発熱についてのおぼえがき

発熱は、「家庭の医学」(保健同人社)などによると、一般外来でもっともよくみられる訴えとなっています。とはいえ、熱をうったえる患者のなかには、実際に体温があがっているわけではなく、ただ熱っぽい(feeling feverish without a fever)という場合がすくなくないそうです。体温の高さによって、37℃から38℃未満を微熱(low-grade fever)とし、39℃以上を高熱(high-grade fever)といいます。なお、feverには通常、不定冠詞の”a”がつきますが、疾患名である”hay fever”にはつきません。

摂氏と華氏のちがいを理解する

アメリカ人など患者によっては、摂氏(Centigrade、℃)ではなく、華氏(Fahrenheit、°F)でしか、体温を理解していない患者もいます。とっさに計算を求められる可能性もありますので、気をつけましょう。

X°FからY℃への変換
(X-32)÷1.8=Y

Y℃からX°Fへの変換
Y×1.8+32=X

こちらに早見表がありますので、ざっとしたちがいをあらかじめ理解しておくといいでしょう。

はかる部位で体温に差がある

体温ははかる部位によって、温度がことなることに注意しましょう。一般には、わきの下ではかることがおおいとおもいます。そのほか、舌の下や肛門、耳の穴のなかなどで、体温をはかります。

部位 日本語 英語 lay terms 腋窩温基準
わきの下 腋窩温(えきかおん) armpit temperature axillary temperature
口のなか(舌の下) 舌下温・口腔温 mouth temperature oral temperature +0.3-0.5℃
直腸内(肛門) 直腸温 anus temperature rectal temperature +0.8-0.9℃
耳の穴 鼓膜温 ear temperature tympanic temperature +0.2℃

熱型をみる

よくある症状であることから、発熱の原因としてかんがえられる疾患は幅広くあります。炎症がからだのどこかでおこっていて、その反応として、熱がでることがおおいので、まずは炎症をうたがいます。ウイルスや細菌による感染症の場合がすくなくありません。鑑別診断では、熱のタイプ(熱型)や随伴症状を患者に問診しながら、診察をすすめます。

日本語 英語 特徴 原因疾患例
稽留熱(けいりゅうねつ) continuous fever 高熱がつづき、日中変動が1度以内と幅がちいさい 急性肺炎、化膿性髄膜炎、腸チフス
弛張熱(しちょうねつ) remittent fever 日中変動が1度以上と激しいが、平熱まではさがらない) 敗血症、腎盂腎炎、膀胱炎などの化膿性疾患、悪性腫瘍、インフルエンザなどのウィルス感染症
間欠熱(かんけつねつ) intermittent fever 日中変動の幅が大きく、高熱となることもあるが、平熱までも下がる。 マラリア、敗血症、腎盂腎炎
毎日熱 quotidian fever 間欠熱のうち、毎日一度熱のピークがくるもの マラリア
三日熱 tertian fever 一日置きにピークがくるもの マラリア、敗血症、腎盂腎炎
四日熱 quartan fever 間欠熱のうち、72時間に一度ピークがくるもの マラリア

随伴症状をしらべる

問診で随伴症状(associated symptoms)を問診や身体検査をすることでしらべていきます。

日本語 英語 原因疾患例
悪寒戦慄(おかんせんりつ) rigors, chills with shivering インフルエンザ、急性扁桃炎、肺炎、腎盂腎炎、産褥熱、敗血症、結核、髄膜炎
ひきつけ、痙攣発作(けいれんほっさ) fit, seizure, convulsions 疫痢、肺炎、日本脳炎、髄膜炎、インフルエンザ、猩紅熱、はしか、ジフテリア、食中毒
頭痛 headache 日本脳炎、髄膜炎、脳膜炎
耳の痛み ear pain 急性中耳炎、おたふくかぜ
のどの痛み sore throat 急性扁桃炎、ジフテリア、急性咽喉頭炎、インフルエンザ
胸痛 chest pain 肋膜炎、心膜炎、肺炎、肺膿瘍
せき cough 肋膜炎、心膜炎、肺炎、肺膿瘍
腹痛 stomachache, abdominal pain 急性虫垂炎、急性胆のう炎、急性腎盂炎、膀胱炎
関節痛 joint pain リウマチ熱、関節炎、インフルエンザ
発疹(ほっしん) rash はしか、風疹、猩紅熱、水疱瘡、突発性発疹、薬物中毒、薬物アレルギー
嘔気 nausea, sickness 感染性食中毒、日本脳炎、髄膜炎、流行性肝炎
嘔吐 vomiting, emesis 感染性食中毒、日本脳炎、髄膜炎、流行性肝炎
下痢 diarrhea 赤痢、疫痢、感染性食中毒、過敏性腸症候群
痰がからむ咳、湿性咳嗽(しっせいがいそう) productive cough 肺炎、風邪、肺結核、百日咳、はしか
sputum 肺炎、風邪、肺結核、百日咳、はしか
黄疸 jaundice, icterus, yellowing of the skin 急性肝炎、胆のう炎、胆管炎
眼球黄染 jaundice, yellowing of the whites of the eyes 急性肝炎、胆のう炎、胆管炎

原因疾患例

日本語 英語 Lay Terms
インフルエンザ influenza the flu
急性扁桃炎 acute tonsillitis
肺炎 pneumonia
腎盂腎炎 pyelonephritis
産褥熱 puerperal infection, postpartum infection, puerperal sepsis, puerperal endometritis childbed fever
敗血症 sepsis
結核 tuberculosis
髄膜炎 meningitis
疫痢 severe case of dysentery
日本脳炎 Japanese encephalitis
猩紅熱 scarlet fever, scarlatina
はしか measles, rubeola
ジフテリア diphtheria
食中毒 foodborne illness, food poisoning
脳膜炎 cerebral meningitis
急性中耳炎 acute otitis media, AOM middle ear infection
おたふくかぜ、流行性耳下腺炎 mumps, epidemic parotitis
急性咽喉頭炎 acute pharyngolaryngitis
肋膜炎 pleurisy, pleuritis
心膜炎 pericarditis
肺膿瘍 lung abscess
急性虫垂炎 acute appendicitis
急性胆のう炎 acute cholecystitis
膀胱炎 cystitis bladder infection
リウマチ熱 rheumatic fever
関節炎 arthritis
風疹 rubella German measles, three-day measles
水ぼうそう chickenpox, varicella
突発性発疹 roseola, exanthema subitum
薬物中毒 chemical poisoning
薬物アレルギー drug allergy
感染性食中毒 infectious food poisoning
流行性肝炎 epidemic hepatitis
赤痢 dysentery
過敏性腸症候群 irritable bowel syndrome, IBS
風邪 the common cold cold
肺結核 pulmonary tuberculosis
百日咳 pertussis whooping cough
急性肝炎 acute hepatitis
胆のう炎 cholecystitis
胆管炎 cholangitis

参考資料