動詞が複数になる場合をみてみよう

simple verbとcomplete verb

当ブログのEnglish 101(基礎英語入門)では、ながながと動詞の説明ばかりしていますが、これは動詞が文の中心でとてもたいせつだからです。ここまででふれてきたのは、一語だけの動詞(verb)ですが、こういった動詞はsimple verb(または、main verb)とよばれています。

これに対してcomplete verbというものがあります。complete verbとは、なにかというと、動詞と助動詞でできた複数のことばのグループのことです。助動詞の役割の基本は、動詞の意味を助けて意味をはっきりとさせる(調整する)ことです。なお、日本の文法書にある「完全動詞」とこのcomplete verbはことなるものです。

次の文をみてみましょう。動詞の部分はイタリックでしめしてあります。

動詞 助動詞
The rope will break. ロープは切れるだろう break will
The rope might break. ロープは切れるかもしれない break might

助動詞が調整することでそれぞれの文の意味が変わってきます。もうひとつ、例をみてみましょう。

動詞 助動詞
Mary can rescue the child. メリーはそこの子どもを助けられる rescue can
Mary should rescue the child. メリーはその子どもを助けるべきだ rescue should

動詞はおなじですから、基本的なアクション(行動、この文の場合は「助ける」)はかわらないのですが、そのアクションの意味が助動詞によって調整されるのです。

助動詞は2種類

さて、助動詞には、2種類あります。下にそれぞれの例を挙げます。

動詞としても使われるもの: be (is, am, are; was, were; been), have (has; had), do (does; did)
そうでないもの: shall (should), will (would), may (might), can (could), must

動詞 助動詞
The weather is bad. 天気は悪い is なし
The weather is improving. 天気は回復している improving is

助動詞は、ひとつ以上組み合わせて使われることもあります。

動詞 助動詞
Mary settled the argument. マリーはその議論を解決した settled なし
Mary could have settled the argument. マリーはその議論を解決することができたのに settled could, have

動詞と助動詞を合わせてcomplete verbなのですが、組み合わせによっては、かなり長くなります。

動詞 助動詞
The driver should have been watching the road. 運転手は道を(きちんと)みているべきだった watching should, have, been

このように、最大で4つまでの組みあわせでcomplete verbはつくられます。気をつけてほしいのは、このように複数で組みたてられても、いちばん大事なのはmain verbというアクションをあらわしている1つの動詞だということです。つねに、main verbに目をむける意識をもちましょう。

さて、こんかいは問題をだしませんが、下の文へいろいろな助動詞をくわえて、意味の変化をみてみましょう。

A: The old dog wagged its shaggy tail.
B: Two small boys rang our doorbell.
C: A handsome blue car stopped in front of our house.
D: Players from both teams scrambled over the field.
E: A huge, spreading maple stands in front of the church.
F: A large white cat with yellow patches emerged from the bushes.
G: An expensive silver pin disappeared from the counter.
H: The pond across the road seldom freezes before December.
I: My only key to the house fell through a crack in the steps.

倒置文で動詞への意識をたかめる

一般に英語の文は、主語そして動詞という順番でつくられています。ところがときどき動詞が主語のまえに出てくることがあります。強調のために、こういったことがおこります。詩などによくでてきますが、文語といいますか、ちょっと堅い印象をあたえる文になります。

例文

Down came the rain.
動詞: came
主語: rain

こういった文に出会うととまどうものです。いくつか問題文をあげますので、ためしにいくつか解いて、なれておきましょう。こういった文を理解するコツは、まず文中の動詞をさがすことです。動詞をみつけたら、つぎに、その動詞について「誰あるいは何が」主語になっているのかをさがしましょう。

問題文

a. Up jumped the rabbit.
b. To this old inn came a visitor.
c. Away sped the blue car.
d. Here stands the monument to Frederick Douglass.
e. Beside the bed stood a lamp.
f. Down the stairs came the dog.
g. In the corner lay a lamp.

解答

動詞 主語
a jumped rabbit
b came visitor
c sped car
d stands monument
e stood lamp
f came dog
g lay lamp

余裕のある方へ

ところで、倒置によって、なにが強調されているのかは、気になるところです。おおくのひとは、動詞がまえにでてくるから、動詞が強調されるのだろうとかんがえるでしょう。僕自身、長い間そうかんがえていました。英語一般の主語・動詞という順番は「だれが」という主語が重要な英語の特徴だとおしえられてきたために、英語で重要なものはまえにくるとおもいこんでいたからです。

ところが、英語の文法・スタイルのバイブルともいうべき、The Elements of Styleによると、英語で文の一部を強調したいときに、どこにそのことばをおくのかというと文尾だそうです。

もちろん、動詞が定位置からはずれて、まえに来るわけですから、倒置文ではある程度、動詞が強調されるということはあるでしょう。The Elements of Styleにも、文尾の次にことばが強調されるのは、文頭だとしめされています。

上にあげた8つの倒置文では、主語に代名詞をあてることは適切ではありません。「代名詞では強調するに値しない」ためだとされています。こういった点をみても、動詞が主語のまえにでる倒置文でもっとも強調されているのは、主語であるといえそうです。

主部と述部をみつけてみよう

主部と述部の説明をおぼえていますか。主部は、主語とその主語を説明していることばのグループ、述部は動詞とその動詞を説明している(動詞がなにをしているかをくわしくあらわしている)ことばのグループでしたよね。復習のために、問題をつくっていました。問題が主部だけの場合はSとしています。述部の場合はPです。主語と述部がそろっているものはSPとしています。

コツは、まず動詞をさがすということです。動詞がない場合は、主部です。引っ掛け問題はありません。動詞があった場合、その主語になる名詞があるかをさがしましょう。もし、その名詞がみつからなければ、主部がないということになります。ここに出した問題ではどれも、S、P、SPのいずれかになります。

問題

(例文): most large European cities(例)→ S

A: complained about the very slow service
B: the music stopped
C: supplies electric power to several states
D: my dad has a good sense of humor
E: a bottle of red ink
F: the linoleum on our kitchen floor
G: some parts of the world get mail only once or twice a year
H: moves through the water by a kind of jet propulsion
I: the kindly old doctor in this small Iowa town
J: a giant explosion with the force of a billion atom bombs sometimes occurs on the sun
K: several families in our neighborhood

解答

問題 説明 解答
A: complained about the very slow service complainedは動詞ですが、この動詞の主語となる言葉が言葉がありません。 P
B: the music stopped stoppedが動詞で、musicが主語です。とても短いですが、主部と述部の両方が備わっています。 SP
C: supplies electric power to several states suppliesは動詞です。主語となる言葉を探してもelectric powerもseveral statesもsupplies「供給する」の主語ではありません。 P
D: my dad has a good sense of humor hasが動詞ですね。誰が持っているのでしょう? dadです。 SP
E: a bottle of red ink 動詞がありません。 S
F: the linoleum on our kitchen floor これも動詞がありません。 S
G: some parts of the world get mail only once or twice a year getが動詞です。では、主語はどれでしょうか。主語はpartsです。some parts of the worldが主部です。 SP
H: moves through the water by a kind of jet propulsion movesが動詞です。でも、何が動いているか? 主語がありません。 P
I: the kindly old doctor in this small Iowa town いろいろ言葉は並べてあっても動詞がありません。 S
J: a giant explosion with the force of a billion atom bombs sometimes occurs on the sun 長いですが、後の方にあるoccursが動詞です。では、主語はずっと前の方にあるexplosionなんですね。 SP
K: several families in our neighborhood 動詞がありません。 S

主語と動詞から見方をすこしひろげていく

英文をみるときに、主語と動詞とくに動詞がどれか、そしてどういう意味か、ということを理解することが大事だという話をしました。きょうは、そこからすこし見方をひろげていこうというはなしをします。

主部について

まず「主語」についての確認です。

主語は「その文がつたえようとしている意味の『主人公』がだれ、または、なんなのかをあらわします」

次の例文をみてみましょう。

“The small dog wagged its short tail.”

この文の主語は”dog”ですね。そして、動詞はwaggedです。この文では、dogという主語となっている名詞が”The”という定冠詞と”small”という形容詞とで説明されていて、「(その)ちいさい犬」となっています。

このように、「主語」は、直接(動詞をへないで)に主語を説明することばやフレーズ(句)といっしょになってひとつのことばのグループをつくります。これを「主部」といいます。うえの例文だと、「主部」は”The small dog”です。

注意してほしいのは、この主部のなかでも、一番重要なのは主語となっている名詞だということです。文章が複雑になってわかりづらくなったときには、かならず主語を探すようにしましょう。

述部について

復習すると、動詞は「文の主人公(主語)が「なにをしているのか」あるいは「なんなのか」をあらわします」

そして、動詞は、主部の行動やあり方を説明するために、他のことばやフレーズとともに述部をつくります。先ほどの例文をもう一度みてみましょう。

“The small dog wagged its short tail.”

まずは、動詞をみましょう。”wagged”が動詞ですね。「振った」という意味ですね。なにを「振った」のかというと、”tail”つまり「尾」(名詞)を振りました。その「尾」を説明する”its”と”short”をあわせて、”wagged its short tail”、「(自分の)短い尾を振った」となります。

さて、主部と述部について説明しましたが、主部と述部を1つずつもった文を単文といいます。これが一番基本の文の形です。複雑で、よみとくのがむつかしい文にであったときは、接続詞とかをとりはらって、文をバラバラにして、いくつかの単文にわけたりすると、わかりやすくなります。なれるために、下に例文をいくつかあげておきます。

例文
Two small boys rang our doorbell.
S (主部): Two small boys
P (述部): rang our doorbell

A handsome blue car stopped in front of our house.
S: A handsome blue car
P: stopped in front of our house

Players from both teams scrambled over the field.
S: Players from both teams
P: scrambled over the field

A huge, spreading maple stands in front of the church.
S: A huge, spreading maple
P: stands in front of the church

A large white cat with yellow patches emerged from the bushes.
S: A large white cat with yellow patches
P: emerged from the bushes

An expensive silver pin disappeared from the counter.
S: An expensive silver pin
P: disappeared from the counter

The pond across the road seldom freezes before December.
S: The pond across the road
P: seldom freezes before December

My only key to the house fell through a crack in the steps.
S: My only key to the house
P: fell through a crack in the steps

受動態で動詞のパワーを再確認

受動態の動詞の主語をかんがえてみよう

英文のなかで一番重要なのは動詞だという話をしました。その点について、受動態をみることで、もうすこし、かんがえてみましょう。

It has been found that these cells consistently bind more malaria-immune globulin than normal red cells.

「これらの細胞は一貫して赤血球よりもマラリア免疫グロブリンを結びつけることがわかった」

From Disorders of Hemoglobin: Genetics, Pathophysiology, and Clinical Management by Martin H. Steinberg、Bernard G. Forget、Douglas R. Higgs

文法上の主語は”it”なんですが、これは”found”「わかった/みつけた」という動詞の「主人」ではないんですよね。よく、これはthat節をうけた仮の主語とかいったりしますけど、仮にthat節が主語だとしても、それは”found”という行為の主人ではないんです。だからこそ、受動態という、受身形なんですけどね。

動詞である”found”を中心にかんがえると、そのご主人さまが不在というのが受動態なんです。じゃ、主語を中心にかんがえてみようとすると、すると、これも変な話で、この主語はなにをしているのかっていうと、なにも「して」なくて、「されて」いるんですよ。ご主人としては、ちょっとなさけない状態なんです。

ですから、動詞を中心にかんがえて、その動詞の主人である「主語」がかくされている状態だとかんがえる方が、ほかの文のかたち(ふつうの文や命令文とか)をかんがえても、自然なんですよ。やっぱり、動詞が一番パワーがあるってはなしなんです。

受動態はあいまいな表現

ちょっと、ここから受動態のはなしにひろげていきます。受動態というのは、主人である主語をかくすので、ちょっとキレがわるくなるんです。「だれが」「なにをしている」ってところの「だれが」がきえちゃうわけですから。やや直接性ってのがなくなっちゃうんです。

でも、これって便利なはなしで、「だれが」って部分をかくしたいときにつかわれたりするんですよ。発言にたいして、責任をとりたくないときとか。”by 〜”とつけて、〜の部分が主人だっていってもダメなんです。主語の部分にいない主語ってのは力がないんですよ。だから、よく英語圏では責任を明確にひきうけないまま謝罪めいたことをするときに受動態をつかうんです。

それと、これはじぶんの勝手なみかたなんですけど、受動態ってのは、読者に無意識のうちに「行為をしている」という意味での主語をさがすことを要求しちゃっているんじゃないでしょうか。なんといっても、主語と動詞が英語の文では重要なんですから。つまり、受動態の文をよむというのは、読者に負担がかかるんじゃないでしょうか。

はっきりしてるのは、受動態ってのは、かならず、be動詞をつけるわけですから、ながくなるんです。これも、印象がわるいんですね。直接性がうしなわれるわりに、ながいってのは二重苦なんです。興味があったら、passive voiceってgoogleで検索してみるといいでしょう。受動態の文を批判している文章がネット上にはあふれていますよ。

ちなみに、僕は大学時代に「ぜったいに受動態をつかうことはみとめません」っていう強硬な教授からFreshman Compositionという必修科目をとる羽目になって、ひどいいじめられ方をしました。トラウマです。