vapeって何?

今月の頭、ニュースのヘッドラインをvapeと言う言葉が踊りました(例えば、こちら)。そんな言葉知らなかったので、英和辞典を何冊か見てみました。…載っていない。英英辞典もみてみました。…やっぱり出ていない。実はヘッドラインだけを見て知らない単語を調べただけだったので、改めて記事を探して読んでみました。機内使用を禁じる記事でした。文脈を読むと、電子たばこ(e-cigarette)を吸うという動詞としてvapeを使うということが分かりました。

こんな時は、Urban Dictionaryの出番です。確認すると、なるほど出ています。成分を気化させて(vaporize)して、その気化物vaporを吸うところから、vapeという言葉がでてきたようです。Urban Dictionaryにvapeが登録されたのは2009年1月。もう結構経ってるんですね。電子たばこをvaporizerともいうそうです。なかなか面白いですね。

こんな話を、twitterでつぶやいたら、「じゃフマキラーのベープももしかしてVapeなのか」という質問が入りました。調べたところ、残念ながらフマキラーのウェブサイトでは見つけることが出来なかったのですが、「にほんごひろば」というウェブサイトに、フマキラーから送られてきたという回答がでていました。こちらもvaporizeから取っているんですね。企業人ってのはいろいろ考えるものです。

好奇心旺盛なフォロワーはそれにとどまらず、「ヴィックス ヴェポラッブも同じ様な言葉なのか」と畳みかけるように訊いてきました。改めて調べると、命名についての直接的な説明は見つからなかったのですが、ヴィックスの社史にそのことを伺わせることが書かれていました。

“The salve’s ingredients include menthol and a little-known Japanese ingredient. When the ointment is rubbed onto a person’s chest, body heat vaporizes the menthol, releasing soothing, medicated vapors for hours.”

ヴィックス ヴェポラッブってVapoRubのカタカナ表記なので、最後は「ブ」なんですね。調べるまで「プ」だと思ってました。そう思っていた人は多いのではないでしょうか。フォロワーの方もそうでした。なかなか、面白いですね。

電子たばこを吸うvapeからVapoRubまで話が広がってしまいました。商品やブランドの名前を調べていくと、企業人のいろいろな考えが反映されて面白いですね。マツダの英語名Mazdaとか日産のダットサンDatsunとか、スジャータとか英語の話題からはずれますが調べると実に興味深いですよ。

語の構成要素を理解することはやっぱり大事

医療英単語を学び、ボキャブラリを増やしていくのには、接頭辞(prefix)や語根(root)、連結形(combining form)、接頭辞(suffix)といった語の構成要素を抑えていくとが重要です。医療英単語については、ギリシャ語とラテン語由来の語の構成要素の素直な組み合わせである場合が少なくないからです。例えば、hepatitis(肝炎)という単語を取り上げてみましょう。hepatitisは、hepat-と-itisという2つの構成要素に分解できます。hapatは、ギリシャ語由来の「肝臓」を意味する連結形です。itisは「炎症」を意味するギリシャ語由来の接尾辞です。itisはこのほか「…による病気」や「…狂」「…中毒」といった意味があります。

このように、医療英単語は語の構成要素の素直な組み合わせであることが多いので、語の構成要素を覚えることは単語力を鍛える近道になります。もう一つ、例をみてみましょう。otorhinolaryngology(耳鼻咽喉科または耳鼻咽喉科)です。この単語は、oto-、rhino-、laryngo-、-logyに分解できます。oto-は「耳」を表すギリシャ語由来の連結形、rhino-は「鼻」「鼻腔」を意味し、laryngo-は「咽頭(larynx)」の意味します。どちらもギリシャ語由来の連結形です。そして-logyは「学問」を意味するほか、「言葉」「語」「論」を意味を持つギリシャ語由来の接尾辞です。ちなみに、この-logyは病院の各診療科の「科」にあたる部分に使われます。こう分解してみると、otorhinolaryngologyという長ったらしい言葉も頭にすっと入ってくるのではないでしょうか。

ギリシャ語由来、ラテン語由来とわざわざ言っているのは、同じ意味を持つ構成要素でギリシャ語由来のものとラテン語由来のものがあるからです。代表的なものが数字を表す接頭辞です。最高までに数字の1〜10を表す接頭辞の代表的なものを下に記します(正確には用法によって同じ数字にラテン語由来のものの中にも、ギリシャ語由来のものの中にも複数の形があります)。

ラテン語由来
uni-、bi-、tri-、quadr-、quint-、sex-、sep-、oct-、nov、den-
ギリシャ語由来
mono-、di-、tri-、tetra-、penta-、hexa-、hepta-、octa-、ennea-、deca-

ギリシャ語由来の構成要素はギリシャ語由来のものだけで、ラテン語由来についてもラテン語由来の構成要素だけで、言葉を作る傾向があるようです。とはいっても、人間が作る単語ですから、そこら辺は例外もありますし、片方になければ、もう一方から取ってきたりします。ですので、必ずしも一つの単語がすべてギリシャ語由来の語要素だけから作られているとか、ラテン語由来の語要素だけから作られているとは決まってはいません。

次回からは、医療英単語を覚えるのに便利な構成要素を毎日少しずつa〜zまで順番に紹介しようと思います。ご自分構成要素を調べるには、研究社の「リーダーズ英和辞典」が便利です。ここでも、リーダーズ英和辞典は大いに参考にしています。また、Wikipediaにもとても参考になるページがあります。

単語表を作るときは1語に1語に注釈なしは無理がある (2)

さて、前回は「NANDA-I看護診断 定義と分類」(医学書院刊)から部位に関する用語のリストを載せましたね。そして、このリストには変な点があると言いました。そこでまずは、それぞれの用語の品詞を示したいと思います。

auditory (形容詞) 聴覚
bladder (名詞) 膀胱
bowel (名詞) 腸
cardiac (形容詞) 心臓
cardiopulmonary (形容詞) 心肺
cerebral (形容詞) 脳
gastrointestinal (形容詞) 消化器
gustatory (形容詞) 味覚
intracranial (形容詞) 頭蓋内
kinesthetic (形容詞) 運動覚
mucous membranes (名詞) 粘膜
neurovascular (形容詞) 神経血管性
oral (形容詞) 口腔
olfactory (形容詞) 嗅覚
peripheral neurovascular (形容詞) 末梢性神経血管性
peripheral vascular (形容詞) 末梢血管
renal (形容詞) 泌尿器
skin (名詞) 皮膚
tactile (形容詞) 触覚
tissue (名詞) 組織
verbal (形容詞) 言語
visual (形容詞) 視覚
urinary (形容詞) 尿

ここで注目してほしいのは、ほぼすべて形容詞だと言うことです。その一方で、和訳についてはほぼ日本語としては名詞になっています。もちろん、中心となる意味だけを取り上げたのだから名詞になっても問題はないだろうという議論は成り立つと思います。また、英語が得意な人から見れば、中心的な意味が理解できるし、英用語の方についてはみれば使い方は分かるから、これで問題はないという思うかもしれません。さらに、名詞についても、bladder infection 膀胱感染症やbowel movement 便通、tissue injury組織損傷といった形容詞的に使えるではないかという指摘もあるでしょう。

ここで次の文章について考えてください。
「彼は脳に損傷を負った。」

どうでしょうか。もし、この用語集だけを渡され、訳すように指示したら、次のような文が帰ってくる可能性があるのではないでしょうか。
“He sustained an injury to his cerebral.”

これをみて、笑う人はいるかもしれません。「確かにこの用語だけを使えと言われたらそうかもしれないけど、現実には自分が英訳をすれば、cerebralは形容詞だと言うのは明かだし、そもそもbrainという単語は誰でも知っている」と。

ところが、現実に医療英語の用語集を作っていくとその膨大な量の中には、品詞が簡単にはわからない単語がでてきます。さらに、グループで用語集をシェアしていると、グループ内にはそれほど英語のレベルが高くない人もいるのです。

さらにいえば、用語集が拘束性を持つと、過ちが定着することもあるのです。「NANDA-I 看護診断/定義と分類」の用語リストはそれほど拘束力がないかもしれません。ですが、拘束性のある用語集がある分野もあります。たとえば、製薬業界では、拘束性を持つ用語集が1語1語対応、注釈なしで存在します。そのため、製薬業界では明かな文法的間違いが生じて、それが定着してしまっています。製薬の世界で英訳をするためには、まず、その過ちを受け入れるということを学ばなければいけないのです。

製薬業界に進むためには、現実を受け入れる覚悟をしなくてはいけませんが、自分が医療用語集を作るのであったら、こういった過ちを最初から犯す必要はないでしょう。製薬業界は正式な文書を役所に提出し、その書類が(文法的な過ちがあっても)一度通ってしまったら、それが前例になります。実は英語を使ってはいても、とても内向きの作業なのです。もし、自分が使う医療用語集が外国人患者のためなど、直接外国人に伝えるためのものであるならば、それに併せて、用語集を作るべきでしょう。その時はぜひ、品詞・例文なども交えて、きちんと使えるようにした方がいいと思います。

単語表を作るときは1語に1語に注釈なしは無理がある (1)

医療英語を勉強する時に自分で単語帳を作っている人もいるでしょう。また、自分たちの学習グループや病院、会社で作る方もいるでしょう。そういった単語帳はなるべく簡潔に作りたいと誰しも思うでしょうね。もっともだと思います。特に仕事で使うには効率的に使える単語帳が必要ですからね。

ただ、気をつけてほしいのは、何の注釈もなしに単純に英語と日本語を並べるのは、辞めた方がいいと思います。実際に単語を使って文を作る時には、その単語が名詞なのか、形容詞なのか、動詞なのかということが大切になります。あまりにもシンプルに単語帳を作ってしまうと混乱が生じることがあります。

ちょっした例を見て、何が問題なのか見てみましょう。 以下に並べたのは「NANDA-I看護診断 定義と分類」(医学書院刊)の「部位」に列挙されている医療用語です。1語の英単語に1語の和訳が当てられています。このリストには、変な点があることに気がつきますか。ヒントはすべて名詞の形で日本語に訳出されているということです。

auditory 聴覚
bladder 膀胱
bowel 腸
cardiac 心臓
cardiopulmonary 心肺
cerebral 脳
gastrointestinal 消化器
gustatory 味覚
intracranial 頭蓋内
kinesthetic 運動覚
mucous membranes 粘膜
neurovascular 神経血管性
oral 口腔
olfactory 嗅覚
peripheral neurovascular 末梢性神経血管性
peripheral vascular 末梢血管
renal 泌尿器
skin 皮膚
tactile 触覚
tissue 組織
verbal 言語
visual 視覚
urinary 尿

次回は、このリストの何が問題かを観ていきましょう。

病名とか症状って、可算名詞、それとも不可算名詞? (3)

前回みたBBCのサイトでは、一般的な病名については通常、不可算名詞となると説明しています。ただし、例外があるといって、a cold, a sore throat, a headacheを挙げています。さらに、具体例で、病名が可算名詞か、不可算名詞かを解説しています。

  1. 不可算: Measles, and chicken pox are common ailments in childhood.
  2. 不可算: Old people especially are susceptible to flu in winter.
  3. 不可算: Generally, earache and toothache are more painful than stomach-ache or backache.
  4. 可算: The common cold is characterised by a sore throat, a runny nose, headaches and a bad cough.

measles: はしか、麻疹
chicken pox/chickenpox: 水痘,水ぼうそう, varicellaともいう
The common cold: 感冒、風邪
in childhood: 小児期に、子どもの時に、子どもにとっては
susceptible to…: …(病気など)にかかりやすい、…による影響を受けやすい
characterized by…/characterised by…: …といった特徴がある、(主語)にみられるのは…といったものである。

ここの例が困るのは、Wikipedia英語版も書いているとおり、”the flu”は通常、”the flu”となります。ただし、”the common cold”が”a cold”でもいいのに対し、”the flu”は”a flu”になりません。また、”Measles”の後に入っているコンマは不要で、学校の先生だったら×をつけそうです。

さらに、可算名詞の例を挙げていると次のものがあります。
a cold, the common cold: 風邪、感冒
a runny nose: 鼻水、鼻汁、水ばな(鼻水そのものでない点に留意する)
a cough: 咳
a sore throat: のどの痛み、咽頭痛
a headache: 頭痛
a rash: 発疹、皮膚のぶつぶつ
a fever: 熱. 熱がある。I have a fever; I am running a fever.
the flu: 流行性感冒、インフルエンザ
ache: 各種の痛み an earache, a stomach ache, a toothache, a backache
参考にしたのは、Virginia Allumという英国の著者が書いた”From Occupational English Test Sample Role Plays – For Nurses”と言う本です。

他にも、a nose bleed/nosebleed(鼻血. I have a nosebleed.)なんてのもありますし、a tumor(腫瘍)などもあります。

さらに可算か、不可算かというのは、英国英語と米国英語でやや違いがあります。広く知られているとおり、英国英語と米国英語の違いというのは、アクセントだけではなく、さまざまなところに現れます。ケンブリッジ大学出版局のウェブサイトではさまざまな例を挙げて、相違点について触れています。

こういった相違点は、病名・症状の分野では幸いなことに多くはないようです。BBCのウェブページでは、ache(痛み)について、いくつかの例を挙げて説明しています。それをみると、米国英語では、ほぼすべてに”a”を付けるのに対して、英国英語では頭痛を除くと、”a”を付けない傾向にあるようです。

さて、最初に戻って、次の中からより適切なものを選ぶとしたらどちらでしょうか。

“I have hay fever.”
“I have a hay fever.”

お分かりですよね。”I have hay fever.”です。

東京オリンピックが近づくなか、医療通訳による訪日外国人サポートへの関心が高まっています。ブログ『医療英語の森へ』を発信する医薬通訳翻訳ゼミナールは、独学では物足りない、不安だといった方のために、医療通訳・医療英語のオンライン講座もおこなっています。ご希望の方は当ゼミナール・ウェブサイトのお問い合わせページから、またはメールでご連絡ください。