医療従事者としての姿勢が医療通訳にも求められている – 資格試験の新傾向について

厚生労働省の医療通訳認証制度に関する研究班や国際臨床医学会(医療通訳認証制度の導入をすすめている学会)での討論のようすをみていると、チーム医療の一員として医療通訳を位置付けようという動きがつよまっているようです。この動きが医療通訳の資格試験という点では、どのような影響をあたえているのでしょうか。

医療通訳の資格試験では、医療従事者への心がまえ、姿勢、身だしなみなどを問う問題がふえる傾向にあるようです。守秘義務、SNSの使用といった点について、医療通訳も臨床の場にたちあう以上は、きっちりと身につけるべきだという現場の声の高まりを反映しているようです。医療制度や、病院について最低限の知識をもつべきだという意見も医療通訳資格に影響をあたえています。

それでは、具体的にどういった勉強をするべきなのでしょうか。まずは、厚生労働省のウェブサイトから「医療通訳に関する資料 一覧」のページへいき、『医療通訳』のPDFをダウンロードしましょう。同ページで「本文」として紹介されているPDFファイルです。前半と後半にわかれています。なお、当記事作成時点の『医療通訳』にそって、内容とページを紹介します(改定作業がすすんでいるとのことですので、とおからず、内容・ページに変更がある可能性があります)。

本文の2ページが目次となっていますので、この目次をもとにお話を進めます。

医療従事者としての心がまえ

まずは、31ページから50ページまでの「専門職としての意識と責任」については熟読しておきましょう。ポイントとしては、いくつかのシナリオ(ケーススタディ)が紹介されていますので、そのようなシナリオに目をとおしておくことです。それぞれのケースについて、判断を求めれた場合を想定し、どのように自分だったら考えるかを考えておきましょう。そして、その判断の根拠をかんたんに自分でまとめてみましょう。

「専門職としての意識と責任」に書かれていることは、すべて重要なことですが、資格試験問題というと試験委員がつくりやすい分野、つくりにくい分野があります。その点からいうと、以下の4項目が問題としては取りあげやすいかもしれません。
(4) 忠実性と正確性(36〜37ページ)
(8) 自分の能力の限界を知る(42〜44ページ)
(9) 守秘義務(45〜46ページ)
(10) プライバシーへの配慮(47ページ)
(11) 礼儀とマナー(48〜49ページ)

また、416から417ページの「医療通訳者の行動規範」は、「行動規範」と呼ぶにはやや具体的でテクニカルな記述もありますが、簡潔にまとまっていますので、かならず目をとおしておきましょう。

医療制度・病院について

医療制度や、病院についての知識については、『医療通訳』の123ページから146ページの「日本の医療制度に関する基礎知識」をおさえましょう。ここでは、重点項目をしぼることはむつかしいです。受験する年によって、出る問題がかわる可能性が高いからです。あえていえば、問題としては提出しやすいのは、以下の2項目でしょう。
2)日本の医療機関(125〜127ページ)
3)医療従事者の種類とその役割(国家資格)(128〜129ページ)

また、以下の項目については、重点ポイントはしっかりおさえておきましょう。
6)医療機関の受診の流れ(136〜137ページ): 「受診手続き」
7)医療保障制度(138〜140ページ): 「医療保障制度」
8)社会保険制度、医療保険給付、公費負担医療制度(141〜144ページ): 「労災保険制度」「出産育児一時金制度」「高額医療費制度」「母子健康手帳の交付」

こういった項目については、かならずしも重要度が試験をつくるうえでのポイントとなっているわけではありません。たとえば、「予防接種制度」は比較的、制度の変更を受けやすいために問題としてはだしづらいということがあります。


ここで取りあげた内容・ページは、これをおさえれば、医療通訳者としてそれでいいというものではありません。すべてに目をとおすとことが医療通訳をめざすうえでは、のぞましいでしょう。