみようとすると、すると、これも変な話で、この主語はなにをしているのかっていうと、なにも「して」なくて、「されて」いるんですよ。ご主人としては、ちょっとなさけない状態なんです。
ですから、動詞を中心にかんがえて、その動詞の主人である「主語」がかくされている状態だとかんがえる方が、ほかの文のかたち(ふつうの文や命令文とか)をかんがえても、自然なんですよ。やっぱり、動詞が一番パワーがあるってはなしなんです。
受動態はあいまいな表現
ちょっと、ここから受動態のはなしにひろげていきます。受動態というのは、主人である主語をかくすので、ちょっとキレがわるくなるんです。「だれが」「なにをしている」ってところの「だれが」がきえちゃうわけですから。やや直接性ってのがなくなっちゃうんです。
でも、これって便利なはなしで、「だれが」って部分をかくしたいときにつかわれたりするんですよ。発言にたいして、責任をとりたくないときとか。”by 〜”とつけて、〜の部分が主人だっていってもダメなんです。主語の部分にいない主語ってのは力がないんですよ。だから、よく英語圏では責任を明確にひきうけないまま謝罪めいたことをするときに受動態をつかうんです。
それと、これはじぶんの勝手なみかたなんですけど、受動態ってのは、読者に無意識のうちに「行為をしている」という意味での主語をさがすことを要求しちゃっているんじゃないでしょうか。なんといっても、主語と動詞が英語の文では重要なんですから。つまり、受動態の文をよむというのは、読者に負担がかかるんじゃないでしょうか。
はっきりしてるのは、受動態ってのは、かならず、be動詞をつけるわけですから、ながくなるんです。これも、印象がわるいんですね。直接性がうしなわれるわりに、ながいってのは二重苦なんです。興味があったら、passive voiceってgoogleで検索してみるといいでしょう。受動態の文を批判している文章がネット上にはあふれていますよ。
ちなみに、僕は大学時代に「ぜったいに受動態をつかうことはみとめません」っていう強硬な教授からFreshman Compositionという必修科目をとる羽目になって、ひどいいじめられ方をしました。トラウマです。