訪日外国人、けが・病気でも受診にハードル — 観光庁調査

観光庁が去年12月から今年1月にかけて「訪日外国人旅行者の医療に関する実態調査」を実施しました。調査結果はことし3月に発表されているので、やや新鮮味にかけますが、急増する外国人旅行者が国内の医療機関をどのように受診しているかを教えてくれる興味ぶかいデータとなっていますので、取りあげたいとおもいます。

2012年からの5年間、右肩上がりで3.5倍近く増えた訪日外国人旅行者ですが、2018年も前年比2ケタを上まわるペースで増加しています。医療通訳、医療通訳をめざすものにとって気になるのは、この急増している外国人旅行者のうち、どのくらいの方が日本で医療機関にいくのかということでしょう(医療ツーリズム目的の方はここではふくみません)。

観光庁の調査は、成田、羽田、関空で、帰国直前の短期旅行者を対象にアンケートをつかっておこなわれました。そこでわかったのは、調査対象となった外国人旅行者の6%弱が日本滞在中に、けがをするか、病気にかかるかしたという実態です。この数値は、昨年6月にひらかれた訪日外国人医療支援機構のセミナーでは、4%と観光庁が発表していたので、そこから上ぶれしています。

この6%の方のうち、「医療機関にいく必要をかんじた」とこたえたのは、26%ということです。つまり、外国人旅行者全体からみると、約1.5%が「医療機関にいく必要をかんじた」とアンケートにこたえています。

では、この方たちが全員、医療機関にいったのかというとそうではありません。実際にいったのはこのうちの6割弱。つまり4割強の人たちが、「いく必要をかんじた」のにもかかわらず、受診していないというのです。では、なぜ医療機関にいかなかったのでしょうか。

「医療機関についての必要な情報がえられなかった」がいかなかった理由の半分をしめました。つづいて「はじめからいくのをあきらめていた」が32%となっています。

なぜ、「はじめからいくのをあきらめていた」のかについては、旅行中だったからでしょう、「いく時間がなかった」とこたえた方が多数派でした。しかし、それと同数の回答となったのが「言語に不安があった」という理由でした。

「必要な情報がえられなかった」「言語に不安があった」、だから病院にいかなかったと外国人旅行者たちはこたえています。どちらの理由も医療通訳、医療通訳をめざす方にとっては、見すごすことができない話です。

医療通訳は、医療にかかわるコミュニケーションを支援する仕事、そして医療の現場が活動の場です。しかし、病院にくる前から、コミュニケーションのハードル(「必要な情報がえられなかった」もコミュニケーションの障壁を反映した回答です)が外国人旅行者の前にはあるのだということがこの調査結果ではっきりとわかるのです。

どうすれば、いいのでしょうか。こたえは簡単ではないかもしれません。まずは、行政・医療機関が取り組むべき課題であるともいえるでしょう。しかし、医療通訳、医療通訳をめざす方にとっても、どうすればいいのか、なにができるのかをかんがえていくべき課題ではないかとかんじます。