泌尿器系についての基本の基本 — 医療通訳資格試験にむけて

人間という生き物が生きていくうえで、からだのなかでおきている、とても大切なことにホメオスタシスがあります。泌尿器系(the urinary system/the renal system)は、尿を生成することで、体液のバランスを調整し、ホメオスタシスに貢献しています。ホメオスタシスを理解するとともに、泌尿器系をまなびましょう。

尿は、腎臓でつくられ、尿路をとおって、からだの外にだされます。この流れをきちんとおさえましょう。腎臓は、とても重要な器官ですので、そのしくみやはたらきについては、しっかりとまなびましょう。

尿路 にょうろ urinary tract
腎臓 じんぞう kidney
腎動脈 じんどうみゃく renal artery
腎静脈 じんじょうみゃく renal vein
腎皮質 じんひしつ renal cortex
腎髄質 じんずいしつ renal medulla
ネフロン ねふろん nephron
糸球体 しきゅうたい glomerulus/(複)glomeruli
近位尿細管 きんいにょうさいかん proximal renal tubule
遠位尿細管 えんいにょうさいかん distal renal tubule
集合管 しゅうごうかん collecting tubule/collecting duct
腎盂 じんう renal pelvis
尿 にょう urine (おおくの俗語が存在する)
尿管 にょうかん ureter
膀胱 ぼうこう urinary bladder/bladder
尿道 にょうどう urethra

【参考資料】

呼吸器系についての基本の基本 — 医療通訳資格試験にむけて

呼吸器系(the respiratory system)をまなぶにあたっては、消化管をまなぶときとおなじように流れを意識しましょう。鼻からはじまり、咽喉、気管を経過し、肺へといたる流れをしっかりとおさえるようにします。

呼吸器系は、おおきくわけて、空気の通り道である気道と、ガス交換(gas exchange)の場である肺でなりたっています。気道は上気道と下気道にわかれます。鼻の穴からはいった空気は、上気道(鼻腔、咽頭、喉頭)から下気道(気管、気管支)をとおり、その先の肺へとむかいます。この流れをしっかりおぼえましょう。

気道は、消化器のように、常に外部環境にさらされています。そのために、外部からの侵入物にたいする防御手段がそなわっています。気道の流れをおさえながら、防御手段についてもまなびましょう。

気道 きどう airway/respiratory tract
鼻孔 びこう nostril/naris/nosehole
鼻腔 びくう nasal cavity
咽頭 いんとう pharynx
喉頭蓋 こうとうがい epiglottis
喉頭 こうとう larynx/voice box
喉仏・喉頭隆起 のどぼとけ・こうとうりゅうき Adam’s apple/laryngeal prominence
声帯 せいたい vocal cord/vocal fold/vocal reed
気管 きかん trachea/windpipe
気管支 きかんし bronchus/(複)bronchi
細気管支 さいきかんし bronchiole
はい lung(lungsとおおくの場合、複数形であらわす)
肺胞 はいほう alveolus/(複)alveoli
よう lobe

【参考資料】

消化器系についての基本の基本 — 医療通訳資格試験にむけて

消化器系(the digestive system)については、おぼえることがたくさんあります。その一方で、問題がつくりやすいので、試験ではしばしばとりあげられます。きちんと、じぶんで消化器系の知識を整理しておぼえておきましょう。

整理をするポイントとしてすすめているのが、たてにおぼえて、よこにひろげていくということです。「たて」とは、当ブログでしばしばとりあげている流れのことです。消化器系の場合、消化管(the gastrointestinal tract/the digestive tract/GI tract/gut/alimentary canal)を消化という機能のひとつの流れとしてとらえ、まずは位置(順番)をおぼえましょう。口からはじまり、食道、胃、小腸、大腸をつうじて、肛門へといたるその流れをおさえるのです。これがたてにおぼえるということです。

つづいて、それぞれの器官でなにがおこるのか、おぼえていきましょう。たとえば、口では、どういった消化活動がおこなわれているのか、どういった消化液(digestive juice)が分泌されるのか、こういった知識を整理していきましょう。消化管をかたちづくるそれぞれの器官についてもこうして、知識を整理してひろげていくのです。これがよこにひろげるということです。

ところで、消化器系は、消化管だけでなりたっているわけではありません。いわゆる肝胆膵といわれる肝臓・胆嚢・膵臓といった付属器官(accessory organs of digestion)も、とてもたいせつです。問題としても、よくとりあげられます。しっかりおさえておきましょう。

消化管 the gastrointestinal tract/the digestive tract/GI tract/gut/alimentary canal
口・口腔 くち・こうくう mouth, oral cavity/buccal cavity
食道 しょくどう esophagus (英oesophagus)/food pipe/gullet
stomach
小腸 しょうちょう small intestine/small bowel
十二指腸 じゅうにしちょう duodenum
空腸 くうちょう jejunum
回腸 かいちょう ileum
大腸 だいちょう large intestine/large bowel/colon
盲腸 もうちょう cecum
上行結腸 じょうこうけっちょう ascending colon
横行結腸 おうこうけっちょう transverse colon
下行結腸 かこうけっちょう descending colon
S状結腸 えすじょうけっちょう sigmoid colon
直腸 ちょくちょう rectum
肛門管 こうもんかん anal canal
肛門 こうもん anus
肝臓 かんぞう liver
膵臓 すいぞう pancreas
胆嚢 たんのう gallbladder/gall bladder/biliary vesicle/cholecyst

【参考資料】

循環器系についての基本の基本 — 医療通訳資格試験にむけて

循環器系は心臓血管系(the cardiovascular system/the vascular system)とリンパ系(the lymphatic system)でなりたっていますが、試験対策としてはまず心臓血管系を優先してまなびましょう。ただし、感染症などの鑑別診断をかんがえると、リンパ系は実践の場でとてもたいせつであることを意識しておく必要があります。医療通訳としての実践と試験対策とは別物であることをおぼえておきましょう。

まずは、とにかく心臓の構造をまなびましょう。専門書でなくてもかまいません。一般向けの書籍や厚労省の資料(心臓各部位)をつかって、心臓の構造を把握しておきましょう。下の単語表にあるような、おもな心臓の部位については、それぞれの名称を日本語と英語でおぼえるとともに、位置をしっかりおぼえておきましょう。

位置をおぼえるときにまちがえてしまいがちなのは右左(みぎひだり)です。解剖図のおおくは、正面からむかってみたかたちでかかれています。医療従事者の方には当然でも、通訳出身の方などは、ついまちがってしまったりしまうので、注意しましょう。

からだの構造をおぼえるときに、ひとつひとつ位置をおぼえるのは効率的ではありません。からだのどの構造についてもいえますが、バラバラにおぼえるのではなく、機能の流れでおぼえるようにしましょう。心臓の各部位をおぼえるには、血液の流れ(血液循環 blood circulation)でおさえるのがいいでしょう。

血液循環には、酸素をからだのすみずみにおくる体循環(systemic circulation/general circulation、または大循環 greater circulation)と、肺での二酸化炭素と酸素の交換にかかわっている肺循環(pulmonary circulation、または小循環 lesser circulation)があります。各部位の位置・名称とともに、血液の流れもしっかりおさえましょう。

代表的な心臓の部位 Main components of the heart
上大静脈 じょうだいじょうみゃく superior vena cava/SVC
下大静脈 下大静脈 inferior vena cava/IVC
右心房 うしんぼう right atrium
三尖弁 さんせんべん the tricuspid valve/the right atrioventricular valve
右心室 うしんしつ right ventricle
肺動脈弁 はいどうみゃくべん the pulmonary valve/the pulmonic valve
肺動脈 はいどうみゃく the pulmonary artery
左心房 さしんぼう left atrium
僧帽弁 そうぼうべん the mitral valve/the left atrioventricular valve
左心室 さしんしつ left ventricle
大動脈弁 だいどうみゃくべん the aortic valve
大動脈 だいどうみゃく the aorta
大動脈弓 だいどうみゃくきゅう the aortic arc/the arc of the aorta

【参考資料】

語の要素をつかった医療英単語へのアプローチ

まずは、医療英語とは関係ないところから話をはじめます。8月1日に米俳優のサム・シェパードという方がなくなったとのニュースがながれました。日本では、工藤夕貴のハリウッド進出作として宣伝された『ヒマラヤ杉に降る雪』という映画で、主人公の父親役として出演したことが一番しられているかもしれません。もちろん、映画ファンであれば、俳優だけでなく、脚本家としてもひろく活躍していたことをしっているでしょう。

さて、サム・シェパード氏がなくなったことをなぜ取りあげるのかというと、彼の死因が訃報のなかで、こうかかれていたからです。

“Sam Shepard has died from complications related to amyotrophic lateral sclerosis (ALS), known as Lou Gehrig’s disease”

サム・シェパード氏は、筋萎縮性側索硬化症、いわゆるALSに関連した合併症でなくなったということなんです。このALSは日本国内では指定難病になっています。有病率(prevalence)が10万人あたり2〜7人という、まれな疾患なのですが、2014年にアイス・バケット・チャレンジがはやったことで、しっている方もふえたとおもいます。

このALSの「筋萎縮性」を意味する「A」は、記事にもあるとおり、amyotrophicの頭文字です。医療分野では、こういった頭文字を組みあわせた頭字語(acronym)を多用します。さて、この「amyotrophic」ですが、語の要素に頭をなれさせるためにはとてもいい単語だとおもいます。では、実際に「amyotrophic」をつかって、語の要素にアプローチしましょう。

まずは「amyotrophic」を語の要素に分解してみましょう。はじめてだと、どこでわければいいかむつかしいかもしれませんが、「amyotrophic」は「a」と「myo」、「troph」「ic」の4つの語の要素でできています。それでは、当ブログの『接頭辞・接尾辞・連結形』を参考にしながら、それぞれをみていきましょう。

a」はギリシャ語由来の語の要素で、「非・無」を意味します。うしろにくるものが「ない」ことを意味するんですね。たとえば、「症状の」という意味のsymptomaticという形容詞につけて、asymptomaticとすると「無症候性」「症状がでていない」(形容詞)となります(症状と徴候はちがうので、正確には無症状性と訳すべきだったのでしょうけど、「無症候性」と訳されている単語がほとんどとみられます)。「無症候性血尿」(asymptomatic hematuria)などがあります。

my」はギリシャ語由来の連結形で、「筋肉」をあらわす語の要素です。心筋梗塞 myocardial infarctionの「心筋」にあたるmyocardial(形容詞)でみたことがある方もおおいとおもいます。「髄・脊髄・骨髄」を意味する「myel」など、似たような語の要素がおおいので注意しましょう。

troph」は「栄養・発育」を意味する語の要素です。筋ジストロフィーのジストロフィーはdystrophyで、やはりこの「troph」がつかわれていて、「不全」などをあらわす「dys」とあわさり、単語をつくっています。「変化」とか「(ホルモンなどが)影響をあたえる」をあらわす「trop」と混同しないように気をつけましょう。

ic」についてはこまかい説明は不要でしょう。「…のような」「…の性質をもつ」といった形容詞をつくる語の要素(接尾辞)です。医療以外の一般英語のなかで、なんどもみたことがあるとおもいます。

このように、英単語は語の要素に分解することができます。とくに医療英語の分野では、合理的に語の要素が組みあわされて単語がつくられているものがすくなくありません。語の要素を意識的につかうと、ボキャブラリーを効果的にふやすことができるでしょう。ただし、以前にもかきましたが語の要素をかたっぱしからおぼえようとすると、とてもたいへんです。まずは、自分のまなんだ医療英単語をならべてみて、共通項となる語の要素があるかみてみましょう。そして、その語の要素をしらべてみるのです。そうすることで、語の要素がだんだんと身についていくでしょう。

最後に、サム・シェパード氏と共演した俳優のマシュー・マコノヒーが訃報をきいたときのインタビューを紹介します。このインタビューは、とても短いですが、おもしろい表現がいくつかでてきます。なお、マシュー・マコノヒー氏はとてもクセのあるはなし方をするので、聞きとるのはむつかしいという方もいるでしょう。

英語 日本語
the passing of… …の死去、逝去 死ぬを婉曲にあらわすpass awayとともに婉曲表現としておぼえましょう
from what? なんでだ 日本語で「なぜ」「なんで」という表現は「why」であらわしたくなりますがおおくの場合、「how」の方が適切です。ここでは「die from」から「from what」ときいています
move on 死ぬ、なくなる 「死後の世界へいく」という意味でこういう表現がさらっとでてきています。ある意味とても宗教的な表現です
see you in the next one あの世であおう 日本人にとっても理解できる表現ではありますが、宗教観がにじみでた表現です

【参考資料】