医療通訳は横のつながりが大事

ひとりだったらはじめられなかった

あなたはどのように医療英語または医療通訳の勉強をはじめましたか。僕が医療英語の勉強をはじめたのは、都内の医療通訳の学校ででした。この学校はもうなくなってしまっているのですが、当時は求職者支援制度をつかった医療通訳・メディカルツーリズムのコースを提供していました。そのコースを偶然みつけて応募したのです。

私はもともと、医療従事者ではありませんでしたので、医療知識があったわけではありません。英語を書いたり、はなしたりして、しごとをしてきました。そういった経験をいかして、外国人患者をサポートすることで社会に貢献できればとかんがえたのです。ですので、医療通訳については、ゼロからのスタートだったといってもいいでしょう。

ふりかえっても、ゼロから自分だけで勉強してたとしたら、そうとう大変だったろうとおもいます。講師の方や、クラスメートの助けがなかったら、今ごろ、こんなブログなんかかいていずに、とっくに医療通訳へのかかわりをやめていたかもしれないなんてかんじます。

医療通訳をめざすもの同士の情報交換は重要

正直いえば、その学校のカリキュラムはひどいものでした。基本的な通訳のやり方について説明することはいっさいありませんでしたし、医療通訳が現場で直面するであろう課題や、それを解決するための指針みたいなものはなにも、あたえてくれませんでした。医療従事者あがりの先生が自分の知識を英語に置きかえるだけのとても稚拙なものでした。

もちろん、ゼロからはじめた身だったので、授業のなかでまなんだものをたくさんありました。そういった知識をぬきにして、医療通訳としての第1歩を踏みだすことはできなかったでしょう。

なによりも一番よかったのは、クラスメート同士の情報交換でした。どのウェブがよかったとか、こういった本をみつけたよ、とかそういった情報がなにより貴重でした。自分だけでは、なかなか知りえなかったような医療通訳についての情報や、医療知識などについては、クラスメートにたすけてもらえなければ、おおきく遠まわりしたとおもいますし、そもそもたどりつけなかったことでしょう。

さらにいうと、医療通訳というのは、ずっと、勉強をつづけていかなくてはなりません。そのための、やり方、情報の見つけ方などは、こういったクラスメート同士の情報交換で身につけたものがおおかったのです。

積極的に情報を交換しよう

おすすめするのは、自分がつかっている辞書や、テキスト本、図鑑や、ウェブサイトなどを積極的に医療通訳をまなぶもの同士でシェアすることです。医療英語をまなんでいたら、きっとなにか、「これ、いいな」というのをみつけた経験があるはずです。そういったときは、できるだけ他のひとにもおしえましょう。そうすれば、その方もあなたにおしえてくれるはずです。

自分のとっているノートを、ほかのひととみせっこをして、くらべてみましょう。はずかしいですよね。自信があるので、気になりませんか。僕はこんどブログに書くつもりですが、ノートテーキングについては、いまでも苦労しているので、とってもはずかしいです。でも、おたがいにみせっこをするなかで、まなぶところはあるはずです。

医療通訳になってからこそつながろう

先ほど、おはなししたとおり、医療通訳はずっと勉強をつづけていく世界です。そのためにも、おたがいが刺激しあうことが大事です。先ほどいったいわゆる情報交換は、いつになっても、仲間同士でつづけることがとても大切です。

もうひとつ、どうしてもおつたえしたいのは、医療通訳の世界はまだまだちいさいのだということです。みんなで育てていかなくてはなりません。そのためには、あなたの協力も必要なのです。ぜひ、医療通訳同士で、横につながっていってください。ゆるいコミュニティとして、医療通訳がつながっていくことで、医療通訳のしごとがふえていくでしょう。そうすることで、外国人患者へのサポートの輪がひろがり、社会に貢献していくことができのだと、僕は信じています。

ご質問があれば、気軽に問い合わせページからご質問ください。

医療通訳は自撮りで自分をみがこう

自分のすがたをYouTubeでみてびっくり

しばらくまえに、自分が講義をしているすがたが撮影され、YouTubeで限定公開されました。そのすがたをみて、自分でとてもショックでした。

自分がかっこいいというつもりはありませんが、それなりに講師として説得力のあるすがたをみせているのではないかという程度の自負はあったのです。しかし、そのYouTubeのすがたをみると、とてもとても、そんなこといえたもんじゃありませんでした。

目がおよいでる、手をふりまわしている、首をまわしている、意味なく歩きまわっている。反省することがいっぱいで、いっぱいで。いや、反省点しかありませんでした。「だめなレクチャーのうごき」なんていうDVD教本だしたら、この動画そのままつかえるかも、なんて自虐的にかんがえました。

でも、これってつかえるかも

そこで、おもったんですよね、「これって、医療通訳のトレーニングにつかえるかも」って。

前回かいた「医療通訳は注目をあびている」でもいいましたとおり、医療通訳ってひとからみられるしごとです(ま、どのしごとも、ひとからみられるっていったらそうなんですけど)。患者と医師に信頼してもらうためにも、自分がどのように相手の目にうつっているのかって、自覚しておいた方がいいんですよ。

目のうごかし方や、表情のつくり方、手のうごかし方、はなし方、自分がどのようにやっているのか、僕たちはなかなか自覚することができませんよね。だったら、いちどビデオにとって、自分自身のすがたをみてみたらいかがでしょうか。

ロールプレイをとってみよう

最近は、おおくのコンピュータ、とくにノートブックには、チャット用にカメラがついているものがおおいです。これをドーンとテーブルの真ん中において、医療通訳の勉強仲間とロールプレイをやってみたら、いかがでしょうか。撮影した動画をすぐにその場でみて、おたがいに評価しあうんですよ。

よく、4人で組んで、ひとりは通訳役、次のひとりは患者役、もうひとりは医者役、そして最後のひとりがオブザーバーとしてそのロールプレイを観察してフィードバックするというのをやりますよね。そこにビデオをくわえるんです。オブザーバー役抜きで、3人でやってもいいです。

オブザーバーの意見というのは貴重なんですけど、やっぱり自分のすがたをじぶんでみるというのは、とっても協力だと思うんですよね。しかも、ほかのひともくわわって、そうのビデオをみながらアドバイスがもらえる。どうでしょうか。われながら、いいアイデアだとおもうんですけど。ぜひ、ためしてみてください。

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医療通訳は注目をあびている

残念ながら社会的な注目はイマイチ

このところ、医療とまったく関係のない方たちと、名刺交換をする機会がずいぶんありました。すると、きまって「医療通訳、ってなにやるんですか。初めて聞く仕事なんですけど」と聞かれました。医療を離れると、医療通訳なんてまったく聞いたことのない人がおおいんですね。Googleニュースの過去1ヶ月分をみると、医療通訳についての話題がけっしてすくないというわけではありません。しかし、まだまだなんですよね。

すこしでも医療通訳という職業を世の中へつたえたいといるおもいから「そもそも、医療通訳ってなに?」という先日、記事を書きましたが、医療通訳という職業の周知には、まだ時間がかかりそうですね。

医療通訳は臨床の場で注目の的

今回それでも、「注目をあびている」とタイトルのなかにいれたのは、「社会から注目されている」といいたかったからではないんですよ。この注目っていうのは、患者さんからであり、お医者さんからという意味なんです。

ことばがお互いつうじない患者さんとお医者さんは、ともすれば、両方のことばがわかる医療通訳に精神的にたよるようにになります。患者さんはお医者さんの顔をみずに、医療通訳に注目して症状をうったえるようになりがちです。一方、お医者さんは患者さんではなく医療通訳に注目して問診をするということになります。

これは、いい傾向ではありません。患者さんとお医者さんは両方が同じことばをしゃべる場合とおなじように、たとえ、ことばがつうじなくとも、お互いにむかってきちんとはなすべきです。最良の治療をうけるためのコミュニケーションのためには、それがいいのです。

私の経験をいうと、問診をする間の8割くらいは私の方をじーっとみてはなしていた先生もいました。このときは、何度か患者さんに向かってはなすようにうながしたのですが、すぐにまた私の方をみるようになってしまいました。私自身が医療通訳になったばかりだったので、うまく対応出来ないといこともありました。

今回いいたかったことのひとつは、医療通訳は臨床の場で注目の的になってしまいがちなことを意識すべきだということです。そして、医療通訳は、その注目をなんとかはずして、患者さんとお医者さんがお互いを注目するように、その場をもっていかなくてはならないということです。

信頼を得るためには第三者の目を気にしよう

もうひとつ、医療通訳は注目されがちなのですから、自分自身の態度にも気をつけるべきです。患者さん、お医者さんから信頼されるような態度・服装をしているでしょうか。目の動きや、顔の表情、座り方などもこのなかにはいってきます。ここら辺については、自戒もこもっています。自分でも意識しないで、ふんぞりかえってしまう座り方をして、あとでこうかいすることがすくなくありません。ですから、これは、私自身の課題でもあります。

態度・服装の点については、今後医療通訳系の試験を受ける方は気をつけた方がいいでしょう。ロールプレイでは、試験官が医療機関の関係者だったり、医療通訳だったりするために、態度や服装に気をつかっていることがつたわると高評価につながるようです。実際の臨床の場にそのひとがいることを想像し、「ふさわしいか、ふさわしくないか」ということを試験官はみてしまい、そのことが採点に反映されてしまうといいます。

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医療英単語力アップへ — 語の要素のINDEXを活用しよう

当ブログでは、以前「語の構成要素を理解することはやっぱり大事」という記事の中で、どうやって医療英単語をふやしていけばいいのかということについてはなしました。そのなかで、強調したことは、語の構成要素(接頭辞・接尾辞・連結形)を理解することが、医療英単語のボキャブラリーを増やしていくのに、とてもだいじだということです。なぜならば、おおくの医療英単語が語の構成要素をブロックのように組み合わせてつくられているからです。

代表的なことばでいえば、gastritis(胃炎)です。これは「G」の項目の下にあるgastr-という「胃」を意味するギリシャ語由来の要素と、「I」の項目の下にある-itisという「炎症」をあらわすこれもギリシャ語由来の要素がく組み合わされてつくられています。

このような語の要素をおぼえると、医療英単語をのボキャブラリーをふやしていくことがグッと楽になります。ただ、いきなり、語の構成要素を片っ端からおぼえていくのは大変です。まずは、いままでにならったことばを分解することからためしてみましょう。たとえば、胃炎や食道炎(esophagitis)、腸炎(enteritis)、肝炎(hepatitis)などをみると、組みあわせのパターンがみえてくるはずです。そして、分解してみましょう。

ちなみに、語の構成要素について、僕が個人的に大好きなのはdiarrhea(下痢)ということばです。dia-という「を通じて」「を横切って」「通して」といった意味のギリシャ語由来の要素と、-rrheaというこれもギリシャ語由来の「流出」「放出」「排出」という要素でできています。つまり「ながれるようにと横切ってでていく」ってことなんですよ。ものすごくイメージわきませんか。すばらしく良くできたことばだとおもいます。ギリシャ人のイマジネーションに感謝です。もちろん、このことばがおもしろいからすきなのであって、下痢がすきってわけではないですからね。

語の構成要素をしっていくということには、単に単語がおぼえやすくなるだけではなく、このdiarrheaのように、ことばの意味がはっきりとしたイメージにつながるのをたすけるという利点もあるので、おすすめなのです。

当ブログでは、語の構成要素をそれぞれ「Aからはじまる語の構成要素」「Bからはじまる構成要素」とはばひろくまとめ、20回以上にわたって連載してきました。医療英単語についての語の構成要素は、ほぼカバーしています(たりないものについては、問い合わせページからご指摘いただければアップデートします)。

 

それぞれの語の要素へは、語の構成要素 — INDEXからアクセス出来ます。INDEXには、デスクトップでは、サイドバーのメニューから、iPhoneやスマートフォンではドロップダウン・メニューからもアクセスできます。

まずは、自分がしっている医療英単語の構成要素を理解することからはじめましょう。そして、医療通訳をめざすかたや、医療英語を勉強する方は、当ブログの語の構成要素 — INDEXを活用することで、ボキャブラリーを増やしていきましょう。

加齢黄斑変性など高齢者関連疾患の話題には注目しておこう

稼ぎまくりの米国製薬会社経営者!」で、製薬・健康関連企業の経営者の報酬ランキングの1位にかがやいたのは、Regeneron PharmaceuticalsのCEOだというはなしをしました。そのなかで、Regeneronは加齢黄斑変性(age-related macular degeneration、AMD)の薬で注目をされたバイオ企業だというおはなしもしました。

加齢黄斑変性については、日本ではアキュセラ・インクという眼科医のCEOが立ち上げたバイオ・ベンチャー企業が新薬の開発に取りくみ注目をされています。新薬の研究は、曲がり角にきているようすですが、こんごとも、成人・高齢者むけの新薬開発では、注目をあびそうです。

医療英語や医療通訳を勉強する方に、加齢黄斑変性などの高齢者に関連した疾患について注目するようにおすすめするのは、次の2つの理由からです。

第1に、日本だけでなく、先進国全体で高齢化がすすむなかで、こんごとも、高齢の患者のサポートにはいる機会は医療通訳にとってふえるであろうことが予想されます。また、製薬会社や医療サービスについても、高齢者に焦点をあてたものがさらに増えつづけるとかんがえられます。新語がでてくる可能性もあります。医学論文もふえるでしょう。この分野での医療英語の知識が一層、求められるものとかんがられます。

第2に、これはとくに医療通訳をめざす方にいえることですが、高齢者関連疾患がいまのホット・トピックであることはまちがいありません。となると、医療通訳についての技能試験などにこのトピックが取りあげられる可能性はとてもたかいということです。注意しておきますと、Regeneronという社名がものがたっているように、再生医療と高齢者関連疾患の治療はふかくつながっています。勉強をするときは、その点は意識すべきですよ(つまり再生医療関係のトピックが取りあげられる可能性もたかいということです)。

ところで「稼ぎまくりの米国製薬会社経営者!」で、CEOがランキングの2位となったVertex Pharmaceuticalsは、「数打ちゃ当たる」戦略で成功をおさめたとおはなししましたが、Barron’sの動画レポート「Here’s Why Biotech Giant Regeneron Is Soaring」によると、どうやらRegeneronも同じ戦略で研究をすすめているとのことです。

「数打ちゃ当たる」方法を効率化することが製薬会社のトレンドになっているようすですね。動画レポートの前半部分でRegeneronにふれています。字幕は自動生成でないので、よくできています。後半部分は、医薬分野とは関係のない投資のはなしになっているので、ご注意を。

こんかいの紹介した記事・動画、すべて投資情報サービスのものですが、これはバイオ製薬分野が世界で注目をあびているために、こういったサービスサイトがおおく取りあげているためです。投資をすすめているといったことではないので、その点はご理解を。

ご質問があれば、気軽に問い合わせページからご質問ください。