ロールプレイで医療通訳の現場にでる準備をととのえよう

ロールプレイで医療通訳を疑似体験

医療通訳になるための勉強をしていれば、ロールプレイをしたことがあるとおもいます。もっとも、これから医療通訳をまざそうとかんがえられてる方のなかには「ロールプレイ」ってなんだろうとおもわれる方もいるとおもうので、おおまかに説明しましょう。

ロールプレイは「役割演技」などと訳されることがあります。roll playではなく、role playです。現実に起こりうる、ある場面を想定して、参加者ひとりひとりに役割をあたえ、その場面のなかでその役割を演じさせる、ちいさな劇のようなものです。台本は、想定された場面において、理想的な流れをえがいたものを基本的には用意します。

参加者は、疑似体験を得ることで、実際の現場でもうまく対応できるようになります。

医療通訳のロールプレイについては、診察室のなかでの診察の場面を想定して、3人で行うことがおおいようです(待合室や、検査室など、ほかにもいろいろな場面が想定できます)。患者役、医師役、通訳役がそれぞれひとりずつで3人となります。台本は、患者と医者のセリフをそれぞれ日本語と対象言語(英語・中国語など訳すべき言語)の両方で用意します。

通訳役は、患者役と医師役のそれぞれのセリフを反対のことば(日本語だったら対象言語、対象言語だったら日本語)で読めば別に台本を用意する必要はありませんよね。もっとも、初歩的な段階をのぞけば、通訳役は台本ぬきに、患者役と医師役のセリフを現実の場合とおなじように通訳するようにします。

台本をよみおえると、それぞれの役割をローテーションさせます。たとえば、右回りに役を1つずつずらしていくなどして、参加者全員がそれぞれの役を一度は経験するようにします。

Medical consultation

ロールプレイは4人でやろう

先日ある医療通訳講座に参加して、ロールプレイを見学する機会がありました。そこでは、4人ごとにグループ分けをし、患者役・医師役・通訳役のほかに、オブザーバーをもうけていました。オーストラリア人のインストラクターだったので、オーストラリア流なのかもしれません。これがとても効果的だったので、ぜひおすすめしたいとおもいます。

オブザーバー以外の方は、3人でロールプライをやっているときとおなじように、それぞれ自分の役割(役柄)を演じていきます。通訳役は、台本にしたがうのではなく、患者役と医師役のセリフにおうじて通訳します。

オブザーバーは、通訳役がどのように通訳をしていうるか観察をします。実際にきちんと通訳できているかということを確認することももちろんですが、そのほか、ちゃんと患者役や医師役のはなしをきいているようにみえるか、信頼できる態度をしているか、といったさまざまことを確認します。

オブザーバーは、ローテーションの前に、観察したことを通訳役にフィードバックします。どの部分の通訳がまちがっていたをつたえます。ずっと下をむいて、メモをとることだけに集中していたとか、ほかに気になった点もこのときにつたえましょう。

まずは耳を傾けよう

オブザーバーのはなしに、まずは耳をかたむけましょう。通訳役だけではなく、患者役、医師役を演じた方も、オブザーバーのはなしに耳をかたむけましょう。オブザーバーがはなしている内容が自分のことでなかったとしても、学ぶべき点はかならずあるはずです。

オブザーバーがフィードバックを終えるまでは、他の方は発言をひかえましょう。まずは、フィードバックをすべてつたえてもらいましょう。ときとして、フィードバックがややきびしいものであることもあります。患者役や医師役だった方が場をなごませようと「わるくなかったよ、自分の方がもっとできない」などと、フィードバックの途中でなぐさめのことばを通訳役にかけたりすることがあります。しかも、自分の個人的な経験まで、その場ではなしはじめる方もいます。

このようななぐさめは、オブザーバーがよっぽど失礼なことをいっているのでないかぎり、とても危険です。オブザーバーが遠慮してしまい、それ以上、率直にはなせなくなる可能性があります。そうなると、通訳役の方から、自分のパフォーマンスを振りかえる機会をうばうことになります。また、はなしの焦点がロールプレイからずれてしまい、貴重なトレーニングの時間が短くなってしまいます。気をつけましょう。

ロールプレイは、現場での経験が得られない方にとって、貴重なまなびの機会です。同志をつのって、できるだけ機会をつくりましょう。4人あつまらなかった場合など、自撮りも効果的ですよ。

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