アメリカ・ボストンで男性生殖器の移植(penis transplant)を実施したとのニュースがはいってきました。Twitterで最初にしったのですが、「ゲー」っと背中がぞくぞくしたというのが正直な最初の感想でした。なんせ、他人についていたイチモツをつまんで、用をたさなければいけないんですから。結婚していたとしたら、妻はその後、技術的には浮気していることにならないか、とか余計なこともかんがえてしまいました。
とはいえ、CNNやBBCでもひろくとりあげていますし、記事をよむとなかなか興味深い話ですので、TwitterでながれてきたさきほどのSTATの記事やNPRの記事、BBCでの報道を参考に概要をまとめてみたいとおもいます。
まず、今回の移植手術は全米初、世界では3番目の男性生殖器移植だということです。最初の2例は中国(2006年)と南アフリカ(2015年)だったそうです。中国での手術は失敗したものの、南アフリカでの手術では、患者はその後、生殖機能を回復し、子どもをもうけたと報告されています。
患者はトーマス・マニング(Thomas Manning)という64歳の男性です。2012年に鼠径部(the groin area)のけがで病院にいったところ、陰茎がん(penile cancer)が発見され、生存率をたかめるために陰茎を切断する(to amputate)手術を受けていました。残ったのは、「a little more than a stump」と記事にはあります。「stump」とは「切り株」とかいう意味ですから、根っこの部分がやや多めにのこった程度だったのでしょうか。マニングさんは手術後、今回手術をおこなったボストンにあるマサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital)の医師に移植についてくり返したのんでいたそうです。
マサチューセッツ総合病院での手術は、ディキン・コー(Dr. Dicken Ko)という泌尿器専門医(urologist)がリードしました。韓国系米国人のようですね。最近は中国系、韓国系の存在感が全米で増していますが、今回の歴史的な手術の報道をみていて、あらためてそのことをかんじました。
笑い話のようですが、移植用の男性生殖器が届いたタイミングはどうやら最悪だったようです。というのは、全米の泌尿器専門医が北米大陸の反対側、西海岸のサンディエゴで開催中の会議に参加していたからです。担当医のコー医師ももちろんこの会議に参加していました。コー医師はすぐになるべくはやい便で真夜中のボストンに戻り、空港から病院に直行したそうです。
コー医師によると、今回の手術の目的は3つあったそうです。まずは、「自然な見た目の外性器を再建すること(to reconstruct a natural-appearing external genitalia)」。次に「泌尿器機能と尿路の連続性を確立すること(to establish urinary function and continuity of the urinary tract)」。そして、最後に「できれば、性機能を得ること(potentially achieving sexual function)」。
手術は、尿路(the urethra)をつなげることからはじめ、つづいて血管(the blood vessels)と神経(the nerves)を縫いあわせたそうです。ちなみにSTATの記事では、「縫いあわせる」という動詞として「to suture」「to wire up」がつかわれています。血管の縫合の段階で問題が生じたそうです。手術前スキャン(pre-op scans)では、動脈(arteries)の血流に問題がなかったようにみえたのですが、実際には1本の動脈(artery)が細すぎたのです(the diameter was too small「(動脈の)直径が小さすぎて」)。そこで、マニングさんの脚の付け根(the top of Manning’s leg)から血管をとってきて、つぎ足しました(to splice)。こうして過程をへた手術は15時間におよんだそうです。
マニングさんのかかった陰茎がんはまれだそうです。それでも、ケガで男性生殖器をうしなう人はいるでしょうし、米国の場合、従軍で負傷した方で生殖器をうしなった方がそれなりにいるようですしね。今回の手術は、そういった方々の希望のよりどころとなるのでしょうか。どうやら、手術は成功におわり、今週中には退院できるようです。経過が気になるところです