イギリスのEU離脱は製薬業界に打撃か

イギリスがEU離脱を決めたこと(Brexit)は欧州の医薬品承認プロセスに大きな打撃をあたえるだろうと、STAT NEWSはつたえています。英国だけでなく、英国もふくめて、EU圏の医薬品承認規定はEUレベルで決められているのですから、離脱が現実化するにつれ、影響がでてくることはさけられないでしょう。製薬業界はこんご数年、欧州の動向から目を離せないでしょう(どこの業界もおなじでしょうが)。ざっと、STAT Newsの記事が指摘している点を現状と今後の見通しにわけて整理してみました。

現状

  • EUの医薬品評価機関である欧州医薬品庁(European Medicines Agency、EMA)はロンドンに所在。
  • EMAはイギリスの医薬品・医療製品規制庁(Medicines and Healthcare products Regulatory Agency、MHRA)と共生関係にある。
  • 専門家によると、EMAの審査について、およそ3分の1はMHRAが負担している。
  • イギリス全体では、22万2千人が製薬業界に従事していて、EU圏のほかの国よりも比率がたかい(欧州委員会によると、EUの製薬業界は2012年現在、2200億ユーロ規模で約80万人を雇用)。
  • イギリスのライフサイエンス企業の年間研究費40億米ドルの約16%はEUが出資している。

今後の見通し

  • EMAは現在のロンドンからEU圏へ移転する必要があるだろう
  • EMAが移転すれば、600人の現職員が影響をうけざるをえない。
  • 短期的には影響がないだろう。
  • EUとイギリスの両方で医薬品の承認をうけるには、非効率でいままで以上に時間のかかる承認プロセスをへなければならないだろう
  • EMAとMHRAは別々に運営していく必要があるだろう
  • MHRA、EMAともにおたがいに依存していた機能を独自におぎなっていく必要がでてくる。
  • イギリス製薬業界からの頭脳流出が懸念される。

その他の報道

おおくの報道が、製薬会社の市場価値の面から記事をかいていて、業界環境にはさほどふれていません。そのなかで、The Telegramは、EMAとMHRAの共生関係(とくにMHRAの負担分)がこんごも維持されるのではないかという見方を紹介しています。

「イギリス製薬業界からの頭脳流出が懸念される」という点についても、業界内のEU移住者比率にある程度ふれるなど、The Telegramはやや踏みこんだ見方をしています。それによると、イギリス製薬業界の雇用者数は7万人強で、そのうち、約7%がイギリス以外のEU国民となっています。なお、イギリス国家統計局(Office for National Statistics、ONS)のデータによると、イギリス国内で雇用されているイギリス以外のEU国民は210万人で全体の約6・7%を占めています。

ところで、The Telegramのイギリス製薬業界の雇用者数は、STAT NEWSの22万2千人とおおきくことなります。イギリスの製薬業界団体ABPIのデータは2012年の数値とややふるいですが、The Telegramの数値にちかいものです。STAT NEWSの数値がなににもとづいているのか気になります。

※The life science sector/industryとthe pharmaceutical sector/industryに、記事内容のかぎりは意味のちがいは見いだせませんでした。