医療通訳の職能団体・全国医療通訳者協会が発足しました

医療通訳が、医療の現場で患者に寄りそい、通訳をつづけていくこと、患者を支援していくということは精神的にたいへんなことです。おおくの場合、医療通訳はひとりで派遣され、現場にはいります。そして、その場その場で、患者と医療従事者の間のコミュニケーションにとって、最良の選択はなにかということをじぶんで判断していかなくてはいけません。ひとりで活動するわけですからその場で相談する相手もいません。現場の状況はそのとき、そのときでまったくちがいますし、さらに変化していきます。

ひとりの患者の通訳をおえたあとも、その場でくだしたひとつひとつの判断はただしかったのだろうかと自問自答する日々をおくることになるでしょう。医療通訳として活動をつづける重圧というのはちいさいものではないのです。そういったときに支えになってくれるのは、やはり、おなじように現場にたつ、医療通訳のなかまでしょう。当ブログでも、医療通訳のネットワーク・横のつながりがたいせつであることはつたえてきました。

一般社団法人全国医療通訳者協会(National Association for Medical Interpreters、NAMI)が各地で活躍する医療通訳者が「ゆるやかに、団体や地域を超えてつながって」いくために今月(2016年12月)発足したそうです。団体の趣旨をみると、「医療通訳の普及と発展を通して、医療保健場面で通訳を必要とする人々の健康と福利に貢献していくことを目的としています」と会の目的をあげています。ウェブサイトのトップページでは、「悩みや問題を共有して解決策をみつけていきましょう」とよびかけています。

私は現時点でNAMIのメンバーではありませんし、発起人でもありません。しかし、医療通訳にたずさわるものとして、医療通訳の職能団体がたちあがったことをよろこばしくおもいます。こんごとも、期待しながら、注目していきたいとおもいます。

一般社団法人日本医療通訳協会が12月14日にセミナーを開催

すでに来週の水曜日にせまっていますが、一般社団法人日本医療通訳協会が医療通訳セミナーを開催します。今回のセミナーで注目すべきは、医療通訳のパイオニアである大野直子先生が講師をすることです。現在、順天堂大学で講師をつとめている大野先生の授業は、医療通訳というしごとについてまなぶことのできる、とても刺激的なものになるとおもいます。そのほか、免疫療法にに力をいれている東京セルクリニックの黒岩浄人マーケティング部部長も講師として登壇します。

参加費は、同協会の会員であれば2千円、非会員は3千円となっていますが、非会員であっても、当ブログの紹介と伝えれば、会員と同額で参加できます。詳細についてはこちらのウェブページをご覧ください。

通訳自習用のロールプレイ動画を作成・公開

このブログでなんどか紹介しました医療通訳・コミュニティ通訳の専門家であるジュリア・クネゼヴィッチ先生と、ロールプレイを自宅でひとりで練習できる動画をつくりました。動画はYoutubeの「医薬通訳翻訳ゼミナール」のチャンネルで公開しています。セルフスタディーに利用しましょう。

なお、ジュリア先生とは、東京駅の近くで今月ワークショップを開きます。こちらへのご参加もお待ちしています。

医療通訳

ジュリア先生の『セルフトレーニングで通訳力をつけよう』(医療通訳「うつ」) ft. 小澤未来也

ジュリア先生の『セルフトレーニングで通訳力をつけよう』(医療通訳「気胸」) ft. 小澤未来也

コミュニティ通訳

ジュリア先生の『セルフトレーニングで通訳力をつけよう』(コミュニティ通訳「校長先生との面談・退学警告」) ft. 小澤未来也

スクリプト

どの動画のスクリプトも英語版は公開しています。どんどん自宅で練習しましょう。

スクリプトの著作権はジュリア・クネゼヴィッチ先生に帰属します。無断での商用利用はご遠慮ください。

ジュリア先生とコラボで医療通訳ワークショップを12月18日・25日に開催(※25日中止)

ここでご紹介した医療通訳ワークショップですが、25日の開催が中止となりました。また、講師の都合により、講師はジュリア先生だけになりました(12月16日更新)。

当ブログで以前にもご紹介したことのあるジュリア先生とコラボレーションして医療通訳および医療英語の実践的なワークショップを12月18日と25日に東京駅・日本橋エリアでおこないます。

あらためて、ジュリア・クネゼヴィッチ先生をご紹介すると、医療通訳、司法通訳など幅広い分野での通訳経験をもち、豪州ロイヤル・メルボルン工科大学のご出身(通訳翻訳大学院修士)で、これまで国内外の大学で通訳をおしえてこられています。一般社団法人日本医療通訳協会の医療通訳技能検定の試験官のご経験もあります。

ワークショップでは、男性の健康問題やオリンピック関連のトピックなどをとりあげます。男性の健康問題とはいっても性差による薬の副作用の差異や、職場でのストレス対策など、性別をこえた視点でまなんでいきます。オリンピック関連では、スポーツ医療や、日本の医療制度についてほとんど知識のない短期旅行者へのサポートなどについてとりあげます。

参加型ですすめ、実践的なスキルをまなぶ場にしていきます。参加者の交流・ネットワークづくりにもつなげていきたいとかんがえています。詳細とお申し込みについてはこちらのサイトをご覧ください。おおくの方の参加をおまちしています。

なお、遠方の方がインターネットをつうじて参加できる方法も現在検討中です。ただし、参加とはいっても、ワークショップの性格からいって、限定的なものとなる見とおしです。そのため、参加費は比較的おさえたものになる予定です。ご興味のある方は、こちらからお問いあわせください。

【中国語】岡本悠馬先生が「中国語医療通訳トレーニング」の連載を再開

関西地方で中国語の医療通訳および医療通訳の指導者として活躍中の岡本悠馬先生が「中国語医療通訳トレーニング」の連載を先週再開されました。以前は「医療現場の中国語」として連載されていたものだそうで、「Chinese Station 中国語学習ジャーナル」というサイトに掲載されています。

岡本先生ご自身も「執筆を加速させていきます」と、はなしていらしたので、かなり期待できるとおもいます。これから注目です。当ブログは「医療英語の森へ」というタイトルからして、医療英語、英語での医療通訳を勉強なさっている読者の方ばかりだとはおもいますが、中国語を勉強されている友人や、医療通訳仲間で中国語を専門にされている方がいたら、紹介することをおすすめします。とても役立つとおもいます。

岡本先生とは、大阪での仕事で何度かご一緒したことがあるのですが、とても信頼できる優秀な方です(といっても、私は中国語ができませんので、岡本先生の中国語の実力を十分に理解することができないのが残念ですが)。Twitterも@yuma_okamotoでやっているそうなので、中国語で医療通訳をやっている方にはフォローをおすすめします。