医療通訳は自撮りで自分をみがこう

自分のすがたをYouTubeでみてびっくり

しばらくまえに、自分が講義をしているすがたが撮影され、YouTubeで限定公開されました。そのすがたをみて、自分でとてもショックでした。

自分がかっこいいというつもりはありませんが、それなりに講師として説得力のあるすがたをみせているのではないかという程度の自負はあったのです。しかし、そのYouTubeのすがたをみると、とてもとても、そんなこといえたもんじゃありませんでした。

目がおよいでる、手をふりまわしている、首をまわしている、意味なく歩きまわっている。反省することがいっぱいで、いっぱいで。いや、反省点しかありませんでした。「だめなレクチャーのうごき」なんていうDVD教本だしたら、この動画そのままつかえるかも、なんて自虐的にかんがえました。

でも、これってつかえるかも

そこで、おもったんですよね、「これって、医療通訳のトレーニングにつかえるかも」って。

前回かいた「医療通訳は注目をあびている」でもいいましたとおり、医療通訳ってひとからみられるしごとです(ま、どのしごとも、ひとからみられるっていったらそうなんですけど)。患者と医師に信頼してもらうためにも、自分がどのように相手の目にうつっているのかって、自覚しておいた方がいいんですよ。

目のうごかし方や、表情のつくり方、手のうごかし方、はなし方、自分がどのようにやっているのか、僕たちはなかなか自覚することができませんよね。だったら、いちどビデオにとって、自分自身のすがたをみてみたらいかがでしょうか。

ロールプレイをとってみよう

最近は、おおくのコンピュータ、とくにノートブックには、チャット用にカメラがついているものがおおいです。これをドーンとテーブルの真ん中において、医療通訳の勉強仲間とロールプレイをやってみたら、いかがでしょうか。撮影した動画をすぐにその場でみて、おたがいに評価しあうんですよ。

よく、4人で組んで、ひとりは通訳役、次のひとりは患者役、もうひとりは医者役、そして最後のひとりがオブザーバーとしてそのロールプレイを観察してフィードバックするというのをやりますよね。そこにビデオをくわえるんです。オブザーバー役抜きで、3人でやってもいいです。

オブザーバーの意見というのは貴重なんですけど、やっぱり自分のすがたをじぶんでみるというのは、とっても協力だと思うんですよね。しかも、ほかのひともくわわって、そうのビデオをみながらアドバイスがもらえる。どうでしょうか。われながら、いいアイデアだとおもうんですけど。ぜひ、ためしてみてください。

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医療通訳は注目をあびている

残念ながら社会的な注目はイマイチ

このところ、医療とまったく関係のない方たちと、名刺交換をする機会がずいぶんありました。すると、きまって「医療通訳、ってなにやるんですか。初めて聞く仕事なんですけど」と聞かれました。医療を離れると、医療通訳なんてまったく聞いたことのない人がおおいんですね。Googleニュースの過去1ヶ月分をみると、医療通訳についての話題がけっしてすくないというわけではありません。しかし、まだまだなんですよね。

すこしでも医療通訳という職業を世の中へつたえたいといるおもいから「そもそも、医療通訳ってなに?」という先日、記事を書きましたが、医療通訳という職業の周知には、まだ時間がかかりそうですね。

医療通訳は臨床の場で注目の的

今回それでも、「注目をあびている」とタイトルのなかにいれたのは、「社会から注目されている」といいたかったからではないんですよ。この注目っていうのは、患者さんからであり、お医者さんからという意味なんです。

ことばがお互いつうじない患者さんとお医者さんは、ともすれば、両方のことばがわかる医療通訳に精神的にたよるようにになります。患者さんはお医者さんの顔をみずに、医療通訳に注目して症状をうったえるようになりがちです。一方、お医者さんは患者さんではなく医療通訳に注目して問診をするということになります。

これは、いい傾向ではありません。患者さんとお医者さんは両方が同じことばをしゃべる場合とおなじように、たとえ、ことばがつうじなくとも、お互いにむかってきちんとはなすべきです。最良の治療をうけるためのコミュニケーションのためには、それがいいのです。

私の経験をいうと、問診をする間の8割くらいは私の方をじーっとみてはなしていた先生もいました。このときは、何度か患者さんに向かってはなすようにうながしたのですが、すぐにまた私の方をみるようになってしまいました。私自身が医療通訳になったばかりだったので、うまく対応出来ないといこともありました。

今回いいたかったことのひとつは、医療通訳は臨床の場で注目の的になってしまいがちなことを意識すべきだということです。そして、医療通訳は、その注目をなんとかはずして、患者さんとお医者さんがお互いを注目するように、その場をもっていかなくてはならないということです。

信頼を得るためには第三者の目を気にしよう

もうひとつ、医療通訳は注目されがちなのですから、自分自身の態度にも気をつけるべきです。患者さん、お医者さんから信頼されるような態度・服装をしているでしょうか。目の動きや、顔の表情、座り方などもこのなかにはいってきます。ここら辺については、自戒もこもっています。自分でも意識しないで、ふんぞりかえってしまう座り方をして、あとでこうかいすることがすくなくありません。ですから、これは、私自身の課題でもあります。

態度・服装の点については、今後医療通訳系の試験を受ける方は気をつけた方がいいでしょう。ロールプレイでは、試験官が医療機関の関係者だったり、医療通訳だったりするために、態度や服装に気をつかっていることがつたわると高評価につながるようです。実際の臨床の場にそのひとがいることを想像し、「ふさわしいか、ふさわしくないか」ということを試験官はみてしまい、そのことが採点に反映されてしまうといいます。

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加齢黄斑変性など高齢者関連疾患の話題には注目しておこう

稼ぎまくりの米国製薬会社経営者!」で、製薬・健康関連企業の経営者の報酬ランキングの1位にかがやいたのは、Regeneron PharmaceuticalsのCEOだというはなしをしました。そのなかで、Regeneronは加齢黄斑変性(age-related macular degeneration、AMD)の薬で注目をされたバイオ企業だというおはなしもしました。

加齢黄斑変性については、日本ではアキュセラ・インクという眼科医のCEOが立ち上げたバイオ・ベンチャー企業が新薬の開発に取りくみ注目をされています。新薬の研究は、曲がり角にきているようすですが、こんごとも、成人・高齢者むけの新薬開発では、注目をあびそうです。

医療英語や医療通訳を勉強する方に、加齢黄斑変性などの高齢者に関連した疾患について注目するようにおすすめするのは、次の2つの理由からです。

第1に、日本だけでなく、先進国全体で高齢化がすすむなかで、こんごとも、高齢の患者のサポートにはいる機会は医療通訳にとってふえるであろうことが予想されます。また、製薬会社や医療サービスについても、高齢者に焦点をあてたものがさらに増えつづけるとかんがえられます。新語がでてくる可能性もあります。医学論文もふえるでしょう。この分野での医療英語の知識が一層、求められるものとかんがられます。

第2に、これはとくに医療通訳をめざす方にいえることですが、高齢者関連疾患がいまのホット・トピックであることはまちがいありません。となると、医療通訳についての技能試験などにこのトピックが取りあげられる可能性はとてもたかいということです。注意しておきますと、Regeneronという社名がものがたっているように、再生医療と高齢者関連疾患の治療はふかくつながっています。勉強をするときは、その点は意識すべきですよ(つまり再生医療関係のトピックが取りあげられる可能性もたかいということです)。

ところで「稼ぎまくりの米国製薬会社経営者!」で、CEOがランキングの2位となったVertex Pharmaceuticalsは、「数打ちゃ当たる」戦略で成功をおさめたとおはなししましたが、Barron’sの動画レポート「Here’s Why Biotech Giant Regeneron Is Soaring」によると、どうやらRegeneronも同じ戦略で研究をすすめているとのことです。

「数打ちゃ当たる」方法を効率化することが製薬会社のトレンドになっているようすですね。動画レポートの前半部分でRegeneronにふれています。字幕は自動生成でないので、よくできています。後半部分は、医薬分野とは関係のない投資のはなしになっているので、ご注意を。

こんかいの紹介した記事・動画、すべて投資情報サービスのものですが、これはバイオ製薬分野が世界で注目をあびているために、こういったサービスサイトがおおく取りあげているためです。投資をすすめているといったことではないので、その点はご理解を。

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医療英語の学習に – Khan Academy, Bozeman Scienceほか

医療英語・医療通訳の勉強に役立ちそうな、YouTubeのリストや、動画サイトをいくつかご紹介します。映像というのはとてもパワフルですね。私もこういった動画をみることで、とても勉強になりました。とくに勉強をはじめたばかりのときは、動画にずいぶん助けられました。

それから、これは、どの動画ということではないのですが、新しく学んだ単語で、発音記号をみても発音がどうしてもわからない単語の場合、その単語をYouTubeで検索してみればいいですよ。ほとんどの場合、その単語がつかわれている動画がでてきますので、実際の発音をきくことができます。

Khan Academy – Healthcare and Medicine
つい先日、ひとから教えてもらいました。このKhan Academyというのは、すべてのひとに平等に教育を受ける機会をあたえるという高い志のもと動画をつうじて、さまざまな講義をながしています。カバーしているのは、あらゆるジャンルといってもいいでしょう。ここにあげたHealthcare and Medicine(健康管理と医療)というリストには29の動画が今日現在(2016年5月28日現在)公開されています。医療従事者むけというよりは、この分野にすすみたいという関心をもっているひとむけといった印象です。その分、いわゆるlay termをまなぶにはよさそうです。英語の字幕はきちんとつくられているようで、自動生成ではなさそうです。とても、便利ですね。

Bozeman Science – Anatomy and Physiology
アメリカはモンタナ州のボーズマン(Bozeman, Montana)というとっても田舎の高校の科学の先生がYouTubeで公開している動画集です。科学のいろいろな分野の動画をあげていますが、このAnatomy and Physiology(解剖学と生理学)には今日現在(2016年5月28日現在)、16本の動画が公開されています。高校生向けの解説なので平易なことばで解説されています。わたしもよく利用しています。以前は自動生成の英語字幕がついていたとおもうのですが、どうやらきちんとした字幕になっているものもあるようです。全部かどうかは確認していません。

Medical Edge by Mayo Clinic
前のふたつとはちがい、とても専門的な動画が公開されています。なにせかのメイヨー・クリニックが公開していますので、Medical Edgeということばが暗示するように、かなり先端的な内容の動画がおおいです。字幕はありますが、自動生成のものなので、まちがいがおおいので、注意した方がいいですね。

ER – Season 2 and Season 3
かの有名な医療ドラマ「ER」です。医学部の先生ふたりほどから聞きましたが、内容も正確な優秀なドラマだそうです。医学部によっては授業でつかわれたりしています。残念ながら、ビデオショップで借りるか、購入するかありません。とくに第2シーズンと第3シーズンがよいとききました。

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医療通訳は、逐次通訳で

数日前に通訳についてお話ししたなかで、通訳のすすめ方には大別すると同時通訳と逐次通訳があるとお話ししました。そして、医療通訳の場合、基本的に逐次通訳ですすめるのですよといいました。今回は、なぜ逐次通訳ですすめるのがいいのかをおはなしします。

そのまえに、注意したいのは、これからおはなしする理由から、逐次通訳を使うことが医療通訳にとってのぞましいとはいえ、医療通訳はその場の状況におうじて、臨機応変にやり方をかえるちからが求められています。ですので、逐次通訳よりも同時通訳の方がいいと判断された場合、同時通訳で通訳をすすめるべきです。

では、その判断基準はなにかというと、私は「患者にとってなにがベストなのか」をかんがえるようにしています。たとえば、目の動きをしらべるときの「指の動きを目だけで追ってください」という医師の指示は、ほぼ同時に通訳された方が正確な判断にむすびつきます。結果として、患者のかかえている症状についての適切な診断へとつながるのです。「ベスト」というのは「都合がいい」という意味ではありません。検査の結果が患者にとって「都合のわるい」きびしい診断になる可能性もあります。患者の健康、そして、そのための治療という面からみて、ベストなものになるやり方は、なんなのだろうかということをつねにかんがえるべきだとおもいます。

通訳の質があがる

同時通訳の場合、一語一語を置きかえることに集中しているので、はなしているひとが、なにをいおうとしているかについての理解はおろそかになります。逐次通訳の場合、はなされた内容についての理解をする余裕があるので、その内容をつたえるのに適した質の高い通訳をすることができるようになります。

患者と医師・医療従事者との関係の向上に役立つ

通訳の質があがるということは、患者と医師・医療従事者との関係の向上につながります。治療の成果は治療方法そのものよりも、患者と医師・医療従事者との関係によって左右されるといいます。逐次通訳によって通訳の質があがることが、患者と医師・医療従事者の信頼関係につながり、結果として患者の治療にとってプラスになるのです。

同時に2人はなすと患者は苦痛

ちょっと、かんがえてみてください。同時に2人の人間がはなしているのをきくのは苦痛ではないですか。テレビの2言語放送で両方のことばがながれるように設定してためしてみてください。そのうちの日本語だけをきくようにしていても苦痛だとおもいますよ。

病院やクリニックにくる方は、じぶんの症状にとてもなやんでくる方がおおいです。精神的にとても追いつめられている方もすくなくありません。外国人患者だったらなおさらではないでしょうか。じぶん自身の症状にくわえ、きちんとそのことを医師につたえることができるだろうか、ちゃんとした治療をうけることはできるだろうか、といった不安な気持ちでいることがおおいでしょう。同時通訳をつかうということは、そんな外国人患者の方に医師・医療従事者と通訳の2人が同時にはなしかけ、よけいなストレスをあたえることになります。とても、外国人患者と医師・医療従事者とのあいだに信頼関係をきづくことなど期待できなくなります。この点から、同時通訳は患者さんにとって、ベストなものとはかんがえられないのです。

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