第1回医療通訳実践トレーニングに出てきました(4)— 単語帳など

さて、前回はリサーチ力の重要性についてふれましたが、そのリサーチ力を発揮して調査し、疾患や症状などの定義を日本語でしっかりおさえることが大切だということも強調されました。日本語でおさえると説明されたのは、受講生がすべて日本人だったらだとおもいます。

定義をおぼえる

病気をしらべると、病因 etiology、症状/徴候 signs and symtoms、診断方法 diagnostic procedures、治療 treatmentの順番で定義づけられていると説明がありました。そして、これにそって、しっかりとしらべ、おぼえる必要があるとのことでした。そのしらべるというプロセスで、リサーチ力を発揮する必要があるということでした。

単語帳はつくっておしまいではない

単語帳 glossaryについては、つくって満足してしまうひとがおおいが、つくった単語帳は何度もつかっておぼえなくてはいけないと注意されました。人間は忘れる動物であって、忘れるのは当然なので、何度も繰り返し、おぼえる必要があるとの話でした。

単語帳をくり返し活用するために講師の方がおすすめしていたのが、Quizletというサービスです。ウェブでもありますし、スマートフォン向けのアプリもでています。エクセルでつくった単語帳は簡単に取り込むことができますし、アプリをつかうと、クイズ形式で単語帳内の単語をクイズとして出題してくれるそうです。私もさわったことくらいはあるのですが、本格的につかったことはありません。これからはつかっていこうとおもいます。

オープンクエスションとクローズドクエスションを取り違えない

医師が患者を問診するうえで、オープンクエスションとクローズドクエスションを通訳しまちがえてはいけないと強調されました。念のため、先にすすむ前に、オープンクエスションとクローズドクエスションについて説明しておきますね。

オープンクエスションは答えが限定されていない質問です。例えば、「今日はどうして病院に来たのですか」と質問すれば、それは、頭痛かもしれないですし、胃痛かもしれません。または、吐き気がひどくてきたのかもしれません。つまり答えがいろいろでてくる可能性がある質問です。一方、クローズドクエスションとは、「その痛みは激しいですか」といった形の質問で、基本的には、はい/いいえ Yes/Noのように選択肢があらかじめ決められていて、そのどちらかなのか、といった質問です。もちろん選択肢は2つだけではなく、複数ある場合もあります。ペイン・スケールなどがそうです。

医師は、いろいろな情報を患者から引き出そうとしますので、初期の段階ではしばしばオープンクエスションで患者を問診します。そこをクローズドクエスションに訳してしまうと、医師の意図する方向とちがいものに診察がなってしまうので、気をつけなくてはならないとのことでした。

通訳上の注意点としては、患者が症状を訴えたときに医師が「それは大変ですね」といったら、これもしっかりと訳さなければいけないと話していました。医師が患者との信頼関係を築くために言っていることなので、きちんと訳す必要があるとのことでした。

第1回医療通訳実践トレーニングに出てきました(3)— メルクマニュアル、YouTube

取りあげられた単語をほぼカバーしましたので、トレーニングでどのようなことを教えられたかということにすこしふれてみましょう。

リサーチ力の重要性

医療通訳は、リサーチ力がいけないと指摘されていました。これは私自身が常々かんじていることで、その思いから「情報ソースはなるべく共有したい」を書いています。今回のトレーニングでも、どういったところから情報をあつめているのか、その情報ソースを共有することをうながしていました。

トレーニングのなかでは、有用な情報ソースのひとつとして、メルクマニュアルが取りあげられました。メルクマニュアルは、英語版日本語版があることから、2つの言語を比較するうえで便利だということも話していました。ちなみに、メルクマニュアルには家庭版もあり、こちらもそれぞれ英語版日本語版があります。

さらにYouTubeが情報ソースとしてあげられました。YouTubeについては、検索のやり方のコツについて説明していただきました。まずは、英語でしらべる場合、「病名 symptoms」を検索用語して入力すると一般むけにつくられている動画が多く引っかかってくるとのことでした。これは私も実際によくつかっています。Youtubeは本当にありがたいです。発音記号だけだとピンとこない単語の発音とかわかりますしね。もう一つ、これは私も知らなかったのですが「病名 usmle」といれると、専門的な講義の動画が出てくるとのことでした。ちなみに、USMLEはアメリカの医師国家試験です。いわゆる試験対策の動画がありがたいことに出まわっていて、医療通訳にとってはとても便利につかえるということでした。

ためしに、今回のトレーニングのテーマであったheadacheでしらべてみましょう。「headache symptoms」で検索したものがこれです。いろいろな頭痛の症状についての動画がでてきますね。「headache usmle」はこちらです。いかにも試験対策といったかんじの動画がたくさんでてきましたね。ちなみに知らない方のために伝えておくと、usmleと小文字で検索していますが、検索のときには大文字・小文字は基本的に無視されますからです。大文字でいれたとしても結果はかわりません。

第1回医療通訳実践トレーニングに出てきました(2)— 続・頭痛

前回はすべて単語をあげられませんでしたので追加します。前回は頭痛の原因となる疾患をまとめましたが、今回は頭痛に関連してあらわれる症状をまとめたものです。先日もいいましたとおり、これはスタート地点ですので、実際にはここから各症状を理解していく必要があります。英語をベースにまなびましたので、日本語やlay termについてはここにのせていても、今後の課題としてさらにしらべていく必要があるものもあります。

Headache associated symptoms 頭痛関連症状 – Constitutional symptoms 全身症状

英語 日本語 Lay Terms
emesis 嘔吐(症) vomiting
pyrexia 発熱 fever
lethargy 嗜眠、無気力 sleepiness
anorexia 食欲不振, 無食欲(症) loss of appetite
somnolence 傾眠 sleepiness

Headache associated symptoms 頭痛関連症状 – Sensory symptoms 感覚症状

英語 日本語 Lay Terms
dysesthesia 異常感覚, 錯感覚(刺激なし)
anesthesia/hypoesthesia 知覚麻痺・知覚脱失/感(知)覚鈍麻・感(知)覚減退 a reduced sense of touch or sensation, or a partial loss of sensitivity to sensory stimuli; numbness
paresthesia 感覚異常(症)(刺激あり) tingling in the BODY PART; a distorted sensation; a pricking, burning, tingling or numbing sensation; pins and needles

Headache associated symptoms 頭痛関連症状 – Visual symptoms 視覚症状

英語 日本語 Lay Terms
diplopia 複視 double vision
scotoma (視野)暗点 a blind spot
phosphene 閃光感覚 the experience of seeing light without light actually entering the eye.
ocular pain 目の痛み
epiphora 流涙症 an overflow of tears onto the face

Headache associated symptoms 頭痛関連症状 – Motor symptoms 運動症状

英語 日本語 Lay Terms
paralysis 麻痺
tremor 振戦, ふるえ shakiness
ataxia 運動失調 unsteady movement
nuchal rigidity 項(部)硬直 neck stiffness, stiff neck
dysarthria 構音障害 slurred speech; difficulty speaking caused by problems controlling the muscles used in speech

Headache associated symptoms 頭痛関連症状 – Migraine aura related symptoms 片頭痛前兆関連症状

英語 日本語 Lay Terms
photophobia 羞(しゅう)明, まぶしがり(症) hypersensitivity to light
phonophobia/sonophobia 音声恐怖(症) hypersensitivity to sounds
osmophobia 臭気恐怖(症) a fear of, aversion to, or psychological hypersensitivity to odors

Headache associated symptoms 頭痛関連症状 – Miscellaneous その他

英語 日本語 Lay Terms
tinnitus 耳鳴り(みみなり) ringing in the ears; ringing/buzzing/roaring/clicking/hissing
vertigo 回転性めまい dizziness with a sensation of spinning
vesicular lesion 小水疱性病変 blisters
ptosis (眼瞼)下垂症 a drooping of the upper eyelid
miosis 縮瞳, 瞳孔縮小 excessive contraction of the pupil of the eye
rhinorrhea 鼻漏, 鼻汁 a runny nose
lacrimation 流涙 excessive tearing

参考資料

第1回医療通訳実践トレーニングに出てきました(1)— 頭痛

一般社団法人日本医療通訳協会主催の「医療通訳実践トレーニング」の第1回に出てきました。いろいろとまなぶべきことはありましたが、まずは今回の課題(headache)で取りあげられた病名・症状を2回にわたってあげておきます。ここでいうLay Termsとは専門用語を一般的なことばでおきかえたものです。layman’s termsとか、Terms in lay languageといわれることもあります。専門家である医師と一般人である患者をつなぐうえでは、こういったことなる言葉づかい(registerといわれます)をこなせることが重要です。

なお、病名をおぼえるうえでは、単に英語と日本語で記憶するだけでなく、それぞれの病気の内容を理解することが重要です。今回の授業では、病気をそれぞれ(1)etiology 病因(2)signs and symptoms 徴候と症状(3)diagnostic procedures 診断手法(4)treatment 治療の各項目で整理しておぼえることの重要性も指摘されました。

まずは、手はじめにざっとふれられたことばだけあげていきます。これが完成形とかいうつもりはまったくなくて、自分のなかでもこれであっているのかな、と疑問におもいながら、今後の課題にしているものもあります。

Primary headache syndrome 原発性頭痛症候群

英語 日本語 Lay Terms
migraine 片頭痛
tension headache 緊張型頭痛
cluster headache 群発頭痛

Secondary causes 続発性病因 – CNS infection 中枢神経系感染(症)

英語 日本語 Lay Terms
meningitis 髄膜炎 infection or irritation around the brain
encephalitis 脳炎
cerebral abscess/tumor 脳膿瘍/脳腫瘍

Secondary causes 続発性病因 – non-CNS infection 非中枢神経系感染(症)

英語 日本語 Lay Terms
sinusitis 副鼻腔炎
fever 発熱
herpes zoster: “Ramsay Hunt syndrome” 帯状疱疹: ラムゼイ・ハント症候群
ear infections 耳感染症
dental infections 歯性感染症

Secondary causes 続発性病因 – Vascular 血管系

英語 日本語 Lay Terms
subarachnoid hemorrhage (SAH) くも膜下出血
subdural hematoma 硬膜下血腫 hematoma: a bruise; bleeding into the body tissue around a blood vessel (if at the skin surface, it looks like a bruise)
epidural hematoma 硬膜外血腫
intracerebral hemorrhage 脳内出血
temporal arteritis (giant cell arteritis) 側頭動脈炎(巨細胞動脈炎)
carotid or vertebral artery dissection 頚動脈解離/椎骨動脈解離

Secondary causes 続発性病因 – Ophthalmologic 眼科系

英語 日本語 Lay Terms
glaucoma 緑内障
iritis 虹彩炎
optic neuritis 視神経炎

Secondary causes 続発性病因 – Miscellaneous その他

英語 日本語 Lay Terms
hypoglycemia 低血糖(症) lower blod sugar
trigeminal neuralgia 三叉神経痛
withdrawal from caffeine and chronic analgesics (rebound headache) カフェイン・鎮痛薬の禁断症状(薬物乱用頭痛)
preeclampsia 子癇前症/妊娠高血圧症候群(妊娠高血圧腎症)
pseudotumor cerebri 偽(性)脳腫瘍
mass lesion 腫瘤性病変
hypertension 高血圧(症) high blood pressure

頭痛の病名・症状は、次回につづきます。

参考資料

語の構成要素 X / Y / Z

いよいよ語の構成要素シリーズの最後です。XYZはすくないので、まとめてやります。ちなみにWはありませんでした。歴史的にあたらしい文字だからでしょうね。-yはひろくつかわれていますが、つよい意味をもっていないのであえておぼえるほどでもないでしょうけれどものせておきます。AからZまで長かったようで、あっという間でしたね。でも、全部をおぼえるというのはさすがにしんどいでしょうね。

構成要素 語源・意味 例語
xanth(o)- ギ「(異常に)黄色」 xanthoma: 黄色腫.
xen(o)- ギ「客」「外国人」「外来の(もの)」「異種の」 xenograft: 異種移植片.
xer(o)- ギ「乾燥した」 xerostomia: 口内乾燥症、ドライマウス.
-y ギ→ラ「状態」「性質」「行為」 surgery: 外科; 外科手術.
zo(o)- ギ「動物(界)」「運動性」 zoology: 動物学.
zym(o)- ギ「酵母」「酵素」「発酵」 enzyme: 酵素. lysozyme: リゾチーム.

参考資料