病名とか症状って、可算名詞、それとも不可算名詞? (2)

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さて、前回は不可算名詞の例をみてみました。今回はBBCのLearning Engishを参考にしながら可算名詞と不可算名詞の探求を進めましょう。

こちらのウェブページでは、フランスの視聴者からの「information, administration, management, diseaseの複数形について教えてほしい」とのリクエストに答えています。病名は出てきていませんが、ずばりdiseaseがでていますね。こちらの関心に近づいています。

「いくつかの名詞には一般的なことと個別的なことについてそれぞれ不可算的用法と可算的用法がある」といっています。不可算と可算というのは、単語ごとにきれいに分けられないという学習者にとっては気が重くなることを言っていますね。そして、diseaseは、timeやexperienceとともに、こういった名詞の好例だともいっています。

なお、不可算名詞の例としては以下のものが挙げられています。
information, administration(政権・行政体、経営陣を除く), management, advice, accommodation
(複数性を示すにはsome/any/noを使うとあります。)
Diseaseの可算・不可算の用法については以下のように例を挙げて説明しています。

  1. 不可算: The rapid spread of disease in this area was ascribed to poor sanitation.
  2. 可算: Tuberculosis and scarlet fever were both common in the Nineteenth Century, but these diseases have largely died out now.
  3. 可算: vCJD, a progressive fatal disease of the central nervous system, also known as mad-cow disease, has now claimed its 100th victim in Britain.

be ascribed to …: …が原因とされている。
common: 形容詞. 一般的な、よくある、共通の
Tuberculosis: 名詞. 結核
scarlet fever: 名詞. 猩紅熱(小児に多い発疹性の溶連菌感染症、抗生物質で容易に治療可能)
largely: 副詞. おおむね、大体は
die out: なくなる、絶滅する
vCJD: 名詞. variant Creutzfeldt-Jakob disease(異型クロイツフェルト・ヤコブ病)
claim: 動詞.(人の命)を奪う(病気や事故などの文脈で)

BBCに楯突くなんて大胆な真似をするのもなんですが、この不可算の例はあまりいい例とは思いません。「どの病気」でもこの地域の不衛生な状態を考えたら「あっという間に広がった」だろうという感覚があれば一般的な病気としての認識でこの文章になるでしょう。ですが、例えば、ある具体的な病気たとえばエボラ出血熱の話をしていて「あの病気」が「あっという間に広がった」のは不衛生な状態のせいだろうと言いたければ、”The rapid spread of the disease…”となり、それはエボラ出血熱という”a disease”を受けた”the disease”になったと考えるからです。

BBCの例にいくつかの病名が出てきていますが、次回はさらに具体的な病名についての扱いをみていきましょう。

病名とか症状って、可算名詞、それとも不可算名詞? (1)

日本人にとって、名詞が可算か不可算なのかということを肌感覚で理解するというのは、むつかしいですよね。いくらやっても、正直なところしっくりこないところがあります。英語を書く時にピタッと筆が止まってしまって、これって不定冠詞”a”付けた方がいいんだっけって悩むことはよくあって、ネットで調べたりします。これは恥ずかしいですが、今までに何度もやっています。

そこで、病名なんですけど、可算名詞か不可算名詞かどちらなんでしょうか。
例えば、「私は花粉症です」っていうのはどういうんでしょうか。
“I have hay fever.”
“I have a hay fever.”
どちらの方がより適切なんですかね。
(ググると両方出てきます。)

まずは、可算名詞と不可算名詞の確認してみましょう。ここでは、基本的に名詞は可算なんだと仮定して、どういった名詞が不可算なのかを確認します。ほとんど何でも数えちゃう日本人ですからね。まずはケンブリッジ大学出版局のこちらのサイトが挙げる不可算名詞は以下の通りです。

(1)考え・経験
例: advice, information, progress, news, luck, fun, work
(2)原材料・物質
water, rice, cement, gold, milk
(3)気象用語
weather, thunder, lightning, rain, snow
(4)集合名詞(複数のものによって構成されているもの)
urniture, equipment, rubbish, luggage
(5)その他
accommodation, baggage, homework, knowledge, money, permission, research, traffic, travel

次回は、BBCの”Learning English”を参考にして、可算名詞と不可算名詞を見てみましょう

東京オリンピックが近づくなか、医療通訳による訪日外国人サポートへの関心が高まっています。ブログ『医療英語の森へ』を発信する医薬通訳翻訳ゼミナールは、独学では物足りない、不安だといった方のために、医療通訳・医療英語のオンライン講座もおこなっています。ご希望の方は当ゼミナール・ウェブサイトのお問い合わせページから、またはメールでご連絡ください。

disease? illness? sickness? (3)

さて、今回はsicknessとillnessについて話します。diseaseと比べるとsicknessとillnessは、むつかしいかもしれません。カナダ医学部教員協会(AFMC)やエジンバラ大学のボイド教授によると、illnessというのは患者が主観的に感じている不健康な状態であるということで、診断としての「病気」とは関係ないとされています。その一方で、オーストラリアのジュラ先生は、 ほぼ同じ説明をsicknessについて示しています。医学的な根拠をもつ、diseaseに比べ、sicknessとillnessは地域性など、解釈に幅がでてくるようです。なお、sicknessは薬品系のデータベースMedDRAでは「嘔気」となっているように、吐き気やむかつきなどの症状につい ての意味をもちます。motion sickness 乗物酔いや morning sickness つわりを思い出していただければ、感じは掴めるとおもいます。

sicknessについては、AFMCとボイド教授が興味深いことを記しています。sicknessは社会的なものだと言うのです。社会的な価値観で「病気」となっているものを指すと言うのです。AFMCのウェブページには、面白い説明が載っています。

“For example, a patient complains of tiredness and malaise–his illness as he experiences it. He consults a doctor about it–because he believes that he might have a sickness. The doctor might attribute the patient’s symptoms to a thyroid condition–a disease. ”
(Susser MW. Causal thinking in the health sciences. New York: Oxford University Press, 1973)

つまり、sicknessは患者が主観的に捉えている(社会的に捉えさせられている)「病気」だというのですね。概念として差異を見つけるのがなかなかむつ かしいけれども、わかりやすい例だと思います。とはいえ、sicknessとillnessについては、一般用語として使う範囲では、吐き気を除く部分に おいては、これといった明確な違いを示すことはむつかしそうです。

ところで、ailmentですが、重篤ではないが慢性的な病気を 指すことが多いようです。といってもあくまでそういう傾向があるというだけで、「持病」と訳すのは違うかなと思います。例えば、”I have a minor ailment.”を「軽い持病があります」と訳すよりは、「体のことでちょっとした悩みがあります」と訳した方がより実感に近いのかなと感じます。

minor ailmentでネットを検索すると、英国のサイトが多く、引っかかります。ここら辺は地域性を感じます。こういった英国サイトをみると、minor ailmentsの例として挙げられているのは、coughs 咳、colds 風邪、mild eczema 軽い湿疹、athlete’s foot 水虫、heartburn/indigestion 胸焼け・消化不良、constipation 便秘、sore throat のどの痛みなどで、insect bites and stings 虫さされもあります。サイトによっては、こういったminor ailmentsでは病院に来るよりは、薬局にいくようにと指示しています。「慢性的な病気」でくくるのはむつかしいでしょう。

disease? illness? sickness? (2)

(1) で触れたいくつかのサイトですが、それぞれの単語の意味についての見解には、やや違いがあります。もっとも、diseaseに関してはほぼ見解が一致してるようです。つまり、diseaseは、診断された「病気」だと言うことです。別の言い方をすると、医師が病理学的に患者の健康状態を診察した上で診断したという意味での「病気」であると言うことです。ちなみに「病理学」とは、高知大学医学部・病理学講座によると「病気になった原因を探り、病気になった患者の身体に生じている変化が、どのようなものであるかを研究する学問分野」ということです。

diseaseとは「重篤であったり、不治ものと受け止められがちであり、illnessはインフルエンザなどの一時的な不健康状態」という見解や、原因がはっきりしている病気を指すという見解もあります。しかし、必ずしもそうとはいえなそうです。例えば、メイヨ・クリニックが一般向けに出しているインフルエンザの説明ではインフルエンザはdiseaseとなっています。また、idiopathic 特発性のdiseaseもあります。あくまでdiseaseとは客観的(患者の訴えだけでなく医師の診断が入ると言うこと)な意味を持つという点が重要でしょう。医師が「病気です」と診断した際には、特定の病名でない限り素直にdiseaseを訳語として選択することがよいでしょう。

ちなみに、subjective 主観的と objective 客観的というのは、医療行為を理解する上でとても大事なポイントです。symptoms 症状というのは、多くの場合、患者が経験するとても主観的なものです。患者から症状についての complaints 訴えに耳を傾けながら医師は診察をし、findings 所見として客観的な形でまとめ、診断を下します。このプロセスを理解すると、医療通訳をしていても、流れがつかみやすくなります。

次回はsicknessとillnessについて、みてみましょう。

disease? illness? sickness? (1)

一口で「病気」と行っても、いろいろな表現がありますね。diseaseやillness、sicknessなどは誰しも思いつくでしょう。この他にailmentなんて言葉もあります。どれを選んだらいいんだろうと悩む人も多いし、違いは何なんですか、と質問をしてくる人もいます。

diseaseとillness、sicknessという3つの単語については、その使い方に悩むのは当然でしょう。ネットを検索してみれば、違いが何なのかと質問をしている方が数多くいることが分かります。3つの単語の意味を切り分けることの難しさは、定義付けに関する論文をエジンバラ大学の先生が書いていることや、カナダの医学校教職員の団体であるAFMCがウェブサイトで言及していることでもわかります。こういった事実を考えれば、英語学習者だけの問題ではないということがお分かりになるでしょう。

この他、日本語ではこちらのサイトが図をつかって丁寧に説明しています。日常的な意味であれば、こちらのオーストラリア人の先生が簡潔に説明しています。

ここで紹介したサイトや論文の説明をみても分かりづらいことがあると思います。そこで、次回はもう少しくわしく言葉の違いをみていきたいと思います。