テキスト『医療通訳』の単語集を自分のものにしよう・第2回 — 人体各部位(後面)

オリジナルの単語集を確認

オリジナルでは人体各部位(後)となっていますが、人体の後面に実際に位置するのは、うなじ、ひじ、背中、お尻、ふくらはぎといったところです。表にふくまれるおおくの部位が後面に位置するものではありません。

日本語 英語
頭(頭部) head
うなじ(後頸部) nape
首(頸部) neck
腕(上肢) arm (upper extremity)
上腕 upper arm
前腕 forearm
肘(肘関節) elbow (elbow joint)
手首 wrist
hand
手の指(手指) finger
背中(背部) back
waist / hip
お尻(臀部) buttocks / bottom
脚(下肢) leg (lower extremity)
太もも(大腿) thigh
下腿 lower leg
ふくらはぎ(腓腹) calf
foot
かかと heel
足の裏(足底) sole

日本語・一般むけ・専門用語

※「自分のもの」にするためのすすめ方については第1回を参照。

日本語 English(lay term) English (medicine)
頭、頭部 head
うなじ、後頸部[こうけいぶ]、項部[こうぶ] nape nucha
首、頸部[けいぶ] neck cervix
腕、上肢[じょうし] arm upper limb, upper extremity
上腕[じょうわん] upper arm, arm brachium
前腕[ぜんわん] forearm antebrachium
肘、肘関節[ひじかんせつ・ちゅうかんせつ] elbow, elbow joint
手首 wrist carpus
hand
手の指、手指[しゅし finger digit of the hand
背中、背部 back dorsum
腰、腰部[ようぶ] waist, hip, lower back lumbar region
お尻、臀部[でんぶ] buttocks, bottom, hip
脚、下肢[かし] leg lower limb, lower extremity
太もも、大腿[もも・ふともも・だいたい] thigh
下腿[かたい] lower leg
ふくらはぎ、腓腹[ひふく] calf
foot
かかと heel
足の裏、足底[そくてい] sole

例文・語の構成要素・おぼえがき

Example 語の構成要素 Note
A primary headache is caused by overactivity of or problems with pain-sensitive structures in your head.
An incision may be made from behind the hairline in front of your ear and the nape of your neck.
Classic symptoms of viral meningitis are fever, headache, and neck stiffness (nuchal rigidity).
Arm pain can be caused by a wide variety of problems, ranging from joint injuries to compressed nerves. 解剖学的にはarmは上腕のこと.
A contraceptive implant is a flexible plastic rod about the size of a matchstick that is placed under the skin of the upper arm. brachi(o)-: ギ→ラ「腕」
The bones that are most commonly tested to measure bone density are in the spine, hip and sometimes the forearm. ante-: ラ(時間・空間・順序)「~の前」; ⇔post-
A dislocated elbow occurs when the bones that make up the joint are forced out of alignment.
Baseball elbow is characterized by pain from the elbow to the wrist on the inside of the elbow. carp(o)-: ギ→ラ「手根(骨)」 carpusは手根骨を集合的に意味することもある.
Often, having cold hands is a part of your body’s natural response to regulate your body temperature and shouldn’t be cause for concern.
Nails protect the extremities of our fingers and toes from mechanical damage.
Five vertebrae numbered as L1–L5 are located in lumbar region (lower back) of the vertebral column. dors(o/i)-: ラ「背」
When you place your hands on your waist, you can feel the arching, superior margin of the ilium along your waistline. lumb(o)-: ラ「腰椎」 ◎hipは日本語の「腰」「お尻」に部分的に重なる.◎いわゆる「腰痛」はlower back pain (lumbago).
For the buttocks, the size of the muscles influences the names: gluteus maximus (largest), gluteus medius (medium), and the gluteus minimus (smallest). gluteus maximus; gluteus medius; gluteus minimus: それぞれ大殿筋、中殿筋、小殿筋.
The muscles that move the lower leg typically originate on the femur and insert into the bones of the knee joint.
The posterior muscles of the femur flex the lower leg but also aid in extending the thigh.
A combination of gluteal and thigh muscles also adduct, abduct, and rotate the thigh and lower leg.
The most superficial and visible muscle of the calf is the gastrocnemius. gastrocnemius: 腓腹筋.
The foot also has intrinsic muscles, which originate and insert within it. intrinsic muscle: 内在筋.
Tandem gait is when the patient places the heel of one foot against the toe of the other foot and walks in a straight line in that manner. tandem gait: 継ぎ足歩行、タンデム歩行
While walking, the sole of the foot may be scraped or scratched by many things.

※下表は画像データとしてダウンロード可能です(6月22日追記)

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参考資料

テキスト『医療通訳』の単語集を自分のものにしよう・第1回 — 人体各部位(前面)

『医療英語の森へ』では先週おつたえしましたが、テキスト『医療通訳』の新版が今月(2018年6月)に厚生労働省のウェブサイトで公開されました。このテキストには、巻末に単語集がついていますが、その内容はとてもシンプルなものです。日本語とそれに対応する4ヶ国語の単語がならべられているだけで、とくに注釈もありません。

ところで『医療通訳』には、90ページに「情報の収集方法(用語集の作成と情報収集)」というセクションがあります。そこでは、医療通訳をめざす方に用語集の作成をうながしています。

「用語集を単なる単語帳にしないように、実際に使われている文章を丸ごと入れましょう。また、説明書きや言い換え例も入れると、より使いやすくなります」(『医療通訳』90ページ)

単語集用語集、名前はにていますが、『医療通訳』が作成をうながしている用語集とは、巻末についている単語集以上の内容をふくむものだということがわかります。では、具体的にどのように用語集をつくっていけばいいのでしょうか。

用語集は、医療通訳、そして医療通訳をめざす方がそれぞれ自分のやり方で、つくっていけばいいものです。これが正解といったものはありません。といっても、自分のやり方をみつけるためのきっかけがほしいという方もいるでしょう。そこで今回は『医療通訳』の単語集をもとに、自分だったらどのような用語集をつくるか、ということについて、おつたえしたいとおもいます。

まずは、第1回ということで「人体各部位(前面)」について、ひとつひとつステップを説明しながらやっていきます。

オリジナルの単語集をまずはみてみよう

日本語 英語
hair
眉毛 eyebrow
おでこ(額) forehead
こめかみ temple
ear
face
eye
nose
mouth
のどぼとけ laryngeal prominence / Adam’s apple
shoulder
脇(腋窩) armpit / axilla
乳首(乳頭) nipple
胸・乳房(乳房) breast
胸(胸部) chest
臍(臍部) navel / belly button
おなか(腹部) stomach (abdomen)
鼠径部 inguinal region / groin
性器 genitals / sex organ
膝(膝関節) knee (knee joint)
すね shin
足の甲(足背) instep
くるぶし ankle
足の指(足指) toe

とても、シンプルに日本語に対応した英語がのせる形で表はつくられています。

このオリジナルをもとにエクセルをつかって下の用語集をつくってみました。用語集は各単語の説明のために6項目で構成したのですが、横はばの制限もあるので、まずは3項目だけをのせています。

日本語 English(lay term) English (medicine)
hair
眉毛 eyebrow
おでこ、額[ひたい] forehead
こめかみ temple
ear
face
eye
nose
mouth
喉仏[のどぼとけ]、喉頭隆起[こうとうりゅうき] Adam’s apple laryngeal prominence
shoulder
脇、腋窩[えきか] armpit, underarm axilla
乳首、乳頭[にゅうとう] nipple mammary papilla
胸、胸部 chest, breast thorax
乳房[ちぶさ・にゅうぼう] breast mammary gland
臍[へそ]、臍部[さいぶ] navel, belly button, tummy button umbilicus, umbilical region
おなか、腹部 stomach, belly, tummy abdomen
鼠径部[そけいぶ] crotch groin, inguinal region
性器 genitals, sex organ, reproductive organ genitalia
膝[ひざ], 膝関節[ひざかんせつ・しつかんせつ] knee, knee joint
すね shin
足の甲[こう]、足背[そくはい] instep
くるぶし ankle, ankle knuckle malleolus, medial malleolus (internal malleolus), lateral malleolus (external malleolus)
足の指、足指・足趾[そくし] toe digit of the foot

日本語にふりがなをふってみる

医療用語のなかには、読み方ががむつかしいものが少なからずあります。そこで、ふりがながあった方がいいだろうとかんじた単語には[]のなかにふりがなをいれてみました。

読み方がむつかしいだけでなく、医療の世界で独特な読み方をするものもあります。たとえば、ここにはありませんが「口腔」は「こうくう」と医療の世界では読みます。ところが漢字としては「腔」は「こう」と本来は読むものだそうです。こういったこともありますので、ふりがなは必要におうじて、ふったほうがいいでしょう。

英語は一般向けと専門用語を分ける

英単語については1項目にまとめるのではなく、lay term(一般向け)と医療用語に分けてみました。言いかえが必要なときにそなえるためです。とくに専門用語がないものや、あっても、あまりにも専門用語すぎて、論文のなかでもないかぎり、つかわないものもあるでしょう。そういったものはいれていません。

ただ、そういった専門性の高い用語が必要な通訳もいるでしょう。そういった方は必要に応じてくわえていけばいいとおもいます。また、英語だけでなく、日本語も分けたい方がいいとおもう方もいるとおもいます。そういった方は、ぜひそうした方がいいとおもいます。

一般向けのことばと、専門用語について気をつけなければいけないのは、必ずしもイコールなものがそれぞれみつかるものではないということです。一般的には、専門用語の方が、こまかく部位を特定する傾向にあり、その反対に一般向けのことばはざっくりとおおまかに部位をさしたりしがちです。

たとえば、「腹」と「腹部」はおなじものをあらわしているとかんがえて問題ないとおもいますが、「臍(へそ」と「臍部(さいぶ)」は「臍部」が「臍」をふくむ周辺部をさしていますので、おなじものをあらわしているのではありません。「腹」に部をたして「腹部」なだけなんだから、「臍」に部をたした「臍部」もにたようなことなんだろうと考えたら、まちがえてしまいます。なお、この例では、一般用語でもある「臍」よりも「臍部」の方が大きい範囲をさします。

こういった単語の対応のずれは、ただ単語だけをならべてもわからないですので、あとでも書きますが、Note(注釈)をつけるようにした方がいいでしょう。

品詞も必要におうじて書いておこう

名詞ばかりだといいのですが、形容詞などには名詞なのかわかりにくいものもあったりします。とくに仕事などで用語集をシェアしたりする必要がある方は、「形容詞」「動詞」など品詞をきちんとしるしておくと、誤解がうまれたりしないでしょう。

英語にまだ自信がない方は、品詞を見分けることがにがてだったりします。用語集に「形容詞」なのか、その単語が「名詞」なのか、「動詞」なのかとしっかり書いておいて、例文を活用すると、英語力の向上に役立ちます。ぜひ、ためしてみましょう。

例文をのせよう

用語集ののこりの3項目を下にのせました。それぞれの行がどの単語のものかわかりづらいので、単語を強調表示してあります。

Example 語の構成要素 Note
People typically lose about 100 hairs a day. 髪として集合的に不可算でとなることがおおいが、一本一本の髪の毛を意味して加算となることも.
A brow lift can soften facial lines, raise the eyebrows and restore a softer, more pleasing appearance.
You may feel pressure around your eyes, cheeks and forehead.
Your doctor will make short incisions in your hairline starting at your temples.
Airplane ear can occur in one or both ears.
Usually 50 minutes out of every hour need to be spent face down.
Itchy eyes are rarely a symptom of a serious condition.
From chicken soup to neti pots to over-the-counter (OTC) medications, there are all sorts of ways to help clear a stuffy nose.
Dry mouth, or xerostomia, refers to a condition in which the salivary glands in your mouth don’t make enough saliva to keep your mouth wet.
Your thyroid gland is located at the base of your neck, just below the Adam’s apple. laryng(o)-: ギ「喉頭(larynx=voice box)」
Frozen shoulder, also known as adhesive capsulitis, is a condition characterized by stiffness and pain in your shoulder joint.
Common areas where you might notice swollen lymph nodes include your neck, under your chin, in your armpits and in your groin. axill-: ラ「わきの下」
Nipple discharge is a common symptom in women who are not pregnant or breastfeeding. mamm(o)-: ラ「胸」「乳房」. papill(-): ラ「乳頭(状突起)」「乳頭(状)の」「乳頭腫(性)の」
Patients with pectus excavatum have a distinctly sunken chest. ◎ざっくりと「胸」にあたるのはchest、breastだが、breastは乳房をさす. ◎thoraxは「胸郭」と訳されることもあるがchestと同義
I felt a lump in my right breast. mamm(o)-: ラ「胸」「乳房」.
People with indigestion may feel a mild to severe pain in the area between the bottom of your breastbone and your navel. umbil(i)-: ラ「へそ(the navel, the umbilicus)」 臍部とは臍をふくむ周辺部をさし、腹を9分割すると真ん中にあたる. 腹と腹部、胸と胸部がほぼ同義であるのに対して、臍と臍部にはちがいがある.
Viral gastroenteritis — often called stomach flu — is an intestinal infection characterized by watery diarrhea, abdominal cramps, nausea or vomiting, and sometimes fever. abdomin(o)-: ラ「腹」「腹部」 tummyは幼児語だが、おとながつかうこともある.
The groin is the area between the abdomen and the thighs on either side of the pubic bone. groinは時として、性器を意味する婉曲語としてつかわれる. crotchは「また」と訳されるが、鼠径部の方がちかいとみられる.
“You just kicked my genitals, and now they really hurt!” -gen(e)-: ギ(1)「生じるもの」「生じたもの」(2) 「種類」 性器には数おおくの俗語がある. genitalsとgenitaliaは外性器のことをさすと解釈するものもいる.
The collateral ligaments of the knee are located on the outside of your knee joint.
Many athletes get painful shin splints at one time or another.
The most important kicking skill in football is the instep drive. 狭義では、instepは足背のアーチ部.
A sprained ankle is an injury that occurs when you roll, twist or turn your ankle in an awkward way. ankleは足首のこと
Toes can break when people drop a heavy object on them or when people stub their toe. digitとは人間において手または足の指を指す.

単語を単語だけでおぼえるのはむつかしく、また使い方がわかりにくいということもあります。例文の項目をつくっておくと、他の単語とのつながりによって、おぼえることが容易になります。また、実際の使われ方をおぼえることで、自分自身の表現に活かすことができます。

この用語集では、参考までに英文についてだけ、例文を1つつけました。自分が実際につかったり、聞いたり、読んだりした表現を記入して、例文を増やしていってもいいでしょう。それぞれの英文の日本語訳を別に項目をたててのせてもいいでしょう。

語の要素をのせることでおぼえやすくしよう

接頭辞や、接尾辞など語の構成要素を意識すると、医療英単語をおぼえることがグッと楽になります。実際に語の構成要素をどのように使えばいいのかについては「語の要素をつかった医療英単語へのアプローチ」で書きましたので、参考にしていただければとおもいます。

医療英単語に関連した語の構成要素についてはインデックス化して「接頭辞・接尾辞・連結形 — INDEX」にまとめてありますので、どんどん利用してください。

Noteには、覚えておきたいことを

最後に、Note、覚え書き、備考、どんな名称でもいいのですが、気がついたことを書きこんでおく項目をたてましょう。この項目に書きこむこととしてかんがえられるのは、単語の意味とか、文法的なことなどがあります。また、医学的な解説もかんがえられるでしょう。

用語集をしばらくつかってみて、このNoteのなかで共通にみられるようなものがみつかったら、あらためて別に項目をたてて、Noteから取りだしてもいいでしょう。たとえば、医学的な定義をいろいろな単語のNoteに書きこんでいることに気がついたら、「医学的定義」(ちょっとかたい言い方ですが)という名前の項目をべつに立ててとそこに医学的な定義を書き込んでいくといいでしょう。

決まった形はない、自分にとってベストなやり方を見つけよう

いろいろと書いてきましたが、ここに書かれたやり方にしたがう必要なありません。それぞれの方が、自分にとって、最適なやり方で用語集をつくればいいとおもいます。ただ、どうやってはじめたらいいかわからないというのであれば、まずはここに書いたやり方で、やってみたらいかがでしょうか。そして、だんだんと自分のやり方をみつければいいんだとおもいます。

表をここにまとめてのせることができなかったので、画像にして下に貼りつけました。ご参考までにどうぞ。

※表は画像データとしてダウンロード可能です(6月22日追記)

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参考資料

医療目的の訪日外国人はどのくらいいるのか — 調査資料・セミナー資料からよむ

訪日外国人の数は、2017年に前年比で19.3%増の2869.1万人になりました。今年の1〜4月の4ヶ月で1051.9万人とすでに前年比で15.4%増となっています。日本政府がのぞんでいるとおりに、旅行目的の訪日外国人の数は増えつづけているといるようです(日本政府観光局調べ)。

では、この訪日外国人のうち、どのくらいの方が医療目的で訪日した方なのでしょうか。残念ながら、その数についての調査はややおくれているようです。今現在で入手可能な資料で、信頼性のあるものというと、平成28年3月に野村総合研究所が経済産業省から引きうけてまとめた「国内医療機関による外国人患者受入の促進に関する調査」の数字とみられます。

この調査では、2014年現在の集計として、医療目的の訪日外国人の数を6,924人と報告しています。2013年には、5053人だったとも報告しているので、1年間で37%も増えたことになります。ちなみに、2014年の訪日外国人の全体数は前年比でほぼ30%増えています。

この調査報告をよむと、調査対象の医療機関があやまって、日本在住外国人や観光・ビジネス目的の旅行者もふくめて回答をしたこともあるようですので、集計数はやや正確性を欠くものだということがわかります。それでも、今月6日にひらかれた訪日外国人医療支援機構のセミナーで、厚生労働省の担当者がこの調査を参照して、医療目的の訪日外国人の数を報告していましたので、ほぼこの数が実数にちかいものと政府はみているようです。

となると、医療目的のいわゆる医療ツーリズムの訪日外国人の数は今現在どのくらいなのかでしょうか。そのセミナーでの厚労省の方の資料では、数千〜万人くらいと、はばをもたせていましたが、1万人前後とみるのが、順当なguestimationなのでしょうか。

正確な数をしりたい方には酷なお話かもしれませんが、じつは正確な数を把握するための体制がまだできていないというのが国内の現状だといえるでしょう。なぜなら、医療ツーリズムに積極的な医療機関は少数派で、おおくの医療機関が来院外国人患者の背景について、わざわざしらべたしているわけではないのです。

厚労省「医療通訳に関する資料 一覧」がアップデート、テキストの新版も

厚生労働省の「医療通訳に関する資料 一覧」のページが今月4日に更新されました。あわせて、テキスト『医療通訳』も新版へ更新されています。もともと、昨年の9月に更新される予定で、心待ちにしていた人もおおいとおもいます。

前版とくらべ、人体図・テキスト本文・単語集と大わくはかわっていないようです。ただし、ざっとみたかぎりですが、かなり内容や、構成にはおおきく変更がくわえられていて、まったくのあたらしいものとなっているようすです。

前版にあった「脳」の図のあやまりも訂正されているなど、着実に現場からのフィードバックが届いているようでもあります。

単語帳は、肩甲骨が「scapula」とだけなっていて「shoulder blade」がないことなど、やや専門用語にかたよっている印象は受けますが、見なおしをいれたようです。

もともとの公開が9月だったはずが、12月に、そして3月になって、それでもでず、ここまでずれこんだとはいえ、やっとでたことはよろこばしいことですし、作成にたずさわられた委員の方たちにはすなおにありがとうとつたえたいですね。

ただ、実際につかいだしたら、きびしい目でみてしまうとはおもいますが。

東京オリンピックが近づくなか、医療通訳による訪日外国人サポートへの関心が高まっています。ブログ『医療英語の森へ』を発信する医薬通訳翻訳ゼミナールは、独学では物足りない、不安だといった方のために、医療通訳・医療英語のオンライン講座もおこなっています。ご希望の方は当ゼミナール・ウェブサイトのお問い合わせページから、またはメールでご連絡ください。

JCI認定病院、関東に集中、関西はわずか1機関

医療の質と患者の安全性を国際的に審査する病院評価機関であるJCI(Joint Commission International)の認定病院の増加ペースが鈍化していることを前回お話ししました。

各年ごとのJCI認定医療機関の増加推移(*2017年3月末現在)

2009 ’10 ’11 ’12 ’13 ’14 ’15 ’16 ’17 ’18*
1 0 1 3 3 1 7 4 3 1*

今日は、JCIのウェブサイトにしたがって、2018年3月末までに認定された医療機関24(全25施設のうち1施設は介護施設として除外)を地域ごとにみてみましょう。

地方ごとのJCI認定医療機関数(八地方区分)

北海道 東北 関東 中部 近畿 中国 四国 九州
1 1 13 3 1 1 0 4

目だつのは、関東地方への集中ぶりで、東京の6機関、神奈川3機関、埼玉2機関など全JCI認定医療機関の過半数が関東地方にあつまっています。それとくらべると、関西地方は2016年12月に認定されたばかりのマックシール巽病院(大阪府)だけです。京都・奈良・大阪と訪日外国人の急増が話題となっている関西地方だけにとてもすくないという印象をうけます。

九州は4機関と数のうえでは、関東につぐものとなっています。とくに沖縄は2機関となっています。沖縄では国が国際医療の拠点づくりに動いているとの話もあり、医療通訳の需要という点から今後が気になるところです。

2016年には、先ほどのマックシール巽病院が関西地方ではじめてのJCI認定病院となったように、中国地方でも倉敷中央病院が初のJCI認定病院となっています。つづく2017年には石巻赤十字病院が東北地方ではじめて認定をうけており、着実に面としてのひろがりはうまれつつあるようです。