九州・熊本地震被災者への医療支援をデジタルで

九州・熊本地震の被災者を支援する目的で、デジタルの分野でもいろいろな動きがあります。その中には、医療関連アプリで無償提供されているものがあります。

なんといっても、書籍で長年家庭の定番だった保健同人社の「家庭の医学」のiPhoneアプリ版(5月31日まで)。いつもは1,900円で販売されています。なかなか手が出にくい価格帯ですけど、今回の無償提供で被災者にとっては手が出やすくなり、役に立つだろうとおもいます。

Yakusokuの「薬速2016」も支援目的で無償提供中(通常価格2,800円)ですが(無償提供期限についてのアナウンスメントはないようです)、こちらはプロフェッショナル向け。基本的には、薬剤師が支援に現地入りしたときにつかえるといったイメージなんでしょうか。

Excite Japanの「寝たまんまヨガ 簡単瞑想」のiOSアプリはいつもだったらアプリ内課金となるコンテンツのうち、「Healing & Recovery」を無償提供しています。被災地の方たちのストレスは相当なものでしょうから、健康という面からも、こういったアプリは役に立ちそうですね。

アプリから離れると、看護の科学社は「英語で学ぶ災害看護 基礎とコミュニケーション」のPDF版を期間限定(6月末日まで)で無料公開しています。外国人の被災者は、異国の地での被災はとても心細いでしょうから、こういった支援が役に立てばいいですね。

また、医療分野とは直接関係ありませんが、インクリメントPはAndroidの地図ナビアプリ「MapFan 2015」を期間限定(5月18日まで)で無償提供(通常価格3,888円)しています。また、iOS版となる「MapFan+」はもともと無料アプリでオフライン地図をアプリ内課金で購入するのですが、期間限定(同日まで)で九州・沖縄地方のオフライン地図が無償提供されています。医療ボランティアの方たちにとってはべんりなのではないでしょうか。

Google検索でクオーテーションマークをつかう

自分が医療英語・医療通訳をまなび、それをこういったブログなどで発信していくなかで、なるべく情報ソースは明かしていきたいとかんがえています。まなびというものは、基本的に切磋琢磨することで積みかさなっていくものだとおもいます。ですので、自分もいろいろなことを他の方からまなびたいですし、自分のまなんだことや方法をつたえることで、他の方のまなびのお手伝いをできればとかんがえています。

とはいえ、いろいろとあちこち調べて、いろいろとメモ書きをした自分のノートをみていると「あれっ、これどこでみつけたんだっけ?」とおもうことがすくなくありません。たとえば、自分のノートに、こんなことが書かれていました。

「障害(disorder): 機能の混乱もしくは異常」

どこで、この定義をみつけたのか、まったくおぼえていません。

「Wikipediaだったかな」などとおもいながら、こんなときは、インターネット時代の情報ソースその1、Googleです。ググってみると、このページが引っかかりました。全然おぼえがありません。こまったものです。でも、ウェブページを読むと「障害(disorder)」とあり、その説明として、ズバリ「機能の混乱もしくは異常のこと」とあります。おぼえてないんですよね。同じ情報ソースをつかっているのか、それとも、ここが情報ソースだったのか。

ところで、こういった一文をしらべたいときは、クオーテーションマーク(”)をつかいましょうね。「機能の混乱もしくは異常」という文を一かたまりとしらべたいときは、こんな風にクオーテーションマークでかこむんです。しっている人はしっているのですが、しらない人もけっこういるようなので、情報ソースその2ということでおつたえします。

クオーテーションマークでかこむのと、かこまないのと、そのちがいはなにか、上の例にそって説明します。かこんだ場合は「機能の混乱もしくは異常」という文が一かたまりでのっているウェブページをさがしてくれるんです。かこまない場合は、「機能」とか「混乱」、「異常」なんて言葉が、バラバラに持っているウェブページも検索結果にでてくるんです。

日本語は助詞でくっついているんでわかりづらいかもしれませんね。英語でみてみましょう。たとえば、「development disorder」(発達障害)という言葉を検索してみます。Googleでクオーテーションマークでかこんで検索すると、「development disorder」という言葉のでているウェブページを探していることがわかります。一方、かこまないで検索をすると、developmentとdisorderの2つの言葉がバラバラにのっているウェブページも検索結果にでてきます。ですので、どうしても「development disorder」(発達障害)という言葉をしらべたければ、クオーテーションマークでかこむほうがべんりです。

しっている人にしてみれば、なんてことない話なんですけど、しらなかった方は便利ですから、ぜひおためしあれ。

語の構成要素 QとR

Qからはじまる構成要素は誰しも予想することでしょうが、とてもすくないです。といっても、quadr(i/u)-は重要です。Rからはじまるものもすくないですね。腎臓を意味するren(i/o)-は必須ですし、語源がかさなる-rrhage, -rrhagia, -rrheaあたりもとても大切ですね。QもRもラテン語由来の構成要素がおおいことが目立ちます。

構成要素 語源・意味 例語
quadr(i/u)- ラ「4」「2乗」 quadriceps: 四頭筋
quint(i)- ラ「第5の」「5」 quintan fever: 五日熱.
rachi(o)-, rhachi(o)- ギ「脊柱」 rachial: 脊椎の. rachialgia: 背痛、脊椎痛. rachidian: 脊椎の.
radi(o)- ラ「放射」「輻射」「半径」「橈骨」「放射性(能)」「ラジウム」「無線」 radiowave: 電波.
re- ラ「繰り返し」「後ろの、後ろに」 relapse: 再発、ぶり返し.
rect(o)- ラ「直腸(rectum)」 rectal: 直腸の.
ren(i/o)- ラ「腎(臓)」 renal: 腎臓の.
-resection ラ「切除(術)」 electroresection: 電気切除(法).
reticul(i/o)- ラ「網状のもの」「網状でそして…な」 reticulocyte: 網(状)赤血球
retin(o)- ラ「網膜(retina)」 retinopathy: 網膜症, 網膜障害(網膜の非炎症性疾患の総称).
retro- ラ「さかのぼって」「再びもとへ」「後方へ」「逆に」「後ろにある」 retroversion: 後傾. retroverted: adj. 後傾した.
rhabd(o)- ギ「棒状(構造)」 rhabdomyolysis: 横紋筋融解(症).
rhin(o)- ギ「鼻」「鼻腔」 rhinoceros: サイ. rhinoplasty: 鼻形成術, 鼻形成.
rhod(o)- ギ「バラ」「バラ色(赤色)」 rhodophyte: 紅藻, 紅藻類, 紅色植物.
rhythm(o)- ギ→ラ「リズム」「周期性」 arrhythmia: 不整脈.
-rrhage, -rrhagia ギ「噴出」 hemorrhage: (大)出血.
-rrhaphy ギ「縫合(術)(surgical suturing)」 cardiorrhaphy: 心筋[臓]縫合(術)
-rrhea (米), -rrhoea (英) ギ「流出」「放出」「排出」 galactorrhea:乳汁漏出(症)、溢乳. diarrhea: 下痢.
-rrhexis ギ「破裂」「断裂」 hysterorrhexis: 子宮破裂.
rubr(o)- ラ「赤核」(中脳の部位) rubrospinal: 赤核脊髄の.

参考資料

語の構成要素 P-2

前回もいいましたとおり、Pからはじまる構成要素はおおいです。スペルが似通ってたりしてあたまが混乱しそうな単語が並んでいることも特徴です。-phagiaと-phagiaにはすでにふれましたが、-ptosis(下垂)と-ptysis(吐くこと)も区別するには苦労しそうです。pre-(前)とpost-(後)などは、おおくのひとがしっているでしょうけれども、対にしておぼえるといいでしょうね。

構成要素 語源・意味 例語
phren(i/o)-, phrenic(o)- ギ「精神」「心」「横隔膜」「横隔神経」 phrenic nerve: 横隔神経. schizophrenia: 統合失調症. diaphragm: 1.横隔膜 2.隔膜
-phylaxis ギ「防御」「抵抗」 anaphylaxis: 過敏症(性), アナフィラキシー.
piri- ラ「洋ナシ」 piriformis: 梨状筋.
-plasia ギ「変化」「形成」「成長」「発達」 achondroplasia: 軟骨形成不全(症).
-plasty ギ「形成外科」「形成(術)」 rhinoplasty: 鼻形成術, 鼻形成.
pleg(o)-, -plegia ギ「麻痺(paralysis)」 paraplegia: 対麻痺
pleio-, pleo-, plio- ギ「さらに」 pleomorphism: 複数単形相、多形現象、多態性、多形態性、多形性.
pleur(o)- ギ→ラ「体側」「胸膜(pleura)」「肋骨」 pleurogenous/pleurogenic: 胸膜由来の、組織[体]のわきに生じる
-plexy ギ「卒中」「発作」 cataplexy: 脱力発作
-pnea, -pnoea ギ「呼吸」 apnea: 無呼吸.
pneum(o)-, pneumat(o)- ギ「気体」「肺」「呼吸」「肺炎」「空気」 pneumonocyte: 肺胞細胞. pneumonia: 肺炎.
pneumon(o)-, ギ「肺」 pneumonectomy: 肺切除(術).
pod(o)-, -pod-, -pod(a/e), -pus ギ「足」「足を持つ」 podiatry: 足病学,足病治療.
-poiesis ギ「形成」「生成」 hematopoiesis: 血球新生、造血.
poli(o)- ギ「灰白質」 poliomyelitis: 灰白髄炎, 脊髄灰白質炎, 灰白脊髄炎、ポリオ.
poly- ギ「多くの」「複」 polymyositis: 多発(性)筋炎.
por(o)- ギ「孔(pore)」 osteoporosis: 骨粗しょう症
porphyr(o)- ギ「紫色」 porphyroblast: 斑状変晶.
post- ラ「後の」「次の」「後ろの」⇔ante-, pre- postoperation: 手術後. postmortem: 死後.
poster(o)- ラ「後方の」「背部の」「尾部の」 posteriad: adv. 後方に向かって
pre- ラ「あらかじめ」「以前の」「…の前部にある」 prematurity: 1.早熟 2.早産.
presby(o)- ギ「老年」 presbyopia: (老人性)遠視、老眼.
prim(a/i)- ラ「もっとも重要な」「第一の」 primary: 一次(性)、初期、原発(性)
pro- ギ「前(へ)」「前…」 procephalic: 前頭部の.
proct(i/o)- ギ「肛門」「直腸」 proctology: 直腸肛門病学. c.f. colorectal surgery
prosop(o)- ギ「顔面」「人物」 prosopagnosia: 失顔症.
prostat(o)- ギ「前立腺」 prostatectomy: 前立腺切除(術).
prot(o)- ギ「第一」「主要な」「原始的」「最初の」 protoneuron: 原神経細胞; プロトニューロン
prote(o)-, protein(o)- ギ→独仏「たんぱく質」 protogenic: adj. たんぱく質生成の.
proxim(o)- ラ「近位」 proximoataxia: 近位運動失調.
pseud(o)- ギ「偽りの」「仮の」「擬似の」 pseudocode: 擬似コード
psor(o)- ギ「かゆみ」 psoriasis: 乾せん(癬).
psych(e/o)- ギ「霊魂」「精神」「心理」 psychology: 心理学. psychiatry: 精神医学、精神病学.
pteryg(o)- ギ「翼」「翅」「鰭」「翼状突起と…の」 lateral pterygoid plate: 翼状突起外側板.
-ptosis ギ「下垂(症)」 apoptosis: アポプトーシス, gastroptosis: 胃下垂.
-ptysis ギ「唾を吐くこと」「吐出」「喀出」 hemoptysis: 喀血.
pulmo-, pulmon(i/o)- ラ「肺」「肺と…の」 pulmonary: adj. 肺の
pyel(o)- ギ「骨盤」「腎盂」 pyelonephritis: 腎盂腎炎
py(o)- ギ「膿(pus)」 pyometra: 子宮蓄膿症.
pyr(o)- ギ「火」「熱」「熱作用による」 pyrolagnia: 火炎性愛, 火炎嗜好症.
pyret(o)- ギ「(発)熱」 antipyretic: 1.解(下)熱(性、作用)2.解(下)熱薬.

参考資料

語の構成要素 P-1

Pからはじまる構成要素はおおいですねぇ。Aからはじまる構成要素のほかにこれだけおおいのはありません。ひとつには、ギリシャ語由来とラテン語由来がどちらもおおいということなんでしょう。-paresisや-pathy、-peniaやphilia、-phagia、-phasiaなど、かならずしも接尾語ではないのですが、語のおわりつかわわれ、病名をあらわすものがおおいのが特徴です。-phagiaと-phasiaは日本人にとって発音を区別するのがとてもむつかしいです。どちらも「口」に関係した意味なので、意味のうえでも混乱しやすいというのもありますね。-phagiaは「食べること」、-phagiaは「話すこと」を意味します。ご注意を。

構成要素 語源・意味 例語
pachy- ギ「厚い」 pachydermoperiostosis: 肥厚性皮膚骨膜症 [PDP]
palpebr- ラ「まぶた」 palpebra: まぶた、眼瞼.
pan-, pant(o)- ギ「全…」「総…」「汎…」 panophobia: 汎恐怖症. panopticon: パノプティコン(円形の施設、監獄など).
pancreat(o)- ギ「膵(臓)」 pancreatalgia: 膵臓痛.
papill(-) ラ「乳頭(状突起)」「乳頭(状)の」「乳頭腫(性)の」 papillitis: 乳頭炎.
papul(o)- ラ「丘疹(pupula)」「丘疹と…の」 papulation: 丘疹形成.
par(a)-, hの前ではpar- ギ「副次的」「異常」「疑似」 parabulia: 意欲錯誤.
-paresis ギ「不全麻痺」c.f. paralysis hemiparesis: 不全片麻痺
-pareunia ギ「性交」 apareunia: 性交不能(症). dyspareunia: 性交疼痛(症).
-partum ラ「分娩」 peripartum: adj. adv. 分娩前後の, 周産期の.
parv(i/o)- ラ「小さい」 parvovirus: パルボウイルス.
patell(o)- ラ「膝蓋」「ひざがしら」「膝蓋骨」 patelliform: adj. 小皿(小盤)状の, 膝蓋状の.
path(o)- ギ「病気」 pathology: 病理学.
-pathy ギ「病気」「療法」 sociopathy: 社会病質. neuropathy: 神経障害; ニューロパチー; ニューロパシー; 神経症; 神経疾患; 神経病質; 神経病.
pauci- ラ「少数」「少量」 pauci-immune(このまま使われる): 寡免疫
ped(o)-, paed(o)-(英) ギ「こども」「幼年時代」 pedagogy: 教育学, 教授法, 教育.
ped(i/o)-, ラ「足」 pedoscope: ピドスコープ
pelv(i/o)- ラ「骨盤」「骨盤と…の」 pelvis: 骨盤
-penia ギ「…の不足[欠乏]」 osteopenia: 骨減少(症)、オステオペニア.
peni-, peno-, peo- ギ「陰茎」 peotomy: 陰茎切断術
-pepsia ギ「消化(管)」 dyspepsia: 消化不良(症)、消化障害.
per- ラ「…を通して」「完全に、非常に」「 percolate: 浸出させる, パーコレートする
peri- ギ「近い」「まわり[周囲]の」 periodontal: 歯周の, 歯周組織の, 歯周部の
-pexy ギ「固定」 nephropexy: 腎固定(術).
phac(o)-, phak(o)- ギ「レンズ(型の)」 phacolysis: 水晶体融解. phacometer: ファコメータ
-phagia, -phagy ギ「食欲」「食べること」「貪り食うこと」 sarcophagia: 肉食. anthropophagy: 人食い(の風習).
-phag(o)- ギ「食う」「食細胞」 phagocyte: 食細胞
phall(o)- ギ「男根(phallus)」 aphallia: 無陰茎症.
pharmac(o)- ギ「薬」 pharmacology: 薬理学; 薬(物)学
pharyng(o)- ギ「咽頭」「のど」 pharyngitis: 咽頭炎. pharyngoscopy: 咽頭鏡検査(法).
-phasia ギ「言語」「言語不全」 aphasia: 失語(症).
phil(o)- ギ「愛する」「…に親和的」「…びいき」⇔mis- philanthropist: 博愛主義者
-philia ギ「…の傾向」「…の病的愛好」 hemophilia: 血友病.
phleb(o)- ギ「静脈」 phlebography: 静脈造影(撮影)(法). phlebotomy: 静脈切開、しゃ(瀉)血.
-phobia ギ「恐怖(症)」 arachnophobia: クモ恐怖症.
phon(o)- ギ「音」「声」「言語」 phonograph: 蓄音機; フォノグラフ. symphony: 交響曲,シンフォニー.
-phore ギ「支えるもの」「運ぶもの」 craniophore: 頭蓋支持器.
-phoresis ギ「伝達」 diaphoresis: (特に人為的な多量の)発汗, 発汗療法.
phos- ギ「光」(古い言い方で最近はまれ) phosphene: 閃光視, 閃光感覚.
phot(o)- ギ「光」「写真」「光電」「光化学」「光子」 photopathy: 光線障害

参考資料