オミックスってなんだろう? ― 先端医療をななめ読み

「オミックスってなんだろう?」というタイトルをみて、答えを求めてきた方たち、ごめんなさい。ここには、オミックスまたはオミクス(omics)っという科学そして先端医療の分野がなにかという答えは書いていません。実際のところ、「ななめ読み」しようにも、表面をなぞるだけでも四苦八苦しているのが現状なんです。

この投稿のなかには、ゲノム(genome)やプロテオーム(proteome)など、さまざまなオーム(ome)をはじめとする「生体中に存在する分子全体を網羅的に研究する学問群」と言われるオミックスについて、最近知った私がいろいろと調べるなかで得た材料・マテリアルがちりばめられています。「オミックスってなんだろう?」という疑問への答えはありませんが、読んだ方が自分で調べていくことができる手がかりは豊富にあると思います。

オミックスの研究が進んでいる海外の資料を読むのに役に立つであろう関連用語をまとめた単語帳もあります。また、参考とした記事や、ウェブサイトも紹介しています。

語源からオミックスへの理解をこころみる

大阪大学に松尾雄志先生というとてもユニークな先生がいます。この先生が12年前に書いた「-omeや-(m)icsの意味―語源が分かれば見えてくる?」という「生物物理化学」誌に発表した文章がオミックスを理解する最初の手がかりになりそうです。

くわしくは、松尾先生の文章をぜひ読んでほしいのですが、「ななめ読み」的に先にすすむと、”-ome”とは”whole part of”という意味だそうです。ですので、”genome”(ゲノム)とは”whole part of gene”ということになります。では、”whole part of gene”というのはどういうことかというと、はっきりとは前後から考えると、「geneの網羅事項(もうらじこう)」いうことのようです。同様に、”-ome”によってあらわされる”metabolome”や”proteome”などは、それぞれ”-ome”の前にくるものの「網羅事項」ということになります。

「網羅事項」といわれても、ちょっとピンときませんよね。メタボローム(metabolome)ということばを理解しようとすることがいい手がかりになるかもしれません。

“metabolome”は何の網羅事項かというと”metabolite”、代謝物質なんです。体内の代謝活動によって生みだされる代謝物質にはいろいろなものがあって、比較的なじみがあるものとしてアミノ酸(amino acid)や糖(sugar)、有機酸(organic acid)、脂肪酸(fatty acid)、核酸(nucleic acid)などがあります。こういった代謝物質を網羅したものがメタボロームというですね。

-omeにitsをあわせると

つづいて、”-ics”です。これは”study of”(研究・学問)という意味だと松尾先生は説明しています。”economics”(経済学)などがそうですね。ここで、ちょっと松尾先生は脱線してます。”genomics”(ゲノミクスまたはジェノミクス)は、”study of gene”だというんですよね。しかし”genetics”がありますので、”genomics”はやはり”study of genome”になるはずです。

いずれにせよ、こんな感じに、いろいろな”-ome”があって、そのひとつひとつに研究があり、それぞれの研究の名称が”-omics”でおわる英単語になっているんです。そして、語の要素でなくて、単語となった”omics”(オミックスまたはオミクス)というのは、そういった”-omics”という語の要素を含む名称のいろいろな学問全体をつつみこむ学問分野をあらわす言葉としてつかわれているんですね。なんとなくわかってきたでしょうか(よくわかっていない私が聞くのも変な話ですが)。

情報学がささえるオミックス

それぞれの”-omics”は、あつかっている対象が分子レベルであって、それを網羅的に取りあげているというのが特徴といえるでしょう。体内にある分子レベルの研究対象を網羅的に取りあげているのですから、情報量はものすごいことになります。それを支えるのが、健康情報学・医療情報学(health informatics、medical informaticsなど)といわゆる情報学の分野です。

AIによる診断が話題となっている昨今ですが、大量の分子レベルの情報を扱うオミックスの分野でも、情報学・ITが医学・医療の進歩を支えています。そのことがよくわかるのが、”individualized medicine”の世界です。

「個別化医療」などと訳されている”individualized medicine”は、オミックスの一つの成果といわれています。遺伝子レベルで、患者の体を分析し、今までの医療では診断をくだすことができなかった疾患の診断・治療につなげる医療分野です。

“individualized medicine”の最先端をいく医療機関の一つが、米国メイヨクリニックの”Center For Individualized Medicine“です。この医療機関がおこなっていることや、発表していることには興味ぶかいことがおおいのですが、感心するのが医療チームの構成です。

“primary physician/physician specialists”、”genetic counselors”、”laboratory professionals”、”bioinformaticians”、”bioethicist”と5つの分野の専門家(ただし、医師については2分野にさらにわかれる)で、この中に、しっかりと情報学の専門家がはいっています(「倫理」の専門家がはいっているのも、中国の研究者による人間への遺伝子操作の報道があっただけに遺伝子治療のむつかしさをしめしているといえるでしょう)。

「サイエンティスト」誌のオミックス記事

オミックスの現状をえがいた記事が今年前半に「サイエンティスト」誌に掲載されました。オミックス技術のひとつ、全エクソーム解析(WES、whole exome sequencing)を取りあげたExome Sequencing Helps Crack Rare Disease Diagnosisです。

記事では、オーストラリアと米国の2件の未診断疾患について全エクソーム解析が使われた事例を取りあげ、オミックスの一実践分野である全エクソーム解析の現状を伝えています。さらに全エクソーム解析や、全ゲノム解析(WGS、whole genome sequencing)、RNA解析(whole-transcriptome sequencing, RNAseq)といった分子レベルのオミックス解析を確定診断にいかすための、全米レベルでのデータベース構築の取り組みにも触れています。

未診断疾患については、日本国内でも国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が中心となり、未診断疾患イニシアチブ(Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases、IRUD)として2015年以来、国家レベルで取り組んでいるところです。

「サイエンティスト」誌の記事は、よくまとまっていますので、リンク先で本文を読むことをお勧めします。ここでは、記事中の2つの症例についてざっくりとした内容をあげておきます。

Scarlett Whitmoreちゃん(豪州パース、2歳女児)のケース

  • 原因不明の発達障害、視覚・聴覚障害、筋力がない
  • 豪州では、ゲノム解析を患者が依頼することはほぼ不可能
  • 担当医(遺伝学)は解析に反対
  • 家族の唾液をMyGene2に送り、全員の全エクソーム解析を行う
  • 解析コストは、1サンプルあたり700ドル
  • GNB1(G protein subunit beta 1)の変異を発見
  • 親からの遺伝ではないことがわかる
  • 同じ疾患をもつ、世界中の30人の患者と研究に参加している

Nic Volkerくん(男児、ウィスコンシン医科大学受診)のケース

  • 重度の炎症性腸疾患
  • 4歳までに人工肛門をつけることになる
  • 原因がわからず、対処療法だけを施す
  • 2009年に全エクソーム解析を実施
  • 解析コスト7万5000ドルは基金を募ってまかなう
  • 1万6000の遺伝子変異(ヴァリアント)が解析によって判明
  • 遺伝子変異を4か月かけて精査
  • XIAP(X連鎖アポトーシス抑制タンパク質)の変異が原因と確定
  • X連鎖リンパ増殖性疾患(X-linked lymphoproliferative disease;XLP)
  • 症状に基づき、文献を調べたところ、2000ほどの遺伝変異が該当することがわかる
  • ただし、XIAPはこの2000の中に入っていなかった。
  • DNAシークエンスが初めて患者を救ったケースとして全米で話題になる

全エクソーム解析のコストは大幅ダウン、魔法の杖ではない

注目すべきは、Nic VolkerくんとScarlett Whitmoreちゃんの間の10年弱で、解析コストが大幅に下がっているということです。Scarlettちゃんの母親も、いくらこのコストでなければできなかったと話しています。

また、注意しなくてはいけないのは、全エクソーム解析による診断は、未診断疾患の25~50%にとどまっているということで、何でもできる魔法の杖ではないということです。米デューク大学の研究班が2012年に発表した研究では、全エクソーム解析がどれだけの診断率を達成できるか調べるため、12人の未診断疾患患者の全エクソーム解析を実施しましたが、ここでも50%にあたる6人で原因変異を発見することとなったそうです。メイヨクリニックのCenter for Individualized Medicineでは「未診断疾患を持つ患者のうち約1/3に確定診断をくだすことができた」としています。

データベース・ネットワークの充実

「サイエンティスト」誌の記事では、臨床診断へのエクソーム解析の導入について重要な役割を担っているのは、近年のゲノムデータベースの増強としています。そのデータベースも、特定のヴァリアントについての動物モデルから得たデータを統合するアプローチをとるMARRVELなど、新しい取り組みも行われています。

Scarlett Whitmoreちゃんの診断のきっかけになったMyGene2など、ネットワーク、サービスの充実も進んでいます。下には、データベースのほか、ネットワーク、サービスなど、オミックス関連のものを一部あげておきます。

  • 1000 Genomes Project(2008~2015年実施): The European Bioinformatics Institute(EMBL-EBI)欧州バイオインフォマティクス研究所にある、The International Genome Sample Resource(IGSR、国際ゲノム・サンプル・リソース)が今はデータを管理・保管
  • Exome Aggregation Consortium (ExAC): 2014年ブロード研究所の研究者におってローンチ。ブロード研究所が進めた研究を中心に、100の研究プロジェクトから収集した6万706のエクソーム解析を保有。Genome Aggregation Database (gnomAD、ノマド)によって、引き継がれた。ノマドは、記事の時点で12万3136のエクソーム配列、1万5496の全ゲノム解析をデータベースに保有
  • 米国National Institutes of Health(NIH、国立衛生研究所)のClinVar
  • 英国Wellcome Sanger Institute(ウェルカム・サンガー研究所
  • カナダGenomics4RD(開発段階、名称変更の可能性あり)
  • Model Organism Aggregated Resources for Rare Variant Exploration(MARRVEL): 各データベースから得た変異(ヴァリアント)についての情報を特定のヴァリアントについての動物モデルから得たデータを統合する新しいデータベース
  • MyGene2: ワシントン州シアトルのthe University of Washington Center for Mendelian Genomics (UW-CMG)によるポータルサイト、全エクソーム解析、全ゲノム解析のデータを使った不明疾患の情報シェアを行っている。1件700ドルでゲノム解析を行う(記事の時点)。1,200のプロフィールを所有。
  • MatchMaker Exchange: 変異(ヴァリアント)・表現型(フェノタイプ)の複数のデータベースやネットワークをつなげ、研究者・臨床家がある変異をもつ患者たちを見つけるのを支援する。
    GeneMatcher: CMGの研究者が遺伝子情報共有のために設立したデータベース
    My Drug Genome: 米Vanderbilt University ヴァンダービルト大学のPREDICT(Pharmacogenomic Resource for Enhanced Decisions in Care & Treatment)による遺伝学と薬効との関係についての情報リソース
上記の情報および下記の用語集は個人的にまとめたもので、誤りが含まれている可能性があります。お気づきの点などありましたら、よろしければメールでご連絡ください。

用語集

英語 日本語 備考
actionable 治療選択に有用な
animal model 動物モデル ヒトの疾患と同じもしくは似た疾患をもつ動物
archaea, (sing.) archaeon 古細胞
Children’s Hospital of Wisconsin, CHW ウィスコンシンこども病院
clinomics クリノミクス オミックスのデータと関連臨床データとの研究
colostomy 人工肛門形成(術)
combination therapy 併用療法
complex trait 複合形質
cord blood transplant 臍帯血移植
diagnostic odyssey 診断オデュッセイア、診断オデッセイ、ドクターショッピング ただし、ドクターショッピングが1)納得のいく診断が出ずに診断を求めて医療機関・医師を転々とする2)診断でているけれども治療法で転々とする―意味があり、ここでは1)の意味でだけ使われる
DNA methylation DNAメチル化
drug absorption 薬物吸収
drug distribution 薬物分布
drug excretion 薬物排泄
drug interaction 薬物相互作用
drug metabolism 薬物代謝
drug resistance 薬剤耐性
epigenome エピゲノム トランスクリプトームを介したゲノムの表現; DNAの塩基配列を変えることなく、遺伝子のはたらきを決めるしくみをエピジェネティクスとよび、その情報の集まりがエピゲノム。
Epstein-Barr virus EBウイルス、エプスタイン・バール・ウイルス
eukaryote 真核生物 原核生物をのぞくすべての生物
exosome complex, exosome, PM/Scl complex エキソソーム複合体
genetic testing 遺伝検査 一般に生殖細胞変異を調べる検査
Genome Aggregation Database, gnomAD ノマド ゲノムデータベース http://gnomad.broadinstitute.org/
genotype 遺伝子型
genotyping ジェノタイピング、遺伝子型判定、遺伝子型決定 全ゲノムの配列を解読する代わりに個人間で異なることがあらかじめわかっているゲノム上の場所についてのみ検索する技術。個人間で配列が異なる箇所を検出する短いDNAを数百万種類合成して1枚のチップに搭載し、1%ほどの場所だけについて確認する。
germ cell 生殖細胞
germline mutation 生殖細胞変異 個人が生まれながらに有し,生涯変化しないはずの細胞に生じた遺伝子の変化
hypochondriac (形・名)ヒポコンデリー[心気症]の(人); 病気だと思ってくよくよする(人)
hypotonia 筋緊張低下症
immune-based therapy 免疫療法
interactomics インタラクトミクス 相互作用(interaction)を網羅的に調べる
Langerhans Cell Histiocytosis, LCH ランゲルハンス細胞組織球症 https://plaza.umin.ac.jp/sawamura/braintumors/langerhans/
lipidomics リピドミクス 脂質(lipid)を網羅的に調べる
Medical College of Wisconsin, MCW ウィスコンシン医科大学
metabolome メタボローム 代謝物質(metabolite)の総体
metabolomics メタボロミクス、メタボローム解析 代謝物質(metabolite)の総体としてのメタボロームの分析
metagenomics メタゲノミクス 分離・培養過程を経ずに、最新のゲノム技術を応用して、自然環境下の微生物集団を研究する学問
metastatic cancer (遠隔)転移がん
molecular dynamics simulation 分子動態シミュレーション
National Cancer Institute, NCI 米国立がん研究所
National Institutes of Health, NIH 米国立衛生研究所
NCI Center for Cancer Research, NCI-CCR NCIがん研究センター
NIH Clinical Center, NIH CC 米国立衛生研究所臨床センター
omics オミックス、オミクス 生体中に存在する分子全体を網羅的に研究する学問群
pathogenicity (名詞)病原性 cf. pathogenic (形容詞)病原性
PDC, patient-derived cell 患者由来細胞
PDX, patient-derived xenograft 患者由来異種移植片
pharmacodynamics, PD 薬力学 薬物が生体に対して何をなすかを調べる学問
pharmacogenomics ゲノム薬理学 解読されたヒトのゲノム情報に基づいた薬理学
pharmacokinetics, PK 薬物動態学 生体が薬物に対して何をなすかを調べる学問
phenomics フェノミクス 表現型(phenotype)を網羅的に調べる
phenotype 表現型
phenotyping 表現パターン検査、表現型検査
PK/PD modeling PK/PD理論 薬物の作用を薬物動態学 (pharmacokinetics, PK) と薬力学 (pharmacodynamics, PD) の組み合わせにより解析する
polymorphism 遺伝子多型
Precision Medicine プレシジョンメディスン、個別化医療、高精度治療 患者に最適の治療を決定するためのDNA配列とその他のオミックス解析の応用
proband 発端者 遺伝性疾患または特定の性状を有していることから、家系が調査されるきっかけとなった個人
progenitor 前駆体、前駆細胞
prokaryote 原核生物 古細胞と細菌
proteogenomics プロテオゲノミクス 米国国立がん研究所で、がんゲノムとプロテオームの研究を統合(2016年)
proteome プロテオーム ゲノムによって生体内、組織内、細胞内に発現している、または、発現可能であるたんぱく質総体
proteomics プロテオミクス 生物が持つ全てのタンパク質・プロテオーム proteome の網羅的研究
refractory cancer 難治性がん
relapsed cancer 再発がん
repository (情報を保管する)データベース
somatic mutation 体細胞変異 身体の一部の細胞のみに生じた遺伝子の変化
splice variant スプライス・ヴァリアント
targeted therapy 分子標的治療薬治療
transcriptome トランスクリプトーム メッセンジャーRNA、mRNAの総体
transcriptomics トランスクリプトミクス トランスクリプトーム(transcriptome)についての研究分野
undiagnosed case 未診断疾患
variant ヴァリアント、変異体、変種、異株
viral screen ウイルス検査
visual impairment 視覚障害
VUS, variant of unknown significance 意義不明の変異
whole genome sequencing, WGS 全ゲノム解析
whole-exome sequencing, WES 全エクソーム解析 エクソームとよばれるヒトゲノムのタンパク質コーティング領域は、ゲノムに占める割合が2%未満だが、既知の疾患関連ヴァリアントの約85%が含まれているため、全エクソームシーケンスは全ゲノムシーケンスの代替となるコスト効率の高い方法となっている
whole-transcriptome sequencing, RNAseq RNA解析、全トランスクリプトーム解析、遺伝子発現解析
X-linked inhibitor of apoptosis protein, XIAP X連鎖アポトーシス抑制タンパク質
X-linked lymphoproliferative disease, XLP X連鎖リンパ増殖性疾患 Epstein-Barr ウイルス感染に対する免疫応答の欠陥を有する先天性免疫不全症

泌尿器系 — テキスト『医療通訳』の単語集を自分のものに(第12回)

テキスト『医療通訳』の『人体器官図』の10ページ目で取りあげられている泌尿器系の各器官・部位について今回は単語集を「自分のもの」にしていきます。まなんでいくうえでの優先順位は今までとおなじです。図のなかで太字表記されている部位を中心にまずはおぼえていくようにしましょう。

人体図11ページの下図は、ややくわしい腎臓の内側の図で、尿をつくるための血液ろ過をになっている部位をあらわしています。ここまでのくわしい知識が医療通訳のスタート地点に立つために必要かとかんがえると、首をかしげてしまうというのが正直な気持ちです。ただし、医療通訳技能試験では、ほぼこの図そのままを問う出題が以前ありました。受験をめざす方は油断できませんね。

当ブログでは何度もふれてきましたが「ホメオスタシス」という考えが人間の生命活動、そして病気ということを理解するうえでとても大切です。「泌尿器系の基本の基本」でもおつたえしましたが、泌尿器系は尿の生成というかたちで、ホメオスタシスを下支えしています。泌尿器系をまなぶと同時に、ホメオスタシスについてもしっかりおさえましょう。

オリジナルの単語集を確認

まずは、テキスト『医療通訳』の『単語集』にのっているままに日本語・英語を並べてみました。

日本語 英語
下大静脈 inferior vena cava
副腎 adrenal gland
腎臓(左) kidney (left)
腎臓(右) kidney (right)
腎動脈 renal artery
腎静脈 renal vein
腹(部)大動脈 abdominal aorta
尿管 ureter
膀胱 urinary bladder
尿道 urethra
腎盂 renal pelvis
皮質 cortex
髄質 medulla
糸球体 glomerulus
遠位尿細管 distal convoluted tubule
近位尿細管 proximal tubule
集合管 collecting duct
ネフロン nephron
弓状動脈・静脈 arcuate artery・arcuate vein
ボーマン嚢 Bowman’s capsule
腎小体 renal corpuscle

日本語・一般むけ・専門用語

上のオリジナルをもとに、自分自身の用語集づくりをすすめていきますが、腎臓の右左を別エントリーにせず、「腎臓」という1エントリーだけにすることにしました。「皮質」「髄質」は他の部位との混乱をさけるため、「腎皮質」「腎髄質」としました。泌尿器についての用語集として考えれば、こうした方が適切だと判断したからです。ただし、腎臓をあつかっていることがあきらかな場合には、「皮質」「髄質」とわざわざ「腎」をつけたりしないものです。ことばは文脈によってかわるのだということを意識しておきましょう。

なお、からだの奥にある細かい器官・部位については、医学用語とは別の一般的なことばが発達していることはほぼありません。その点は、泌尿器系もおなじです。

※「自分のもの」にするためのすすめ方については第1回を参照。

日本語 English(lay term) English (medicine)
下大静脈[かだいじょうみゃく] inferior vena cava
副腎[ふくじん] adrenal gland, adrenal, suprarenal gland
腎臓[じんぞう] kidney
腎動脈[じんどうみゃく] renal artery
腎静脈[じんじょうみゃく] renal vein
腹大動脈[ふくだいどうみゃく]、腹部大動脈[ふくぶだいどうみゃく] abdominal aorta
尿管[にょうかん] ureter
膀胱[ぼうこう] bladder, urinary bladder
尿道[にょうどう] urethra
腎盂[じんう] renal pelvis
腎皮質[じんひしつ] renal cortex
腎髄質[じんずいしつ] renal medulla
糸球体[しきゅうたい] glomerulus
遠位尿細管[えんいにょうさいかん] distal convoluted tubule, DCT
近位尿細管[きんいにょうさいかん] proximal tubule
集合管[しゅうごうかん] collecting duct, collecting tubule
ネフロン[ねふろん] nephron
弓状動脈[きゅうじょうどうみゃく] arcuate artery (of the kidney)
弓状静脈[きゅうじょうじょうみゃく] arcuate vein
ボーマン嚢[ぼーまんのう] Bowman’s capsule
腎小体[じんしょうたい] renal corpuscle

例文・語の構成要素・おぼえがき

Example 語の構成要素 Note
The inferior vena cava drains blood from areas inferior to the diaphragm. ven(i/o)-: ラ「脈」「静脈」「葉脈」「翅脈」「鉱脈」.
The adrenal glands secrete epinephrine and norepinephrine to be released into the blood stream as hormones. ad-: ラ「方向」「変化」「付加」「完成」「開始」「近似」「単なる強意」. adren(o)-: ラ「副腎」. ren(i/o)-: ラ「腎(臓)」.
The kidneys participate in several complex endocrine pathways and produce certain hormones. nephr(o)-: ギ「腎(臓)」. ren(i/o)-: ラ「腎(臓)」. 左右一対であることからkidneysと複数形であらわされることも多い. ラテン語由来のren(i/o)-とギリシャ語由来のnephr(o)_の2つの語素は、どちらも広く使われているのが特徴. endocrine pathway: 内分泌経路.
The right renal artery is longer than the left since the aorta lies to the left of the vertebral column and the vessel must travel a greater distance to reach its target. ren(i/o)-: ラ「腎(臓)」.
Blood supply from the kidneys flows into each renal vein, normally the largest veins entering the inferior vena cava. ren(i/o)-: ラ「腎(臓)」.
Superior to the diaphragm, the aorta is called the thoracic aorta, and inferior to the diaphragm, it is called the abdominal aorta. abdomin(o)-: ラ「腹」「腹部」. 血管の名称としては腹大動脈がひろく採用されている一方、疾患名としては腹部大動脈の使用がしばしばみられる.
The renal pelvis narrows to become the ureter of each kidney. As it passes through the ureter, urine does not passively drain into the bladder but rather is propelled by waves of peristalsis. ur(i/o)-, urin(o)-, -uria: ラ「尿」「尿道」「排尿」「尿素」. ureter(o)-: ギ「尿管(ureter)」. peristalsis: 蠕動運動.
The bladder lies anterior to the uterus in females, posterior to the pubic bone and anterior to the rectum. ur(i/o)-, urin(o)-, -uria: ラ「尿」「尿道」「排尿」「尿素」. anterior:(体の)前側に. posterior:(体の)後ろ側に. pubic bone: 恥骨. rectum: 直腸.
The urethra is the only urologic organ that shows any significant anatomic difference between males and females; all other urine transport structures are identical. ur(i/o)-, urin(o)-, -uria: ラ「尿」「尿道」「排尿」「尿素」. urethr(o)-: ギ「尿道(urethra)」.
As it is formed, urine drains into the calyces of the kidney, which merge to form the funnel-shaped renal pelvis in the hilum of each kidney. ren(i/o)-: ラ「腎(臓)」. pelv(i/o)-: ラ「骨盤」「骨盤と…の」. calyces of the kidney: calyxの複数形; renal calyxとは腎杯[じんぱい].
A frontal section through the kidney reveals an outer region called the renal cortex and an inner region called the medulla. ren(i/o)-: ラ「腎(臓)」. cortic(o)-, cort-, cortex: ラ「皮質」. 皮質: 実質臓器で表層と深層の組織構造が異なる場合、表層部分を皮質とよぶ; 腎臓だけではないことに注意. frontal section: 前頭断、前額断.
The loops of cortical nephrons do not extend into the renal medulla very far, if at all. Juxtamedullary nephrons have loops that extend variable distances, some very deep into the medulla. ren(i/o)-: ラ「腎(臓)」. medull(i/o)-: ラ「髄」「髄質」. 実質臓器で表層と深層の組織構造が異なる場合、深層部分を髄質とよぶ; 腎臓だけではないことに注意. juxtamedullary: (形容詞)傍髄質の.
The glomerulus is the first part of the nephron, which then continues as a highly specialized tubular structure responsible for creating the final urine composition. glomerul(o)-: ラ「(腎臓の)糸球体」.
Potassium is excreted, both actively and passively, through the renal tubules, especially the distal convoluted tubule and collecting ducts. ula, -ule: ラ「小さい」. 尿細管: renal tubule; 近位尿細管と遠位尿細管をひと続きとしたもの. potassium: カリウム. excrete: (動詞)排出する・される.
A portal system is formed when the blood flows through a second capillary bed surrounding the proximal and distal convoluted tubules and the loop of Henle. ula, -ule: ラ「小さい」. 糸球体につづく前半部分の近位曲尿細管[きんいきょくにょうさいかん](proximal convoluted tubule, PCT)と後半部分の近位直尿細管[きんいちょくにょうさいかん](proximal straight tubule, PST)に分かれる. capillary bed: 毛細血管床. loop of Henle: Henle’s loopともいう; ヘンレ係蹄[けいてい].
Depending on the body’s fluid status at any given time, the collecting ducts can recover none or almost all of the water reaching them. ula, -ule: ラ「小さい」. 尿細管に近い側のcollecting tubuleからcollecting ductへとかわっていく.
The afferent arterioles service about 1.3 million nephrons in each kidney. nephr(o)-: ギ「腎(臓)」. 腎小体1個と尿細管1本をひとまとまりとした腎臓内の組織的単位. afferent arteriole: 輸入細動脈; afferent glomerular arteriole 輸入糸球体細動脈ともいう.
The interlobar arteries, in turn, branch into arcuate arteries, cortical radiate arteries, and then into afferent arterioles. テキスト『医療通訳』の人体図では赤い血管. 弓状動脈として代表的だが、足(arcuate artery of the foot)や子宮(arcuate vessels of the uterus)にもあるので注意する. interlobar artery: 葉間動脈. cortical radiate artery: 小葉間動脈.
テキスト『医療通訳』の人体図では青い血管.
The glomerulus and Bowman’s capsule together form the renal corpuscle.
After passing through the renal corpuscle, the capillaries form a second arteriole, the efferent arteriole. ren(i/o)-: ラ「腎(臓)」. 糸球体と糸球体を包むボーマン嚢からできている. efferent arteriole: 輸出細動脈; efferent glomerular arteriole 輸出糸球体細動脈ともいう.

※下表は画像データとしてダウンロード可能です。

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参考資料

呼吸器系 — テキスト『医療通訳』の単語集を自分のものに(第11回)

テキスト『医療通訳』の『人体器官図』では、7ページ目で呼吸器系の各器官・部位を取りあげています。この図で太字で表記されている部位を中心にまずはおぼえていくようにしましょう。

呼吸器系の基本の基本」で取りあげたとおり、一つ一つの器官や部位をバラバラにおぼえていくのではなく、気道という空気の流れにそって、各部位の位置関係などとともにまとめていくと、記憶にのこりやすいでしょう。

オリジナルの単語集を確認

まずは、テキスト『医療通訳』の『単語集』にのっているままに日本語・英語を並べてみました。

日本語 英語
上気道 upper respiratory tract
下気道 lower respiratory tract
鼻腔 nasal cavity
throat
咽頭 pharynx
喉頭 larynx
唾液腺 salivary gland
喉頭蓋 epiglottis
声帯 vocal cord
気管 trachea / wind pipe
上葉 superior lobe
中葉 middle lobe
下葉 inferior lobe
右肺 right lung
左肺 left lung
食道 esophagus / food pipe
気管支 bronchus
横隔膜 diaphragm
肺胞 alveolus
肺胞腔 alveolar space
肺胞壁 alveolar wall
副鼻腔 paranasal sinus
胸膜腔 pleural cavity
胸膜 pleura

日本語・一般むけ・専門用語

上のオリジナルをもとに、自分自身の用語集づくりをすすめていきます。

※「自分のもの」にするためのすすめ方については第1回を参照。

日本語 English(lay term) English (medicine)
上気道[じょうきどう] upper respiratory tract, upper airway
下気道[かきどう] lower respiratory tract, lower airway
鼻腔[びくう] nasal cavity
喉[のど] throat
咽頭[いんとう] throat pharynx
喉頭[こうとう] voice box, throat larynx
唾液腺[だえきせん] salivary gland
喉頭蓋[こうとうがい] epiglottis
声帯[せいたい] vocal cord, vocal fold
気管[きかん] throat, windpipe, wind-pipe trachea
上葉[じょうよう] upper lobe, superior lobe
中葉[ちゅうよう] middle lobe
下葉[かよう] lower lobe, inferior lobe
右肺[うはい] right lung
左肺[さはい] left lung
食道[しょくどう] food pipe, foodpipe, gullet, throat esophagus
気管支[きかんし] bronchus
横隔膜[おうかくまく] diaphragm
肺胞[はいほう] alveolus
肺胞腔[はいほうくう] alveolar space
肺胞壁[はいほうへき] alveolar wall
副鼻腔[ふくびくう] paranasal sinus
胸膜腔[きょうまくくう] pleural cavity
胸膜[きょうまく] pleura

例文・語の構成要素・おぼえがき

Example 語の構成要素 Note
The upper respiratory tract includes the nostrils, nasal cavity, paranasal sinuses, pharynx and larynx. nostril: 外鼻孔[がいびこう]、または単に鼻孔; いわゆる鼻の穴; naris(複数形、nares)ともいう. 上気道には、口腔をふくんだり、副鼻腔をはずしたりなど、分類にブレがある.
The lower respiratory tract consists of the lower portion of the larynx below the vocal cord, trachea, bronchi (sing. bronchus), and the lungs. 下気道には、気管支の先の肺をふくむ分類とふくまない分類がある.
When discussing the nose, it is helpful to divide it into two major sections: the external nose, and the nasal cavity or internal nose. nas(i/o)-: ラ「鼻」.
In addition, many individuals with sleep apnea experience a dry throat in the morning after waking from sleep, which may be due to excessive snoring. のど(throat)は、頸部の前部で、発声や嚥下にかかわる器官についての日常語としてつかわれる. sleep apnea: 睡眠時無呼吸(sleep apnea syndrome: 睡眠時無呼吸症候群).
The vagus nerve directly stimulates the contraction of skeletal muscles in the pharynx and larynx to contribute to the swallowing and speech functions. pharyng(o)-: ギ「咽頭」「のど」. のど(throat)は、咽頭・喉頭・食道をふくむだが、文脈によってつかいわけあれる: 「のどがあかくなっている」(咽頭)、「もちがのどにつまる」(食道)など.
The structure of the larynx is formed by several pieces of cartilage. laryng(o)-: ギ「喉頭(larynx=voice box)」. cartilage: 軟骨、軟骨組織.
Within the mouth, the teeth and tongue begin mechanical digestion, whereas the salivary glands begin chemical digestion. mechanical digestion and chemical digestion: 機械的消化と化学的消化.
During deglutition (swallowing), the soft palate rises to close off the nasopharynx, the larynx elevates, and the epiglottis folds over the glottis. ep(i)-: ギ「上」「追加」. gloss(o)-, -glossa, -glossia, glott(o)-, glot-: ギ「舌」. glottis: 声門[せいもん].
A true vocal cord is one of the white, membranous folds attached by muscle to the thyroid and arytenoid cartilages of the larynx on their outer edges. true vocal cord: 真声帯. membranous fold: 膜状のひだ. arytenoid cartilage: 披裂軟骨[ひれつなんこつ]. vocal cords, vocal foldsといった形で通例複数形で使用される.
The trachea (windpipe) extends from the larynx toward the lungs. trache(o)-: ギ「気管」「導管」. wind pipeとの表記もあるが用例はすくない.
The left lung consists of two lobes: the superior and inferior lobes. lob(o)-: ギ→ラ→仏「葉」.
The right lung consists of three lobes: the superior, middle, and inferior lobes.
Fissures separate the lobes of the lungs from each other. Both lungs have the superior and inferior lungs, with only the right lung also having the middle lobe. fissure: 裂溝.
The right lung is shorter and wider than the left lung.
The left lung occupies a smaller volume than the right.
Anteriorly, the laryngopharynx opens into the larynx, whereas posteriorly, it enters the esophagus. esophag(o)-: ギ「食道(gullet)」. laryngopharynx: 咽喉頭.
The trachea branches into the right and left primary bronchi at the carina. bronch(o)-, bronchi(o)-: ギ「気管支」. bronchi: bronchusの複数形. primary bronchus: 主気管支[しゅきかんし]; main bronchusとも. carina: 気管竜骨[きかんりゅうこつ].
The diaphragm is the flat, dome-shaped muscle located at the base of the lungs and thoracic cavity. dia-: ギ「を通じて」「を横切って」「通して」. phren(i/o)-, phrenic(o)-: ギ「精神」「心」「横隔膜」「横隔神経」. thoracic cavity: 胸腔[きょうくう].
In external respiration, oxygen diffuses across the respiratory membrane from the alveolus to the capillary, whereas carbon dioxide diffuses out of the capillary into the alveolus. external respiration: 外呼吸、肺呼吸.
The alveolar space is the air space within alveoli that participates in gas exchange as against the alveolar dead space. alveolar dead space: 肺胞死腔[はいほうしくう].
The alveolar wall consists of three major cell types: type I alveolar cells, type II alveolar cells, and alveolar macrophages. macrophage: マクロファージ.
The paranasal sinuses are hollow, air-filled spaces located within certain bones of the skull.
Surface tension within the pleural cavity pulls the lungs outward. pleur(o)-: ギ→ラ「体側」「胸膜(pleura)」「肋骨」. surface tension: 表面張力[ひょうめんちょうりょく].
Intrapleural pressure is the pressure of the air within the pleural cavity, between the visceral and parietal pleurae. intrapleural pressure: 胸膜内圧[きょうまくないあつ]. visceral pleura: 臓側胸膜[ぞうそくきょうまく]. parietal pleura:壁側胸膜[へきそくきょうまく]. pleurae: pleuraの複数形.

※下表は画像データとしてダウンロード可能です。

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参考資料

医療系ニュースサイトで、最新ニュースを追いかけよう

医療は日進月歩、医療従事者は自分の知識を常にアップデートする必要があります。医療通訳も例外ではありません。ただし、医療通訳の場合、まだまだ医療従事者として認知されていないため、医療従事者むけのサイトには登録できないことも残念ながらあるでしょう。有料のニュースサービスを取りつづけることもなかなか大変です。

今回は、インターネットで一般に公開されているニュースサイトを中心にご紹介いたします。一部をのぞき、有料サービスは取りあげていません。気をつけなくてはいかないのは、とくに日本語ニュースサイトなどは、健康ニュースとでも呼ぶべき医学的根拠が薄弱なものも紹介していて、情報の質が玉石混淆[ぎょくせきこんこう]といった状態であることです。イビデンス・ベースであるかどうか、気をつけて読んでいくように気をつけましょう。

なお、医療通訳の資格試験によっては、最新のニューストピックから試験問題を出すものもあります。こういったニュースサイトを利用し、積極的に最新ニュースにふれていくようにしましょう。

英語ニュースサイト

  • STAT NEWS: 英語の医療系ニュースサービスとしては、一番充実しているとみられます。医療従事者が読者ターゲットです。個人的によく目をとおしています。
  • Medical News Today: いろいろな分野をひろくカバーしていますが、STAT NEWSにくらべると、読者ターゲットが一般人よりだとおもわれます。ただし、ネット上では幅ひろく人気を集めているようです。
  • Science Daily: サイエンス全般をカバーしつつ、医療分野もどうやら充実しているようです。個人的につかったことはありません。
  • Reuters Health: 報道機関として長い歴史をもつ英ロイター通信の配信ニュースのうち、健康分野のものがまとまっています。

日本語ニュースサイト

  • 時事メディカル News&Topics: 時事通信系のメディカル・サービスで、時事通信が配信した医療・健康系のニュースをまとめています。
  • CareNet: 医療情報専門サイトで、最新の医療系ニュースなどを取り上げています。会員登録が必要です。
  • マイナビRESIDENT: 医学生・研修医のためのサイトで、毎週5つ最新トピックを取りあげて発信しています。
  • ヨミドクター: 読売新聞の健康関連のニュースを集めたものです。
  • 朝日新聞デジタル 医療・健康: 朝日新聞オンラインサイトで、医療・健康分野の記事をまとめたものです。ニュースによって、朝日新聞デジタルの購読者でないと全文読めないものがあります。
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循環器系・血液と血管 — テキスト『医療通訳』の単語集を自分のものに(第10回)

前回もおつたえしたとおり、テキスト『医療通訳』の『単語集』では、循環器系について複数箇所で取りあげています。今回は『人体器官図』の8ページ目「動静脈・リンパ節各部位」と17ページ下図「血管各部位」にのっている単語を「自分のもの」にしていきましょう。

ところで、テキスト『医療通訳』では、循環器系の体循環について、かなりこまかく血管名を取りあげています。おおくの方はその数のおおさに最初は圧倒されてしまうでしょう。まずは、それぞれの図にある太字で表記されている器官・部位をおぼえるようにするといいでしょう。それから徐々に積み上げていくようにしましょう。最初からすべておぼえなければとあせる必要はありません。

なお、大静脈など前回と重複する単語についてははずしてあります。

※「自分のもの」にするためのすすめ方については第1回を参照。

オリジナルの単語集を確認

日本語 英語
動脈 artery
リンパ節 lymph node
静脈 vein
内頸静脈 internal jugular vein
総頸動脈 common carotid artery
外頸静脈 external jugular vein
鎖骨下動脈 subclavian artery
鎖骨下静脈 subclavian vein
腋窩動脈 axillary artery
上大静脈 superior vena cava
肺動脈(静脈血) pulmonary artery (venous blood)
腋窩静脈 axillary vein
上腕動脈 brachial artery
下大静脈 inferior vena cava
腹(部)大動脈 abdominal aorta
橈側皮静脈 cephalic vein
総腸骨動脈 common iliac artery
尺側皮静脈 basilic vein
橈骨動脈 radial artery
尺骨動脈 ulnar artery
大腿静脈 femoral vein
大腿動脈 femoral artery
大伏在静脈 great saphenous vein
前脛骨動脈 anterior tibial artery
足背動脈 dorsalis pedis artery
頸リンパ節 cervical lymph node
腋窩リンパ節 axillary lymph node
鼠径リンパ節 groin lymph node
リンパ管 lymph vessel
血管 blood vessel
白血球 white blood cell
赤血球 red blood cell
血小板 platelet
血漿 plasma
毛細血管 capillary

日本語・一般むけ・専門用語

日本語 English(lay term) English (medicine)
動脈[どうみゃく] artery
リンパ節[りんぱせつ] lymph node, (lymph gland)
静脈[じょうみゃく] vein
内頸静脈[ないけいじょうみゃく] internal jugular vein
総頸動脈[そうけいどうみゃく] common carotid artery
外頸静脈[がいけいじょうみゃく] external jugular vein
鎖骨下動脈[さこつかどうみゃく] subclavian artery
鎖骨下静脈[さこつかじょうみゃく] subclavian vein
腋窩動脈[えきかどうみゃく] axillary artery
腋窩静脈[えきかどうみゃく] axillary vein
上腕動脈[じょうわんどうみゃく] brachial artery
腹大動脈[ふくだいどうみゃく]、腹部大動脈[ふくぶだいどうみゃく] abdominal aorta
橈側皮静脈[とうそくひじょうみゃく] cephalic vein
総腸骨動脈[そうちょうこつどうみゃく] common iliac artery
尺側皮静脈[しゃくそくひじょうみゃく] basilic vein
橈骨動脈[とうこつどうみゃく] radial artery
尺骨動脈[しゃっこつどうみゃく] ulnar artery
大腿静脈[だいたいじょうみゃく] femoral vein
大腿動脈[だいたいどうみゃく] femoral artery
大伏在静脈[だいふくざいじょうみゃく] great saphenous vein, GSV, long saphenous vein
前脛骨動脈[ぜんけいこつどうみゃく] anterior tibial artery
足背動脈[そくはいどうみゃく] dorsalis pedis artery, dorsalis pedis
頸リンパ節[けいりんぱせつ] cervical lymph node
腋窩リンパ節[えきかりんぱせつ] axillary lymph node
鼠径リンパ節[そけいりんぱせつ] inguinal lymph node, groin lymph node
リンパ管[りんぱかん] lymphatic vessel, lymph vessel
血管[けっかん] blood vessel
白血球[はっけっきゅう] white blood cell white blood cell, WBC, leukocyte
赤血球[せっけっきゅう] red blood cell red blood cell, RBC, erythrocyte
血小板[けっしょうばん] platelet
血漿[けっしょう] blood plasma, plasma
毛細血管[もうさいけっかん] capillary

例文・語の構成要素・おぼえがき

Example 語の構成要素 Note
The major artery carrying recently oxygenated blood away from the heart is the aorta.
A lymph node is one of the small, bean-shaped organs located throughout the lymphatic system. lymph(o)-: ギ「リンパ」. lymph gland: 使用例はすくないが、NCI Dictionary of Cancer Termsも取りあげている.
In general, lymphatic vessels of the subcutaneous tissues of the skin, that is, the superficial lymphatics, follow the same routes as veins, whereas the deep lymphatic vessels of the viscera generally follow the paths of arteries. subcutaneous tissue: 皮下組織. superficial lymphatic (vessel): 浅リンパ管. viscera: 内臓.
Blood from the brain and the superficial veins of the face flow into each internal jugular vein.
The common carotid artery divides into internal and external carotid arteries.
Blood from the external jugular vein empties into the subclavian vein.
Each subclavian artery supplies blood to the arms, chest, shoulders, back, and central nervous system.
On both the left and right sides, the subclavian vein forms when the axillary vein passes through the body wall from the axillary region. sub-: ラ「下」「下位」「以南」「副」「亜」「やや」「半」⇔super. clavi-, clavo, clavicul(o)-: ラ「鍵」「鎖骨」.
As the subclavian artery exits the thorax into the axillary region, it is renamed the axillary artery. axill-: ラ「わきの下」. thorax: 胸郭、胸.
As it passes through the body wall and enters the thorax, the axillary vein becomes the subclavian vein.
In clinical practice, this pressure is measured in mm Hg and is usually obtained using the brachial artery of the arm. brachi(o)-: ギ→ラ「腕」. mm HG: 水銀柱ミリメートル[すいぎんちゅうみりめーとる].
Superior to the diaphragm, the aorta is called the thoracic aorta, and inferior to the diaphragm, it is called the abdominal aorta. abdomin(o)-: ラ「腹」「腹部」. 血管の名称としては腹大動脈がひろく採用されている一方、疾患名としては腹部大動脈の使用がしばしばみられる.
The cephalic vein begins in the antebrachium and drains blood from the superficial surface of the arm into the axillary vein. antebrachium: forearm; 前腕[ぜんわん]. cephalic: 「頭部」のという意味の形容詞だが、中世の誤訳で「外」としたことが残ったものとの説がある.
The aorta divides at approximately the level of vertebra L4 into a left and a right common iliac artery but continues as a small vessel, the median sacral artery, into the sacrum. ili(o)-: ラ「腸骨(ilium)」. median sacral artery, middle sacral artery: 正中仙骨動脈.
The basilic vein continues through the arm medially and superficially to the axillary vein.
The radial artery and ulnar artery parallel their namesake bones, giving off smaller branches until they reach the wrist. radi(o)-: ラ「放射」「輻射」「半径」「橈骨」「放射性(能)」「ラジウム」「無線」.
The ulnar artery is formed at the bifurcation of the brachial artery. [しゃくこつどうみゃく]とも読む. bifurcation: 分岐.
As the popliteal vein passes behind the knee in the popliteal region, it becomes the femoral vein. femor(o)-: ラ「大腿(骨)」. popliteal: (形容詞)膝窩[しっか]の. popliteal vein: 膝窩静脈.
As the femoral artery passes posterior to the knee near the popliteal fossa, it is called the popliteal artery. popliteal fossa: 膝窩[しっか]. popliteal artery; 膝窩動脈.
The great saphenous vein is a prominent surface vessel located on the medial surface of the leg and thigh that collects blood from the superficial portions of these areas.
The anterior tibial artery is located between the tibia and fibula, supplying blood to the muscles and integument of the anterior tibial region. tibia: shinbone; 脛骨[けいこつ]. fibula: calf bone; 腓骨[ひこつ]. integument: 外皮.
Upon reaching the tarsal region, the anterior tibial artery becomes the dorsalis pedis artery, which branches repeatedly and provides blood to the tarsal and dorsal regions of the foot. dors(o/i)-: ラ「背」. ped(i/o)-: ラ「足」. tarsal: (形容詞)足根骨[そっこんこつ]の. dorsal: (形容詞)背側[はいそく]の(この文脈では足背[そくはい]の).
Cervical lymph nodes are those found in the neck, where a high concentration of lymph nodes is seen. cervic(i/o)-: ラ「首」「頸部」.
Axillary lymph nodes are those found in the armpits, where relatively many lymph nodes are seen.
Inguinal lymph nodes are the lymph nodes in the groin.
Exceptions are the central nervous system, bone marrow, bones, teeth, and the cornea of the eye, which do not contain lymph vessels. リンパ管についてはlymphatic nodeという表現はほぼみられないが、リンパ管についてはlymphatic nodeという言い方もある(むしろやや優勢か?).
Blood vessels keep blood inside a closed circulatory system.
Some white blood cells have the ability to cross the endothelial layer that lines blood vessels and enter adjacent tissues. endothelial: (形容詞)内皮の.
Erythrocytes, red blood cells, transport oxygen and some carbon dioxide. oxygen: 酸素. carbon dioxide: 二酸化炭素.
Platelets are cell fragments involved in blood clotting. blood clotting: blood coagulation; 血液凝固[けつえきぎょうこ].
Like other fluids in the body, plasma is composed primarily of water.
In the capillaries, the oxygen carried by the erythrocytes can diffuse into the plasma and then through the capillary walls to reach the cells. capillaryはその微小性もあり、ほとんどの場合、複数形でもちいられる.

※下表は画像データとしてダウンロード可能です。

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参考資料