前回は、ホメオスタシスについてわかりやすくとらえるために水分補給を例にあげてお話ししました。例として水分補給をあげたのは、ホメオスタシスの重要な作用のひとつが、からだのなかの体液(body fluid)の量(volume)と組成(composition)を一定に保つことだからです。体液は、細胞内液(intracellular fluid)と、細胞外液(extracellular fluid)または間質液(interstitial fluid)にわかれます。前者はICF、後者はECFと略されて使われますので、おぼえておきましょう。ICFとECFには、酸素や栄養素、たんぱく質や電解質(イオン)などがとけていて、体内で重要な役割をはたしており、バランスをくずすと命が危険にさらされます。血管内をながれるECFが血漿(blood plasma)なのですから、ECFの組成バランスがくずれると、重篤な血管疾患を招くということがわかるでしょう。
ところで、ホメオスタシスが維持されるときには、ネガティブ・フィードバック(negative feedback)というシステムがつかわれます。なぜ、ネガティブといわれるのかというと、血圧(blood pressure)でみてみましょう。なんらかの原因・刺激によって血圧があがってしまった(elevated)状況をかんがえてみてください。ホメオスタシスからみると、これは一定の状態から血圧が上の方向へくずれてしまったということです。ホメオスタシスのためには、上にいってしまった血圧を下にむかわせるという「逆」の方向でくずれた状態をもとの一定の状態にもどさなくてはいけないのです。
このように、からだは常に一定の状態をくずそうという刺激にさらされています。ホメオスタシスを維持するためには、ネガティブ・フィードバックによってくずされた状態を検知する受容器(receptor)から、それを調節するための調節中枢(control center)へと情報がとどき、その状態を逆転させるようという指令が効果器(effector)へとどけられ、逆の方向の調節がおこなわれるのです。
さて、ネガティブ・フィードバックのところで出てきた「指令」ですが、神経(神経系)とホルモン(内分泌系 the endocrine system)によってとどけられます。このため、神経系と内分泌系は、ホメオスタシスの観点からはとてもたいせつな器官系(the organ system)となっています。このため、器官系ごとにまとめられた解剖学(anatomy)や生理学(physiology)の教科書は骨格系(the skeletal system)や筋系(the muscular system)をのぞけば、まず最初に神経系と内分泌系をとりあげるものがおおいようです。
Bozeman ScienceのPaul Andersen先生が神経系と内分泌系についてYouTubeにわかりやすい動画をのせているのでおすすめします。
参考資料
- 「トートラ人体の構造と機能」(丸善)
- 「しくみが見える体の図鑑」(エクスナレッジ)
- Bozeman Science