学習ノート – 心筋梗塞

学習ノートは病気・症状についての覚え書き。医療通訳として、病気・症状についてまなぶべきとかんじたものをひとつひとつ個人的にまとめたものです。でも、完成形ではありません。勉強していくなかで、修正する可能性や、追加すべきものがでてくる可能性がある、つねに進行形のノートです。

心筋梗塞 myocardial infarction, heart attack

心臓の冠動脈の内側がなんらかの原因でふさがれ、心筋に酸素が届かなくなり、心筋が壊死しておこる。虚血性疾患ではあっても、一過性で可逆的な狭心症とはちがい、もとに戻ることができない。

病因 etiology

動脈硬化がすすんで、冠動脈が完全につまってしまったり、血栓などの栓子がながれてきて冠動脈の内側をふさいだりして、その先に血管が流れなくなることで心筋が壊死してします。主に、冠動脈の粥腫内で出血がおこり、その部分が破綻して血栓ができ、血管をふさいでしまうことでおこる。

徴候と症状 signs and symptoms

突然の激しい胸前部の痛みではじまる。痛みは狭心症よりもはげしい。硝酸薬の効果はひくい。痛みは長くつづき、30分以上から数時間にもなる。痛みは大部分が胸の中央部だが、胸全体やみぞおちにもひろがる。左肩や左腕、首、下あご、右肩にまで痛みがひろがることもある。

吐き気や嘔吐、便意など上腹部の病気とまぎらわしい症状もあらわれる。そのほか、呼吸困難、意識障害などもあらわれることがある。心筋が壊死することで、血液が全身にまわらなくなり、ショック状態におちいることもある。

診察法 diagnostic procedures

心電図、心エコー、血液検査(赤沈、心筋逸脱酵素など)、冠動脈造影

治療法 treatment

冠動脈インターベンション(カテーテル治療、PCI)、冠動脈内血栓溶解療法(ICT)、冠動脈バイパス術(CABG)。

治療法の選択には、発作からどのくらいの時間がたっているかが重要となる。発作後6時間以内の治療が効果的といわれる。

英語 日本語 Lay Terms
心筋 myocardium heart muscle
冠動脈 coronary artery
動脈硬化 arteriosclerosis hardening of the arteries
狭窄 stenosis, constriction narrowing
閉塞 occlusion, obstruction blocking, clogging
壊死 necrosis death of tissue
一過性 transient temporary
虚血性疾患 ischemic disease
血栓 thrombus blood clot
栓子 embolus plug
粥腫 atheroma a buildup of deposits within the wall of an artery
みぞおち epigastric fossa the pit of the stomach
吐き気 nausea
嘔吐 emesis vomiting
呼吸困難 dyspnea difficult breathing
意識障害 disturbance of consciousness
血液検査 a blood test
心電図 electrocardiogram, ECG/EKG
心エコー echocardiography
赤沈 erythrocyte sedimentation rate, blood sedimentation rate, ESR
心筋逸脱酵素 cardiac enzyme, cardiac marker
冠動脈造影(図) coronary arteriography, CAG
冠動脈インターベンション percutaneous coronary intervention, PCI
冠動脈内血栓溶解療法 intracoronary thrombolysis, ICT
冠動脈バイパス術 coronary artery bypass graft, CABG

参考動画

Heart Attack / Myocardial Infarction

参考資料

※参考資料にもとづいて医療英語・医療通訳の勉強のためにつくられた資料です。実際の治療や、検査のために、つくられた資料ではありません。病気・疾患になやまれた場合、きちんと病院で治療をうけましょう。

学習ノート – 狭心症

学習ノートは病気・症状についての覚え書き。医療通訳として、病気・症状についてまなぶべきとかんじたものをひとつひとつ個人的にまとめたものです。でも、完成形ではありません。勉強していくなかで、修正する可能性や、追加すべきものがでてくる可能性がある、つねに進行形のノートです。

狭心症 angina pectoris

心臓の筋肉(心筋)への酸素が一時的にたりなくなっておこる病気。心筋へ酸素をはこぶ血液が流れる冠動脈がせまくなったために血液の量がへるためにおこる。運動をしているとき(労作時)や興奮したときに、心臓の酸素を必要とする量がふえて発症することがおおい。安静時にもおきるが、冠動脈の攣縮(発作的に動脈がけいれんして狭窄や閉塞をおこすこと)でおこるとみられる。

病因 etiology

冠動脈がせまくなる原因のひとつは動脈硬化。もう一つは一時的なけいれん(攣縮)で、夜間の安静時、とくに明け方におこることがおおい。

徴候と症状 signs and symptoms

胸痛がおこる。2分以上、10分以下続くことがおおい。痛みが15秒以内の指すように鋭いものはふつう狭心症ではないとされる。胸痛は、痛みというよりも、圧迫感や焼けるような感覚、しめつけられるような感覚として表現される(鈍い)。首・あご・歯・左腕・左肩へとひろがることがある。痛みが狭い範囲(直径3㎝未満)のときは、狭心症ではないことがおおい。
痛みのあるときに、脈をはかると、頻脈(100回/分以上)であることがおおい。

診察法 diagnostic procedures

心電図、心筋シンチグラフィ、非侵襲的壁運動の解析(心エコー)

治療法 treatment

薬物療法としては、硝酸薬、β遮断薬、Ca拮抗薬、抗血小板薬の投与がある。外科的治療法としては、狭窄部のバイパス手術、バルーン血管形成術などがある。

英語 日本語 Lay Terms
心筋 myocardium heart muscle
冠動脈 coronary artery
労作時 on exertion
安静時 at rest
攣縮 spasm twitching
動脈硬化 arteriosclerosis hardening of the arteries
狭窄 stenosis, constriction narrowing
閉塞 occlusion, obstruction blocking, clogging
頻脈 tachycardia a fast pulse
心電図 electrocardiogram, ECG/EKG
心筋シンチグラフィ myocardial scintigraphy
非侵襲的 non-invasive
壁運動 wall motion
硝酸薬 nitrovasodilator
β遮断薬 β-blocker
Ca拮抗薬 calcium channel blocker, CCB
抗血小板薬 antiplatelet drug, antiplatelet agent
バイパス手術 bypass surgery
バルーン血管形成術 balloon angioplasty

参考動画

Angina Pectoris & Atherosclerosis

参考資料

※参考資料にもとづいて医療英語・医療通訳の勉強のためにつくられた資料です。実際の治療や、検査のために、つくられた資料ではありません。病気・疾患になやまれた場合、きちんと病院で治療をうけましょう。

胸痛の原因となる疾患とは

5月の医療通訳実践トレーニングのテーマが「胸痛」ですので、ちょっと予習をしてみたいとおもいます。胸痛の原因となる疾患・症状はなんでしょうか。こういったときには医歯薬出版の「外来医マニュアル」をつかってしらべてみましょう。

「外来医マニュアル」は、現場の医師のためにつくられた実践むけの本です。症状によってうたがうべき病気や、診断にむけてふむべき手順などがかかれています。診断のながれを理解するうえで役立つ本だとおもいます。私がつかっているのは第2版ですが、第3版もでていますし、出版間隔をかんがえると、そろそろ第4版がでてもよさそうです。

それでは、今回は「外来医マニュアル」をもとに、原因としてうたがうべき疾患・症状を下にあげておきます。

心血管疾患 cardiovascular diseases

英語 日本語 Lay Terms
狭心症 angina pectoris, angina, AP
心筋梗塞 myocardial infarction, MI heart attack
心膜炎 pericarditis
不整脈 arrhythmia irregular pulse, irregular heartbeat
大動脈解離 aortic dissection
大動脈弁膜症 aortic valve disease
大動脈弁狭窄症 aortic valve stenosis, AS
大動脈弁逆流症 aortic valve regurgitation, AR
肥大型心筋症 hypertrophic cardiomyopathy, HCM
僧帽弁逸脱症 mitral valve prolapse
シンドロームX syndrome X
肺血栓塞栓症 pulmonary thromboembolism, PTE

肺・胸膜、縦隔疾患 diseases of lung/pleura, mediastinum

英語 日本語 Lay Terms
自然気胸 spontaneous pneumothorax
胸膜炎 pleurisy
縦隔炎 mediastinitis
縦隔気腫 pneumomediastinum, mediastinal emphysema

消化器疾患 gastrointestinal diseases

英語 日本語 Lay Terms
食道裂孔ヘルニア (esophageal) hiatal hernia
逆流性食道炎 reflux esophagitis
食道スパスム esophageal spasm
胃・十二指腸潰瘍 stomach ulcer, duodenal ulcer
胆道感染症 biliary tract infection
胆石発作 biliary colic
膵炎 pancreatitis

精神疾患 mental disorders

英語 日本語 Lay Terms
心臓神経症 cardiac neurosis, Da Costa’s syndrome
過換気症候群 hyperventilation syndrome

神経・筋・骨格疾患 neurological, muscular, skeletal disorders

英語 日本語 Lay Terms
肋間神経痛 intercostal neuralgia
帯状疱疹 herpes zoster, shingles
肋軟骨炎 costochondritis
頸椎症 cervical spondylosis, CS

※参考資料にもとづいて医療英語・医療通訳の勉強のためにつくられた資料です。実際の治療や、検査のために、つくられた資料ではありません。病気・疾患になやまれた場合、きちんと病院で治療をうけましょう。

第1回医療通訳実践トレーニングに出てきました(5)— Lay Terms

一般用語 lay termsをおぼえよう

トレーニングでは、ミニ・ロールプレイも行いました。そのなかで、一般の方がつかっていることば、いわゆるlay termがいくつか紹介されました。医療英語をまなぶと、どうしても専門用語からはいっていきがちですが、患者さんは一般の方がほとんどですので、専門用語をつかっても通じないことがおおいですからね。言いかえ paraphraseができるということは通訳をやるうえでとても重要です。

英語独特の表現に注意

英語独特の表現も紹介されました。擬音や比喩表現などは、英語と日本語ではちがいます。そういった点に注意し、英語独特の表現に日ごろから意識して耳を傾けるようにと指導されました。

下に、トレーニングで紹介されたlay termと英語独特の表現を、おぼえている限りあげておきます。

英語 日本語 Lay Termsまたは説明
membrane lining
thunderclap 頭を打たれたような 形容詞。直訳は雷鳴のような。痛みを表現するときにつかわれる
sinusitis 副鼻腔炎 sinus cold
the pill 経口避妊薬、ピル theと定冠詞をつけるとピルになる。丸薬としてのpillはa pillとかpillsで表現
gastroenteritis 胃腸炎 stomach flu
a hissing sound シューとした音 耳鳴りなどの音の近似表現例として
a screeching sound キーンとした音 耳鳴りなどの音の近似表現例として
a growling sound ゴーとして音 耳鳴りなどの音の近似表現例として
a cramp 差し込む痛み, けいれん、こむら返り 生理痛としてcrampsがつかわれる
a bout 発作 bouts of searing pain 焼けるような痛みの発作

第1回医療通訳実践トレーニングに出てきました(4)— 単語帳など

さて、前回はリサーチ力の重要性についてふれましたが、そのリサーチ力を発揮して調査し、疾患や症状などの定義を日本語でしっかりおさえることが大切だということも強調されました。日本語でおさえると説明されたのは、受講生がすべて日本人だったらだとおもいます。

定義をおぼえる

病気をしらべると、病因 etiology、症状/徴候 signs and symtoms、診断方法 diagnostic procedures、治療 treatmentの順番で定義づけられていると説明がありました。そして、これにそって、しっかりとしらべ、おぼえる必要があるとのことでした。そのしらべるというプロセスで、リサーチ力を発揮する必要があるということでした。

単語帳はつくっておしまいではない

単語帳 glossaryについては、つくって満足してしまうひとがおおいが、つくった単語帳は何度もつかっておぼえなくてはいけないと注意されました。人間は忘れる動物であって、忘れるのは当然なので、何度も繰り返し、おぼえる必要があるとの話でした。

単語帳をくり返し活用するために講師の方がおすすめしていたのが、Quizletというサービスです。ウェブでもありますし、スマートフォン向けのアプリもでています。エクセルでつくった単語帳は簡単に取り込むことができますし、アプリをつかうと、クイズ形式で単語帳内の単語をクイズとして出題してくれるそうです。私もさわったことくらいはあるのですが、本格的につかったことはありません。これからはつかっていこうとおもいます。

オープンクエスションとクローズドクエスションを取り違えない

医師が患者を問診するうえで、オープンクエスションとクローズドクエスションを通訳しまちがえてはいけないと強調されました。念のため、先にすすむ前に、オープンクエスションとクローズドクエスションについて説明しておきますね。

オープンクエスションは答えが限定されていない質問です。例えば、「今日はどうして病院に来たのですか」と質問すれば、それは、頭痛かもしれないですし、胃痛かもしれません。または、吐き気がひどくてきたのかもしれません。つまり答えがいろいろでてくる可能性がある質問です。一方、クローズドクエスションとは、「その痛みは激しいですか」といった形の質問で、基本的には、はい/いいえ Yes/Noのように選択肢があらかじめ決められていて、そのどちらかなのか、といった質問です。もちろん選択肢は2つだけではなく、複数ある場合もあります。ペイン・スケールなどがそうです。

医師は、いろいろな情報を患者から引き出そうとしますので、初期の段階ではしばしばオープンクエスションで患者を問診します。そこをクローズドクエスションに訳してしまうと、医師の意図する方向とちがいものに診察がなってしまうので、気をつけなくてはならないとのことでした。

通訳上の注意点としては、患者が症状を訴えたときに医師が「それは大変ですね」といったら、これもしっかりと訳さなければいけないと話していました。医師が患者との信頼関係を築くために言っていることなので、きちんと訳す必要があるとのことでした。