Wikipediaは便利だけど気をつけよう

「情報ソースはなるべく共有したい」シリーズでなくても、エントリーには、必要におうじて「参考資料」といった形で情報ソースをのせています。そちらをみていただければ、どのような情報ソースをつかって、「資料」をあつめているのかおわかりいただけるとおもいます。それでも、ここではあえて、いくつかふれておきたいとおもいます。ちょっと、注意したいこともありますので。

やっぱり便利、Wikipedia

ウェブの百科事典、Wikipediaはやっぱり便利です。しらべたいことばをGoogleで検索すると、かなりの確率で上位でひっかかってきますしね。医療用語をふくむ専門用語を網羅しているので、とてもたすかります。他言語対応というのもうれしいです。といっても、英語と日本語くらいしかつかいこなせませんが。

他言語対応で便利なのは、日本語版でしらべたことばは対応するエントリが英語版にもあれば、みているウェブページの左側のコラムにある「他言語版」のなかの「English」をクリックするすれば、英語版にうつることができます。反対に、英語版でみていることばに対応するエントリが日本語版にあれば、みているウェブページの左側のコラムにある「Language」の「日本語」をクリックすれば、日本語版にうつることができます。ですので、英語と日本語のそれぞれの説明をいろいろと比較できます。

ためしに「腹」を日本語版でみてみましょう。そして、「腹」のページの左コラムにある「他言語版」の「English」をクリックすると、英語版の「Abdomen」に移動します

でもWikipediaのつかいかたには注意が必要

ここで気をつけなくてはいけないのは、日本語版は英語版の翻訳ではないということです。日本語版も、英語版もそれぞれ別の筆者がいて、それぞれの説明をかいています。ですので、内容はまったく別物です。それぞれの筆者が自分の考え方にもとづいてかいているので、説明のしかたもまったくちがいます。

もう一点、注意したいのは、Wikipediaはボランティアがかいているので、かかれている内容は正確とはかぎらないということです。とくに日本語版の正確性はかなりあやしいものです。英語版の方が質はたかいとおもいますが、それでも、100%の自信をもって、信頼できるかというとむつかしいです。ですから、大枠をとらえるための、あたりをつけるためにつかう程度にしたほうがいいとおもいます。

ありがとうMayo Clinic

Mayo Clinicという医療機関をごぞんじですか。アメリカ・ミネソタ州に本拠地をおく一大医療グループです。ミネソタ州だけにかぎらず、全米各地に医療施設をもっています。世界の富裕層が病気になったときにたよるのが、このメイヨ・クリニックだといわれています。ありがたいことに、このメイヨ・クリニックですが、患者むけに病気や検査関係のいろいろな情報をPatient Care and Health Informationというサービスで提供しています。患者むけだけあって、とても平易なことばでかかれています。患者にたいして、専門用語をぶつけるのでなく、どのようなことばをつかえばいいのかという参考になりますので、勉強になります。

学習ノート – 食道裂孔ヘルニア

学習ノートは病気・症状についての覚え書き。医療通訳として、病気・症状についてまなぶべきとかんじたものをひとつひとつ個人的にまとめたものです。でも、完成形ではありません。勉強していくなかで、修正する可能性や、追加すべきものがでてくる可能性がある、つねに進行形のノートです。

食道裂孔ヘルニア (esophageal) hiatal hernia

非外傷性横隔膜ヘルニアの1タイプ。成人、とくに50歳以上の女性におおくみられる。胸部と腹部の間にある横隔膜には、大動脈と大静脈、そして食道をとおす穴(大動脈裂孔、大静脈孔、食道裂孔)があいている。食道裂孔から胃の一部が胸部側にあがってしまった状態。

病因 etiology

先天的に食道裂孔がゆるく胃が胸部に脱出している症例もある。高齢化により組織がゆるみ、食道裂孔がひろがり、胃が脱出する場合もある。そのほか、妊娠や肥満、腹水貯留などで腹腔内の圧力(腹腔内圧)があがることでもおこるとかんがえられている。

徴候と症状 signs and symptoms

症状として多いのは、胸やけ、胸痛、嚥下困難で、逆流性食道炎と共通している。そのほか、みぞおちの痛み、息切れを訴えることがある。

診察法 diagnostic procedures

食道・胃造影検査、CT、上部消化管内視鏡検査

治療法 treatment

治療は外科的手術

英語 日本語 Lay Terms
非外傷性 nontraumatic
横隔膜ヘルニア diaphragmatic hernia
大動脈 aorta
大静脈 vena cava
食道 esophagus gullet
大動脈裂孔 aortic hiatus
大静脈孔 caval opening
食道裂孔 esophageal hiatus
妊娠 gestation pregnancy
肥満 obesity fatness
腹水貯留 ascites
腹腔内圧 intraabdominal pressure
胸やけ pyrosis heartburn
息切れ shortness of breath, SOB
嚥下困難 dysphagia difficulty swallowing
逆流性食道炎 reflux esophagitis
食道・胃造影検査 barium x-ray
上部消化管内視鏡検査、胃カメラ upper endoscopy, upper gastrointestinal (GI) endoscopy

参考動画

Hiatal Hernia Symptoms and Treatment

参考資料

※参考資料にもとづいて医療英語・医療通訳の勉強のためにつくられた資料です。実際の治療や、検査のために、つくられた資料ではありません。病気・疾患になやまれた場合、きちんと病院で治療をうけましょう。

学習ノート – 自然気胸

学習ノートは病気・症状についての覚え書き。医療通訳として、病気・症状についてまなぶべきとかんじたものをひとつひとつ個人的にまとめたものです。でも、完成形ではありません。勉強していくなかで、修正する可能性や、追加すべきものがでてくる可能性がある、つねに進行形のノートです。

自然気胸 spontaneous pneumothorax

胸膜に穴があき胸腔内に空気が入りこみ、胸腔内にたまって、肺が虚脱した状態を気胸というが、そのうち、胸壁の外傷をともなわないものを自然気胸という。やせ型の若い男性におこることがおおく、くり返して発症することがおおい。

病因 etiology

自然気胸のほとんどが肺胞の一部が囊胞化したブラや胸膜のすぐ下にできたブレブとよばれる囊胞が破れることでおこる。破れ目から呼気がはいりこみ、胸腔内にたまり、肺を圧迫する。

徴候と症状 signs and symptoms

突然の胸痛・呼吸困難がおこる。頻脈、空咳、動悸もおこる。酸素飽和度の低下がみられる。

診察法 diagnostic procedures

聴診、胸部X線、胸部CT。

治療法 treatment

安静にして、自然治癒する可能性が高い。軽度の場合、胸腔ドレナージ術による吸引をおこなう。再発をくり返す場合は、胸腔鏡下手術を行うことがおおい。

英語 日本語 Lay Terms
気胸 pneumothorax collapsed lung
胸膜 pleura
虚脱する v. collapse
外傷 trauma injury
囊胞 cyst a closed sac
ブラ bulla
ブレブ bleb
空咳 dry cough
酸素飽和度 oxygen saturation, SpO2
聴診 auscultation listening to a person’s chest with a stethoscope
胸部X線 chest radiography chest X-ray
胸部CT chest CT
胸腔ドレナージ術 chest drainage
胸腔鏡下手術 video-assisted thoracoscopic surgery

参考動画

Pneumothorax (collapsed lung) Animation, Treatment, Decompression, Pathophysiology

参考資料

※参考資料にもとづいて医療英語・医療通訳の勉強のためにつくられた資料です。実際の治療や、検査のために、つくられた資料ではありません。病気・疾患になやまれた場合、きちんと病院で治療をうけましょう。

学習ノート – 大動脈解離

学習ノートは病気・症状についての覚え書き。医療通訳として、病気・症状についてまなぶべきとかんじたものをひとつひとつ個人的にまとめたものです。でも、完成形ではありません。勉強していくなかで、修正する可能性や、追加すべきものがでてくる可能性がある、つねに進行形のノートです。

大動脈解離 aortic dissection

3つの層(内膜、中膜、外膜)でできている大動脈の中膜になんらかの原因で血液が流れこみ、内膜側と外膜側に割れて、分離してしまう状態。解離の場所にもとづくスタンフォード分類では、A型(上行大動脈に解離があるもの)、B型(下行大動脈のみに解離があるもの)に大別される。

病因 etiology

高血圧が主な病因だが、遺伝性の場合や、外傷性の場合もある。

徴候と症状 signs and symptoms

ほとんどの症例で、突然おこる強烈な痛みがみられる(痛みがないばあいもあり、注意を要する)。「裂けるような」「ナイフでえぐられるような」といった鋭い痛みが特徴。痛みの部位は解離がおこった部位や範囲に一致するが、ときとして痛みが1カ所にとどまらず、背中や腹部に動くことがある。いちじるしい発汗がおこり、意識障害がおこることもある。動脈の拍動が片側または両側の腕からなくなることがある。半身不随や両下肢の運動麻痺がみられることもある。血圧の上昇や下降がみられる。胸水がたまることもある。心筋梗塞を合併することもある。

診察法 diagnostic procedures

心電図、胸部X線、CT、MRI、心エコー

治療法 treatment

A型の場合は、ほとんどのケースで外科的治療をおこなう。B型のケースでは、降圧剤を中心とした内科治療をほどこす。

英語 日本語 Lay Terms
スタンフォード分類 Stanford classification
内膜 tunica intima, intima innermost layer
中膜 tunica media, media middle layer
外膜 tunica externa, tunica adventitia, adventitia outermost layer
遺伝性 adj. genetic, hereditary
半身不随 hemiplegia
運動麻痺 motor paralysis
胸水 pleural fluid
心電図 electrocardiogram, ECG/EKG
胸部X線 chest radiography chest X-ray
心エコー echocardiography
降圧剤 antihypertensive drug/agent

参考動画

What are the symptoms of an aortic dissection?

参考資料

※参考資料にもとづいて医療英語・医療通訳の勉強のためにつくられた資料です。実際の治療や、検査のために、つくられた資料ではありません。病気・疾患になやまれた場合、きちんと病院で治療をうけましょう。

学習ノート – 不整脈

学習ノートは病気・症状についての覚え書き。医療通訳として、病気・症状についてまなぶべきとかんじたものをひとつひとつ個人的にまとめたものです。でも、完成形ではありません。勉強していくなかで、修正する可能性や、追加すべきものがでてくる可能性がある、つねに進行形のノートです。

不整脈 arrhythmia, irregular pulse

なんらかの要因によって、心臓拍動のリズムがくるって脈が乱れる状態。脈が速くなる頻脈性不整脈と遅くなる徐脈性不整脈に大別される。

病因 etiology

心臓を規則正しく拍動させている刺激伝導系に障害がおきて発生する場合と、心臓に負担がかかった場合や外的刺激が加わっておこる場合がある。

徴候と症状 signs and symptoms

動悸、めまい、アダムス‐ストークス発作(失神)、胸部違和感、息切れ、胸痛、発汗など

診察法 diagnostic procedures

聴診、心電図、ホルター心電図、心エコー、心臓カテーテル検査

治療法 treatment

抗不整脈薬、人工ペースメーカー、カテーテルによる治療(カテーテル・アブレーション)、高頻度電気刺激法

英語 日本語 Lay Terms
拍動 pulsation beat, pulse, heartbeat
刺激伝導系 cardiac conduction system, impulse conducting system
動悸 palpitation pounding, throbbing
めまい giddiness, dizziness
アダムス‐ストークス発作 Adams‐Stokes attack
失神 syncope fainting, loss of consciousness
息切れ shortness of breath, SOB
聴診 auscultation listening to a person’s chest with a stethoscope
心電図 electrocardiogram, ECG/EKG
ホルター心電図 Holter electrocardiography
心エコー echocardiography
心臓カテーテル検査 cardiac catheterization(検査と治療の療法に適用)
抗不整脈薬 antiarrhythmic drug/agent
人工ペースメーカー artificial cardiac pacemaker
カテーテル・アブレーション catheter ablation
高頻度電気刺激法 high frequency electric stimulation

参考動画

Symptoms of Arrhythmias

参考資料

※参考資料にもとづいて医療英語・医療通訳の勉強のためにつくられた資料です。実際の治療や、検査のために、つくられた資料ではありません。病気・疾患になやまれた場合、きちんと病院で治療をうけましょう。