ディクテーションの応用でノート・テイキングの練習をしよう

ディクテーションはリスニングの練習に

ディクテーションというのは、ご存知の方がおおいでしょう。会話やスピーチをきいて、そこでつかわれていることばをできるだけ書きおこしていくというトレーニングです。英語のリスニングスキルをあげるのに効果的だといわれており、TOEICの試験準備などの英語学習ですすめられています。

ディクテーションになじみがないという方は、こちらのサイトや、またはこちらにくわしくかかれていますので参考にしましょう(どちらのサイトも当ブログとは直接関係ありません)。医療通訳なんて、まだまだ、まずは英語能力を鍛えたいという方は、こういったディクテーションのやり方で練習することは効果的でしょう。

ひとくふうしてノート・テイキングの練習を

このディクテーションですが、医療通訳にとって必要なメモ取り(ノート・テイキング)の練習にも応用できます。ただし、ディクテーションとちがって気をつけなければいけないのは、ひとつひとつのことばをとらえていくことが重要なディクテーションとちがって、ノートテイキングは、はなされている内容を理解して重要なポイントだけをおさえていくことがたいせつです。以下にノート・テイキングをするうえで意識すべき点をいくつかあげておきます。

  • ノート・テイキングとはいっても、ノートをとるというよりも、メモをする程度であることを理解する
  • はなされていることばをすべて書きおこそうとはしない
  • メモをとることを目的化せず、はなしの内容を理解することをまず心がける
  • はなしの内容を理解したうえで、重要なポイントだけについてメモをとる
  • メモにとることは必要最低限にするよう心がける
  • 記号や略語、略図をつかって、書きとる量をへらす
  • 数値や固有名詞などの重要ポイントはメモをする
  • はなしのながれがみえるように、ノート(メモ用紙)のななめ左上からななめ右下に向かって、ノートをとっていく

医療通訳として、ノート・テイキングで、とくにたいせつになるのは、数値(バイタルサインなど)と症状です。この2点についてはしっかりとおさえるようにしましょう。医療通訳のロールプレイの試験では、この2点を正確に通訳できるかをみるために、熱や心拍数などの数値と、複数の症状を患者がうったえる箇所を台本にふくませていることがすくなくありません。まちがえることなく、すべての数値や症状が通訳されているかが重要なポイントとなります。気をつけましょう。

ノート・テイキング用の教材

ノート・テイキングを自習するには、1分ほどのながさの録音されたスピーチや会話などを用意しましょう。ポッドキャストなどを利用するのがいいでしょう。Scientific American60-Second Scienceなどはそれほどながくはないので、利用しやすいのではないでしょう。そのほか、ふだんから好きできいているポッドキャストなどを利用するのもいいでしょう。Ted Talkをつかってもいいでしょう。

ノート・テイキングを自習するうえでたいせつなのは、Transcriptが用意されている録音をつかうことです。あとで読みかえして、ポイントをきちんととらえていたがどうか、確認ができるからです。

記号・略語の例

参考のため、個人的につかっている英語用の記号・略語をいくつかここにあげておきます。これをつかわなければいけないというものでは、もちろんありませんし、じぶんでつかいやすいものを適当につくっていくほうがむしろいいでしょう。

意味 記号・略語
いくつか、ちょっと(おおい)、プラスアルファ + 30yo+(30何歳)
以下 > 30℃>(30℃以下)
以上 < 30℃<(30℃以上)
増加 ↗︎
減少 ↘︎
同じ = A=B(AとBはおなじ)
〜歳 yo 20yo(20歳)
〜になる、〜なので A→B(AなのでB、またはAがBになる)
症状 sym
腹痛(abdominal pain) AbP
頭痛(headache) H/A

ジュリア先生の医療英語+αワークショップが3回連続で今月開催

私の友人のジュリア先生(Julija Knezevic/ジュリア・クネゼヴィッチ)が今月、3週連続(11月6日、11月13日、11月20日の各日曜日)でワークショップをひらきます。医療英語だけでなく、ジェンダーや、メンタルヘルス、福祉、教育など、幅広くコミュニティ通訳に必要ないトピックを取りあげていくそうです。

インタラクティブなかたちでワークショップをおこなうとのことで、参加者の質問も積極的にうけていくとのことです。とても、意欲的にとりくんでいるので、参加した方にとっては、有意義なものとなるとおもいます。

ご興味のある方は、国際医療通訳アカデミーまで詳細についてお問い合わせを。

主語+行為動詞+目的語の文型(第2パターン)のひろがり

第2パターンの基本をまずは再確認

以前書いた「主語+行為動詞+目的語の文型をもっと理解しよう(第2パターン)」では、次の2つの文をくらべて、どちらが第2パターン(主語+行為動詞+目的語)の文であるか、みてみようといいました。

(A) Mr. Price returned recently.
(B) Mr. Price returned the money.

これを文法的にかんがえると、”recently”は副詞で、”money”は名詞だから、”money”しか(直接)目的語になれないから、当然(B)が第2パターンだとなります。しかし、私は、意味(意味上のながれ)からかんがえて、どちらの単語が”return”という動詞のゴールになることができるだろうか判断して目的語をえらぶやる方をおはなししました。

もう一度確認しましょう。第2パターンは「主語+行為動詞+目的語」の文型です。そして、第2パターンにおいて、動詞の行為の結果のゴールとなる目的語を直接目的語 direct object とよびます。

どちらが直接目的語をふくんだ文ですか。
(A) The rain stopped the game.
(B) The rain stopped suddenly.

“game”と”suddenly”のどちらが”stop”という動詞の行為のゴールになっているでしょうか。もう少しつづけてみましょう。

(C) All good citizens vote on Election Day.
(D) All good citizens cast their vote on Election Day.

(E) Each student keeps a list of every misspelled word.
(F) The wheezing motor finally stopped completely.

第2パターンはワンパターンじゃない

ここから、第2パターンのかたちにひろがりがでてきますよ。つぎの文をみてみましょう。

(A) The pitcher threw Reggie a fast curve.
「ピッチャーはレジーにたいして速いカーブを投げた」

動詞threwの後には、2つの名詞があります。”Reggie”と”curve”です。この2つの名詞の役割にはおおきなちがいがあります。”and”がはいっていて、「レジーとカーブ」だったんでしたら(レジーとを投げるのはややおかしいですけれども)、役割にたいしたちがいはありません。この文では、「レジー」にたいして「カーブ」を投げたとなっていますので、この2つの名詞の役割にはおおきなちがいがあります。名詞のうちのひとつは直接目的語となっています。では、どちらの名詞が直接目的語でしょうか。どのように直接目的語をきめるかというと、自分自身に「ピッチャーは、何を投げたのか」ときいてみるのです。

行動動詞+直接目的語が分かちがたいカップル

名詞Reggieは、なにをしているのでしょうか(名詞”Reggie”の役割はなんなのでしょうか) それは、”pitcher”が誰にたいして”curve”を投げたかということを表しているのです。”Reggie”とおなじ役割をになっている名詞(または代名詞)を間接目的語といいます。重要なことは”threw”(行動動詞)+”curve”(直接目的語)が役割としてひとつのグループとなっていることです。英語は”threw”「投げる」という行動動詞だけだと中途半端ない感じがして”curve”(カーブ)という動詞のゴールとなる直接目的語がないとおさまりがつかないということです。

ここらへんは日本語とおおきくちがうところなので、感覚的にわかりづらいですね。「あのー」と声をかけられたのに、なにもそのあといわれないといった、中途半端な感じといったらちかいでしょうか。もっとも、行動動詞+直接目的語の分かちがたい関係については、、無理に日本語との対応関係をみつけようとせずに、英語ではそうなんだというふうに受けいれなくてはいけないとおもいます。他言語をまなぶときには、そうやってそのままを受けいれなくてはいけないものがときにでてきます。

症状をしっかり通訳することをまなぼう

医療通訳関連の試験がつづきましたが、その対策講座とかをやったりしながら、あらためてかんがえたのは、患者のコミュニケーションをサポートするために、通訳は患者がうったえている症状について、しっかりつたえる力をまずは身につけなくてはいけないなということです。今回は私がそうかんがえる理由にについてふれたいとおもいます。

医療知識をまなぶプロセスをふりかえってみよう

医療通訳をまなぶ方々のバックグラウンドはさまざまなので、一概にはいえませんが、おおくの方が医療知識・医療用語の学習に、まずはとりくむものとおもいます。そのときに、たとえば、体の構造については、それぞれの動機をとりあげ、「心臓」という組織について、「循環器系の器官」、「おおきく分けて、4つの部屋(右心房・右心室、左心房・左心室)にわかれる」といったかたちで「名前」からはじめて、じょじょにこまかくおぼえていったりするでしょう。

病気についても似たように、たとえば「肺炎」という病名をまずはノートに書き、つづいて「肺の末梢(奥)にある肺胞領域におこる炎症のこと」(保健同人社・家庭の医学iOS版)といった、「肺炎」とはなにかということのざっくりとした定義を書き留めてはいないでしょうか。そこから、「肺炎」の徴候・症状をそのノートに加えていくといったやり方でじぶんの学習ノートをつくっていってはいないでしょうか。

実は、私自身も、病気についての知識を身につけるときは、そのやり方をとっています。整理をして知識を積み上げていう点からいえば、このやり方に間違いはないでしょう。「病名」「おおまかな定義」「病因」「徴候・症状」「検査」「治療」といった項目にわけて、病気についての学習ノートをつくることをいままでおしえてきましたし、これからもおしえていくでしょう。それなのに、「症状をしっかり通訳することをまなぼう」と私があえていうには理由があります。

患者は来院するときに病名をしらない

患者がはじめて病院をおとずれるときには、まず病名はしりません。「頭が痛い」「気持ちがわるい」「頭がフラフラする」「耳鳴りがする」など、かかえているものはさまざまでしょうが、なにかの症状になやんで、患者は病院をおとずれます。もちろん、「おなかが痛いのは胃がんだからじゃないか」とか、「胸が痛いのは、心筋梗塞だからだ」とおもいこんで、病院にくる患者はいるでしょう。しかし、それは病名をしっているということとはことなります。

医師は、患者のうったえる症状をしっかりきくことから診察をはじめます。ときとして、患者自身が見のがしていた症状も、いろいろな角度から質問を投げかけることで、自覚させたりします。いずれにせよ、患者のうったえる症状をしっかりききだすことから、診察ははじまるのです。このことこそが、「症状をしっかり通訳することをまなぼう」と私があえてとりあげた理由です。

医療通訳は、もちろん医療についてのあらやる知識を身につけていく必要があります。その点からいえば、症状のことをこういったかたちでとりあげるのは、ややバランスを欠いているかもしれません。しかし、ここしばらく、患者によりそって、サポートをしていくことはどういうことだろうと、あらためてかんがえていく機会をえて、患者のうったえる症状をしっかり訳していく(患者の医師への症状についてのコミュニケーションをしっかりサポートしていく)ことの重要性を再認識しました。そして、そのことをこのブログの読者の方におつたえしたいとかんがえたのです。

主語+行為動詞+目的語の文型をもっと理解しよう(第2パターン)

主語+行為動詞+目的語の文型について、English 2200 with Writing Applications: A Programmed Course in Grammar and Usageに以下のような表示がありました。

「Subject(主語) — Action Verb(行為動詞)→ Direct Object(直接目的語)」

主語と行為動詞は「–」横棒でつないでいるだけですが、行為動詞と直接目的語は「→」でつなげてあります。このブログ・エントリーのタイトルでは「主語+行為動詞+目的語」と、それぞれを「+」でむすびつけていますが、「+」におおきな意味はなく、ただ、順番をあらわしているだけです。「–」も同様に主語につづいて行為同士がくるという順番をあらわしています。その一方、「→」が示されているのは関係の強さと方向をあらわしています。行為動詞と直接目的語のきってもきれない関係の強さがうまくあらわされています。

では、「主語+行為動詞+直接目的語」の文例をみていきましょう。

(例)The speaker showed a movie of his travels.

「講演者は自身の旅行の動画をみせた」

注意しなくてはいけないのは、行為(行動)は主語から始まり直接目的語でおわるということです。行為動詞にとって、直接目的語はその行為のゴールとなっています。では、直接目的語はどれでしょう。冠詞とか形容句をかんがえずに、単語をひとつだけえらんでみましょう。

べつの例をみてみましょう(訳文はあえてのせていません)。

(A) Mr. Price returned recently.
(B) Mr. Price returned the money.

ここで、気をつけなければならないのは、行為動詞につづいているからといって、すぐにその単語を直接目的語とかんがえてはいけないということです。直接目的語となるためには、その単語は動詞の行為を受けるか、動詞の行為の結果をしめすかの、どちらかの意味でゴールとならなければいけません。上の(A)と(B)のうちの1つだけが、直接目的語をふくんでいます。”recently”と”money”のどちらが行為動詞”return”の**行為のゴールとなったでしょうか。