TED Talkを英語の勉強につかっている方はおおいとおもいます。たいがいのスピーチで、日本語と英語の両方の字幕がそろっていますから勉強になります。僕自身も興味深いスピーチがおおいので、よく利用しています。医療関連のスピーチもおおいですし、とても刺激的な内容のスピーチがすくなくありません。
きょうは、薬のことを取りあげた2つのスピーチをご紹介したいとおもいます。どちらも、僕にとって、薬についてのかんがえ方をみなおす、いいきっかけになったものです。とても、おすすめです。それぞれの講演のなかでつかわれていることばについては、Glossary(単語帳)をつくりました。このページの下の方にあります。
なお、スピーチの動画は当ブログでそのまま再生できますが、TED Talkのサイトに直接いくと、Transcript(講演の書きおこし)があったりして便利ですよ。
まず1本目は、ERドクターのアリソン・マッグレガー先生です。「リコールされた薬の80%が女性における副作用によるもの」「薬の開発は、すべて男性の細胞、動物のオス、男性をつかったもの」「第2次大戦後、人体実験からひとをまもるために規制がもうけられた」「妊娠していた場合のリスクをかんがえ、女性(およびメス)は試験の対象からはずされた」といった事実を積みあげていきます。そして、薬の開発だけでなく、医学全体が男性と女性のおおきなちがいに結果的に気づかずに来てしまったことを指摘しています。とても刺激的です。
アリソン・マッグレガー: 女性にとって医学に危険な面があるのは何故か?
Alyson McGregor: Why medicine often has dangerous side effects for women
次は、ダニエル・レヴィティン先生です。タイトルをみてもわかるとおり、全体のスピーチは薬のはなしではありません。6分30秒くらいのところから、薬の効果のはなしになってきます。このなかで出てくるNNT(number needed to treat、治療必要数)という指標の現実の数値がおどろきます。「90%の薬が30〜50%の患者にしか効かない」「ひろく処方されている高コレステロールの治療薬スタチンのNNTは300」など、目からうろこがおちました。くわしくは、スピーチをみてみましょう。
ダニエル・レヴィティン: ストレスを受けても平静を保つ方法
Daniel Levitin: How to Stay Calm When You Know You’ll Be Stressed
Glossary
アリソン・マッグレガー: 女性にとって医学に危険な面があるのは何故か?
英語 | 日本語 |
---|---|
runny nose | 鼻かぜ、鼻水 |
stubbed toes | 足趾捻挫、足の指のねんざ |
animal study | 動物試験 |
clinical trial | 臨床試験、治験 |
regulatory approval process | 薬事承認審査 |
Ambien | ゾルビデム、米市場ではアンビエン。睡眠導入剤。 |
sleep disorders | 睡眠障害 |
metabolize | (動)代謝する |
drowsy | (形)眠い |
fetus | 胎児 |
blessing in disguise | 都合のわるいことのようにみえて、じつは都合のいいこと |
homogeneous | (形)等質的 |
reproductive organ | 生殖器 |
sex hormone | 性ホルモン |
breast | 乳房、胸 |
ovary | 卵巣 |
uterus | 子宮、wombとも |
pregnancy | 妊娠。gestationとも |
bikini medicine | 女性の胸と生殖器だけに注目した医療の実践、調査などをさすことば |
boobs and tubes | (俗)(女性の)胸と膣 |
anatomy | 解剖学 |
physiology | 生理学 |
cardiovascular system | 心臓血管系 |
typical | (形)定型 |
atypical | (形)非定型 |
Institute of Medicine | 米国医学研究所、IOM. 2015年に[National Academy of Medicine}(https://www.nationalacademies.org/hmd/)(全米医学アカデミー)に改組された。 |
conception | 受胎 |
chromosome | 染色体 |
testes | testisの複数形。睾丸。ラテン語。testicleの方が一般的。balls |
susceptibility | 感受性、易感染性、易罹患性、(病気への)かかりやすさ |
severity | 重篤度 |
sex | 生物学的性別 |
gender | 社会的性別 |
ダニエル・レヴィティン: ストレスを受けても平静を保つ方法
英語 | 日本語 |
---|---|
cortisol コルチゾール | |
pre-mortem | 事前分析。pre- + -mortem(「前」+「死」) |
hippocampus | |
olfactory sense | 嗅覚 |
cholesterol | コレステロール |
cardiovascular disease | 心血管疾患 |
heart attack | 心臓発作、心筋梗塞 |
stroke | 脳卒中 |
statin | スタチン、HMG-CoA還元酵素阻害薬。コレステロール降下剤。 |
prescribed drug | 処方薬 |
number needed to treat | 治療必要数、NNT。薬の服用や手術 何らかの医療処置で 一人が助かるまでに そうした処置をする 必要がある人数のこと(The number of people that need to take a drug or undergo a surgery or any medical procedure before one person is helped.) |
GlaxoSmithKline | グラクソ・スミスクライン、GSK。製薬会社 |
debilitating muscle | 筋肉衰弱 |
joint pain | 関節痛 |
gastrointestinal distress | 胃腸障害(胃腸の不調) |
prostate cancer | 前立腺ガン |
impotence | 不能 |
erectile dysfunction | 勃起不全 |
urinary incontinence | 尿失禁 |
rectal tearing | 直腸断裂 |
fecal incontinence | 便失禁 |
digestive system | 消化器系 |
libido | 性欲 |
immune system | 免疫系 |
最後に、副作用ということばについて、ちょっとしたおはなしをひとつ。どちらのスピーカーとも副作用をあらわすことばとして、side effectsということばをつかっていましたよね。副作用には、side effectsのほかに、ADR(adverse drug reaction)ということばがあります。医療通訳の場合は、一般人である患者のことをかんがえて、side effectsをつかった方がいいとおもいます。ですが、翻訳などで製薬業界とかかわった場合はADRをつかうことをおすすめします。